虹の橋の猫 ―愛と絆と永遠の物語―
渡し守は棹(さお)をあやつって、船を進めます。
その棹の先には、リボンで結んだ鈴が、ひとつ付いています。
渡し守が棹さすたびに鈴は澄んだ音をたて、渡し守はその音に合わせて歌をうたいました。
猫は、長い船旅の間に、渡し守のうたっていた歌をすっかり覚えてしまいました。
そして、いっしょに口ずさむようになりました。
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虹の橋に着くと、渡し守は棹の先に結んだリボンをほどき、鈴を外しました。
そして、船を降りた猫に渡しました。
「きみが、地上から持ってきたものだよ」
猫は、びっくりしました。
重荷は、みんな地上の船着き場においてきたはずです。
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大切なたくさんの思い出も、地上に着いたばかりの仔猫に託してしまいました。だから、猫は何も持たずに虹の橋に渡って来たとばかり思っていました。
渡し守は、猫に言いました。
「歌ってごらん」
猫が、旅の間に覚えた歌のひとつを歌うと、鈴がきれいな音で鳴りはじめました。
鈴の音は話し、笑い、歌いました。
その音は、地上に残したお母さんの大好きな歌声になって、猫の耳にとどきました。
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猫は、おかあさんのうたう歌といっしょに、歌いました。
地上にいた時と同じように。
猫が虹の橋に持って来た、たったひとつのものとは、猫をなによりも愛してくれた人の懐かしい声だったのです。
その声が、鈴の中に入っていたのでした。
――銀の鈴/虹の橋の猫(第5話)・つづく――
作:水玉猫
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――次話――
――前話――
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――この物語の第1話です――
保護猫のお話です
活動家に保護された猫、夕(ユウ)。
幸せに暮らしていた夕は、ある日リンパ腫の診断をうけてしまいました。
虹の橋の記事です
良く知られた虹の橋。しかし意外に知られていないことがあります。