虹の橋の猫 ―愛と絆と永遠の物語―
遠くの街での、一匹の猫のお話です。
その猫は、雉白(きじしろ)もようの、とても綺麗な毛並みをしていました。
猫には飼い主がいて、猫は、その人のことを「おかあさん」と呼んでいました。
おかあさんは、猫をとても大切にしていて、おかあさんが猫のことが大好きなように、猫も、おかあさんのことが大好きでした。
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――ある日のこと――
猫がいつものように、毛づくろいをしていると、一枚の切符が届きました。
それは、渡し舟の切符でした。
猫は、渡し舟に乗って、虹の橋までの長い旅に出ることになりました。
猫は住み慣れた家を出て、ひとりで、船着き場に向かいました。
荷物はとても重い上に、猫は歳を取っていましたから歩くのも遅く、船着き場はとても遠くに思えました。
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しばらく行くと、箱がひとつ捨ててありました。
箱の中には、小さな仔猫がポツンと入っていました。
猫は、持っていたおやつを仔猫にあげました。
仔猫はおなかがすいていたらしく、猫のあげたおやつを、あっという間に食べてしまいました。
仔猫は食べ終わると箱の中から、猫を見上げました。その瞳は、とても不安で淋しそうでした。
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猫は仔猫がかわいそうになり、荷物の中から、お気に入りのおもちゃを出しました。
「おかあさん」が、手作りしてくれた大切なおもちゃです。
そのおもちゃを箱の中に入れると、仔猫は嬉しそうに抱きかかえました。
猫はお気に入りのおもちゃを手放し、なんだか急に淋しくなりました。でも、これから旅に出るのだし、このおもちゃで仔猫が淋しくなくなるのならこれでいいんだと、猫は自分に言い聞かせました。
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おやつとおもちゃが減っても、猫の荷物は少しも軽くはなりませんでした。
猫は重い荷物を引きずりながら、ようやく船着き場に着きました。
船着き場には、幾艘(いくそう)もの渡し船が、船出を待っていました。
波に揺れる船を見ていたら、不意に、おかあさんの顔が猫の目の前に浮かんできました。
猫は、なんだか、とても淋しい気持ちになりました――
――銀の鈴/虹の橋の猫(第1話)・つづく――
作:水玉猫
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――次話――
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この記事は、下記のまとめ読みでも読むことが出来ます。
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。
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