ボスの旅立ち
~ボス21歳と6ヶ月~
10月7日 夕方|おかえり
やっと仕事が終わりました。
私は迎えに来てくれた主人と一緒に、いつも通りボスのご飯を色々と買い込んで、足早に帰宅しました。
帰るとボスは、いつも通り待っていてくれました。
そして、声にならない声を出し、『おかえり』をしてくれました
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帰ってきた私は、 ボスをトイレに連れて行きました。
――でも出ません。
もう出るおしっこもないのかな―― と思っていると、私の足元でもじょもじょ。
そして盛大なおしっこ。
多分もうこの時ボスは、おしっこもコントロールできなかったんだと思います。
でもボスはそんなになっても、私たちが帰ってくるとリビングに来たがります。
私は軽くなったボスを抱いてリビングへ……
これがボスの、生前最後の姿になりました。
最後の家族3人での団らん。
いとおしく、大切な時間でした。
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10月8日 午前0時15分|その日、その時
我が家の就寝時間は、いつも10時と決まっており、この日もいつも通り、私と主人の間にボスを寝せて、親子3人川の字で眠りにつきました。
主人はすぐにいびきをかきはじめました。
私は ボスが眠りにつくまで、頭を撫で続けました。
私もうとうとし始めた頃でした――
ボスの様子がおかしいことに気づき、私は飛び起きました。
主人も 一緒に飛び起き ました。
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するとボスは、発作を起こし始めました。
私と主人は、声をかけながら撫でることしかできませんでした。
何故かこの時ボスは、撫でていた主人の右手の人差し指を、思い切り噛みました。
かなり深い傷でした。今思えば『俺の事を忘れるなよ‼』と言っていたかのように。
主人の指を噛んだボスは、落ち着きを取り戻しました。
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そのボスを確認し、私は主人の指の手当をしました。
それから主人と二人で ボスを撫でながら、また眠りにつきました。
ボスは弱いながらも、規則正しい 呼吸をしていました。
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それからしばらくしてです。ボスは2回目の発作を起こしました。
私と主人は飛び起き、必死にボスの名前を呼び続けました。
それは、1度目の発作より激しい発作でした。
私も主人も覚悟を決め、撫でながら名前を呼び続けました 。
ボスは発作が治まると、スースーと穏やかな呼吸を2,3回した後、ゆっくり 目を閉じて、眠るように逝ってしまいました。
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「逝くなボス、かあちゃんを置いて逝くな!」
私は泣きながら叫んでしまいました。
ふと時計を見ると、日付が変わっていました。
午前0時15分、ボス21歳と6ヶ月でした。
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今から考えると、1回目の発作は、私たちに心の準備をさせるための予行練習だったのかなと思います。
その日は涙が止まらず、なかなか寝れませんでしたが、この日も親子3人川の字で眠りました。
私は――
ボスが苦しみから、辛さから解放されたと思うと、ほっとしました。
ボス…君はほんと、お利口さんでした。
~かあちゃんより~
――ボスの旅立ち(10/10)了――
文:ボスのかあちゃん
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――次話、その後のお話――
ボスの旅立ちは本話で最終回。
これはボスを看取った直後の、かあちゃんのお話です。
――前話――
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※本記事は著作者の許可を得て、下記のブログを元に再構成されたものです。