ボスの旅立ち
~あぁこれが最後の挨拶なんだな~
10月7日 午前2時 30分|お別れの 挨拶
いつものように、ボスがトイレに行きたがり、私は起こされました。
この日のボスは、何故かおしっこが終わっても、なかなか寝付いてくれません。
腕の力だけで、布団からすぐに抜け出てしまいます。
「ボスどうしたの? 眠くないの? 寝ないと体力もたないよ」
私はボスに話しかけました。
するとボスは、私の顔をじっと見つめ、必死に私の手にスリスリしてきました。
●
あぁこれが最後の挨拶なんだな――
そう思いました。
「 お前 いつもと違うことするな」
私は心と裏腹に、そうボスに言ってしまいました。
それは長い長い、挨拶のすりすりでした。
一生懸命今まで 感謝を、ボスなりに伝えてくれているのが伝わってきました。
自然と涙が頬を伝いました。涙が止まりませんでした。
すりすりが終わると、ボスは満足したのか、布団に横になって深い眠りにつきました。
ボスとのお別れが迫っている。
私はそう感じました。翌日主人にその事を話すと、主人は「そうかわかった」と、一言だけ言いました。
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夜が明けて朝が来たら、ボスは今までにないぐらいぐったりしていました。
この日は私も主人も、どうしても仕事が休めませんでした。
もし帰ってきてボスが――
つい、そんなことを考えてしまいました。
●
この日ボスは、初めておもらしをしました。
申し訳なさそうに私を見つめるボス。
「大丈夫だよ。全然臭くない。大丈夫だよ」
私はそう言いながら、ボスの濡れた体を 拭きました。
「ボス兄ちゃん行ってくるからね。お留守番頼むね」
私はいつも通りにボスに声をかけ、出勤しました。
ですが職場に着いても、ボスのことが心配で心配で、仕事が手につきません。
おろおろするばかりでした。
●
お昼に主人に電話をすると、主人も同じ気持ちだったようです。
『俺今から帰るわ』 と言い、電話を切りました 。
30分後 主人から連絡がありました。
『ボスは大丈夫だから 心配するな』
私は泣きながら、主人に「ありがとう」と言いました。
――ボスの旅立ち(9/10)つづく――
文:ボスのかあちゃん
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※本記事は著作者の許可を得て、下記のブログを元に再構成されたものです。