虹の橋の猫 ―別れって何? 永遠って何?―
大きな葉っぱの下で、雨宿りをしながら、歌うたいの猫の歌を聞いているうちに、黒い仔猫と白い仔猫は、地上で暮らした日々が、懐かしくてたまらなくなりました。
そして、地上でいっしょに暮らした人たちが、恋しくてたまらなくなりました。
「おうちに、帰りたいよぉ」
「おうちのみんなに、会いたいよぉ」
黒い仔猫と白い仔猫は、とうとう泣き出してしまいました。
でも、歌うたいの猫は、仔猫たちをなぐさめようとはせず、そのまま歌い続けました。
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雨音と仔猫の泣き声の中を、歌うたいの猫の歌声が、静かに流れていきます。
歌は、まるで、子守唄のように黒い仔猫と白い仔猫を優しく包み込み、いつしか、ふたりの仔猫たちは眠ってしまいました。
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でも、灰色の仔猫は、相変わらず、葉っぱの下のカエルばかり見ていました。
しばらくすると、カエルが言いました。
「虹」
「虹?」
灰色の猫は、カエルの見ている方に振り返りました。
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眠る黒い仔猫と白い仔猫の上に、虹が架かっています。
黒い仔猫の上に架かる虹は明るく輝き、白い仔猫の上に架かる虹は優しくきらめいていました。
歌うたいの猫が歌うのをやめて、灰色の仔猫に言いました。
「ほら、虹が架かったでしょ」
灰色の仔猫は歌うたいの猫をちらりと見ましたが、すぐにまた、うつむいて黙り込んでしまいました。
カエルが、ぴょんと灰色の仔猫の頭に、飛び乗りました。
その拍子に、灰色の仔猫の鈴が揺れましたが、鈴は何の音も立てませんでした。
歌うたいの猫は、灰色の仔猫をじっと見ていましたが、再び、歌い出しました。
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しばらくして、黒い仔猫と白い仔猫は目を覚ましました。
そして、うれしそうに、それぞれが見ていた夢の話をしました。
「おうちで、みんなと遊んだよ。おやつも、もらった!」
「おうちのみんなが、代わりばんこで抱っこしてくれたし、なでてくれたの!」
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歌うたいの猫は、にっこりと笑いました。
「虹が架かったからね。もう、いつでも、おうちのみんなといっしょにいられるね」
黒い仔猫と白い仔猫は、不思議そうに歌うたいの猫を見ました。
歌うたいの猫は、答えました。
「涙の雨に架かる虹は、心と心に架かるんだよ」
でも、黒い仔猫と白い仔猫にとっては、それは答になっていませんでした。
歌うたいの猫の言っていることが、まるで、わからなかったのです――
――歌うたいの猫(5/10)/虹の橋の猫(12話)・つづく――
作:水玉猫
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――次話――
――前話――
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この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。
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――第2章のはじまり(第8話)です――
――この物語の第1話です――
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保護猫のお話です
活動家に保護された猫、夕(ユウ)。
幸せに暮らしていた夕は、ある日リンパ腫の診断をうけてしまいました。
虹の橋の記事です
良く知られた虹の橋。しかし意外に知られていないことがあります。