紫藤 咲
朝を迎えると、なんとねこさんの左目が、目ヤニでくっついている。 目薬がさせない…… ――なんで? どうしてこうなるの? 食事のこと、排せつのこと、 どれもまだ不慣れなのに―― 次々とぼくに襲いかかる難題。 猫初心者の闘いは、始まったばかり。
ねこさんを家に連れて帰った、ぼく。 まずは先住犬とのご対面、なのだが―― ――あかーん 次は、お腹のすいたねこさんにミルクを―― ――ひぃっっっ そして、次は排泄―― ・・・ 分からないことだらけ。 こうして1日が過ぎるのでした。 頑張れ新米飼い主!
ねこさんの貰い手が見つかるまでは、自分で頑張ってみようと決めた、ぼく。 しかし、知らない事ばかり。 ノミの駆除も、爪を切ることも。 ――そして結膜炎のこと。 獣医師の言葉に、思わず「まぢかよー」とぼく。 さあ、ここがスタートライン。
里親探しをお願いするために、信頼する獣医さんを訪れたぼく。 快く迎えてはくれたものの、そこで現実を知ります。 「拾ってお願いしますと丸投げなら、誰だってできる」 と獣医さん。 ――確かにそうだ。 考えてみようよ。 ひとつの命を救うこと。
猫さんを連れ帰ったものの、ぼくの知識はゼロ。 性別。月齢。種別。すべて不明。 猫さん――、謎だらけ。 友人のハットリ君か、旧知の獣医さんに託そうとするのだが―― さて、託せるのか? 本当に? 猫さん、ときどきミーと鳴くばかり。
運命の日―― ぼくは猫を拾った。 犬派だった著者が、猫を拾ってからの悪戦苦闘を描くエッセイ。 猫のいない日常に、飼ったこともない猫が入り込んでくる話。 はじまりは、里親探しから。 ――当然、未経験。 「ぼくらの物語はこの日から始まった」