虹の橋の猫 ―別れって何? 永遠って何?―
歌うたいの猫は、虹の橋に着いたばかりの仔猫たちに、言いました。
「雨が、降ってくるよ」
仔猫たちは、空を見上げました。
黒い仔猫の鼻に、ポツンと、雨粒が落ち、
白い仔猫の耳に、ポツンポツンと落ちて、
灰色の仔猫のヒゲに、ポツンポツンポツンと落ちました。
ざあーっと、雨が降り出しました。
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歌うたいの猫は、ブランコから飛び降りると、公園の中に駆け出しました。
黒い仔猫と白い仔猫も、歌うたいの猫の後ろについて駆け出しました。
でも、灰色の仔猫だけは、うつむいたまま、動こうとしませんでした。
歌うたいの猫は、急いで灰色の仔猫の元に戻り、仔猫の手を引いて、大きな葉っぱが生い茂るところまで、走っていきました。
黒い仔猫と白い仔猫も、歌うたいの猫に続いて、葉っぱの下に駆け込みました。
葉っぱはとても大きくて、十分に雨宿りができました。
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雨は激しさをまし、周りの景色もすっかりかすんで、遠くは見えなくなってしまいました。
黒い仔猫が、歌うたいの猫に、たずねました。
「どうして、雨が降るってわかったの?」
歌うたいの猫は、答えました。
「雨が降れば、虹が架かるでしょ。雨は、虹を架けるために降るんだから」
白い仔猫が、たずねました。
「どうして、虹を架けなきゃならないの?」
歌うたいの猫は、答えました。
「橋をかけるためにさ。ここは虹の橋なんだもの」
歌うたいの猫は、灰色の仔猫を見ました。今度は、他の仔猫たちのように、何か、たずねるかと思ったのです。
でも、灰色の仔猫は、歌うたいの猫を見ようともせず、葉っぱの下にいたカエルを見つけると、その方ばかり見ていました。
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黒い仔猫と白い仔猫が、また、歌うたいの猫に、たずねました。
「ここが、虹の橋なのは知っているよ。でも、橋ってなあに?」
「橋ってどこかから、どこかに架けるんでしょ? 虹の橋って、どこからどこに架けるの?」
歌うたいの猫は、ふたりの仔猫たちの問いには答えず、うたいはじめました。
ザーザーと激しかった雨は、まるで歌に合わせるように、次第に静かな雨になっていきました――
――歌うたいの猫(4/10)/虹の橋の猫(11話)・つづく――
作:水玉猫
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――第2章のはじまり(第8話)です――
――この物語の第1話です――
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保護猫のお話です
家族の引っ越しで置き去りにされたクララは、野良猫の茶太郎と出会います。
やがて一緒に保護された2匹ですが――
虹の橋の記事です
良く知られた虹の橋。しかし意外に知られていないことがあります。