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【猫の保護/実話エッセイ】体重が足りなくて抗生剤が打てない ~犬派の僕が猫と暮らす理由|ひとつの命をはぐくむこと(3/11)~

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犬派の僕が猫と暮らす理由
f:id:masami_takasu:20180911105002j:plain撮影&文:紫藤 咲

ねこさんがやってきて四日目。
再び、獣医さんへ連れていくことにした。なぜなら、目に見えてねこさんの体調が悪くなっていたからだ。

一日三回、コンスタントに目薬を注しているけれど、目ヤニがべったりくっついた状態は改善しない。清潔を保つために顔だって毎日拭いているのに、翌日にはくしゃくしゃになってしまうという悪循環が続いていた。

こんな風に
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目ヤニが

くしゃみもよく出た。ぶしゅんっと顔を振ると、鼻水のしぶきが飛んで、ポツポツと床にしぶきのあとが残る。

鼻まわりの黒い塊はどうやら鼻水がくっついて固まったものらしい。毎日拭いても、拭いても追いつかなかった。それこそ一日一回、顔を拭くぐらいでは、きれいなままの顔を保てなかったのだ。

こういった状態を改善すべく、獣医さんに行った。いまだに死滅しないノミの撲滅も含めて、改めて現状を報告する。

元気なし。食欲なし。食べさせたい量の2/3、なんとか食べさせている状態。
遊ぶこともほとんどない。鳴くのはうんちが出なくて、つらいとき。走ることもない。

子猫らしさがまったくなくて、1日の大半は寝て過ごしている――と、 ねこさんの普段の様子を伝えると、先生は、うーんと唸りながら、こう言った。

「体重が1kgはないと、抗生剤が打てないんだよ」

体重が1kg以上ないと、適切な量の抗生剤を打つことができない。
効果的な治療が見込めないのに、体力のない子に処置を施すのはリスクが高い――
というのが先生の判断だった。
とにかく、まずは1kgを目指そうという話になった。

「毎日、体重を量って、これ以上減らさないようにしてね」

この時点での、ねこさんの体重は350g。二週間後の来院の予約と、二回目のノミ薬塗布で受診は終了。

ちなみにノミの薬を塗布しても、すぐには死滅しない。徐々に効力を発揮して、卵と親が死んでいくから、即効性を期待してはいけないらしい。

しかし、飼っている側からすると「そのうちいなくなるよ」と言われても、できることなら今すぐにでも撲滅したいと思ってしまうものではなかろうか。増えないと言われても、遅効性だとわかっていても不安になる。

とはいえ、ノミは知らないうちにいなくなっていたのだが――

 

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さて、受診を終えたぼくたちには目標ができた。問題は、目標を具体的にイメージできないことだった。

350gという数字が具体的にどれくらいの重さであるのか。月齢で言うなら、どのあたりなのかということがまったくイメージできないのだ。

一番わかりやすいのは、ビール缶一本と同じ重さを想像すること。となると、1Kgは350g缶三本分に相当する。現状の三倍の大きさにすればいいだけの話だった。

自力でごはんを食べることはなかなか難しい状況だったけれど、こまめにきちんと食べさせている。体重増加はさほど難しいことではないと楽勝気分でいた。

しかしである。実はこれがすさまじく大変なことだということを、その翌日に思い知らされたのである。

その日から、食べる度にねこさんの体重を計測するようになった。
一食食べると20gほど増える。しかしうんちをしてしまうと20g減ってしまう。

4回食べさせれば80g増加するはずだが、実質はうんち分を差し引いて、1日あたり60gしか増えない。60gと言えば、卵1個分の重さである。

6日あれば360g増える。つまり1週間あれば、缶ビール1本分稼げる計算だ。そうなると3週間あれば、目標の1Kgに到達できるなのだ。

だが翌日、想定していなかった事態が起こる。体重が340gに減少してしまったのだ。

――ひやぁぁぁっ!

真っ青になった。これ以上減らすなと言われている傍から減ってしまったのだから。
それはもう、某アニメの主人公ではないが、顔に真っ青な縦線びっしりの残念顔にもなってしまう。

――なんで増えないの?

いつものようにごはんを与えている。食べている量も変わりはないはずだった。食事を与える回数だって減らしていない。それでも体重は減ったのだ。理由がまったくわからなかった。

食べられるだけ、とにかく食べさせた。回数を増やし、完食を目指す。
根気よく続けたことで、390gまで増やすことができた。しかしそこがピークだった。

390g以上、彼の体重が増えることはなかったのである。

こうして、風邪をこじらせたねこさんはますます具合が悪くなっていく。

しかし、それでもぼくはまだ必死に、彼を太らせようとしていた。
獣医さんの『二週間後に来てね』という言葉を守り、次の受診までになんとしても今の体重より増やそうと――

この選択が誤りであることに気づくのは、もう少し先の話になるのであった。

この頃のねこさん
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お気に入りになったもふもふ毛布で、寝ていることが多かった。

(余談)
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――ひとつの命をはぐくむこと(3/11)つづく――

作:紫藤 咲
 

――次話――

ねこさんの住環境を良くするために、二階建てケージを発注。
三階建ても気になるが、ずっと元気のないねこさんを見ると、そこまでは必要ないか……
うちの子にすると決めると、猫用グッズを見るのが楽しくて仕方がない。
そんな新米飼い主の日々。

――前話――

ねこさんが、自力で排泄ができるように。
喜ばしいことなのだが――、超軟便である。
そしてとうとう、その軟便で大事故も発生。

――ひぃっっ!
トイレ環境整備を急がねば。
そんなことを考えながら、ぼくにはある決心が固まっていくのでした。

まとめ読み|猫さん拾いました ③
この記事は、下記のまとめ読みでも読むことが出来ます。

週刊Withdog&Withcat
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。

――本クールの第1話目(1/11)です――

先住犬ひなさんと、ねこさんのお近づきチャレンジの再開
しかし、吠えまくるひなさん。
――上手く行かない。

引き離そうとするぼくに、ハットリ君が言う。
「まぁ、待て。ちょっと見てみようぜ」
ひなさんと、ねこさんは、家族になれるのか?
そして彼は、遂に”運命の一言”を、ぼくに告げるのでした。

――本連載の第1話です――

運命の日――
ぼくは猫を拾った。

犬派だった著者が、猫を拾ってからの悪戦苦闘を描くエッセイ。
猫のいない日常に、飼ったこともない猫が入り込んでくる話。
はじまりは、里親探しから。

――当然、未経験。
「ぼくらの物語はこの日から始まった」

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