猫の話をしようか

なかなか聞けない猫の話。こっそりおしえる猫の話。

【猫の保護】子猫、肺炎、死亡率~ひとつの命をつなぐこと(5/10)~

ねこさん、拾いました
f:id:masami_takasu:20181122175638j:plain撮影&文:紫藤 咲

ねこさんが入院してしまうと、ぼくはひどく暇になった。それまでどれくらい彼に時間を費やしていたのかを、本当に思い知らされることになったのだ。

あまりにもやることがなくなってしまって、あらためて彼の存在の大きさをひしひしと感じた。

はじめはそれこそ誰かにお任せしようというくらい、実に簡単な気持ちから始めた同居生活だった。けれども一緒に暮らし始めて三週間くらいで、彼はぼくにとってかけがえのない存在に昇格していたのである。

静かになってしまった部屋でぼくができたことと言えば、ネットで同じような状況で助かった症例があるのかどうかを調べることだけだった。

バカみたいに何回も検索した。

『子猫、肺炎、死亡率』
『子猫、肺炎、助かる』

など、子猫の肺炎に関係することならなんだっていい。なんでもいい。
少しでいいから情報が欲しい。

そういう思いで検索しまくったのだが、結果的にほとんどその手の話を拾うことはできなかった。

死ぬことより助かる事例のほうが実際には多そうだった。よほどの持病がないかぎりは大丈夫という情報もあった。

けれどその一方で、子猫の場合はたいへん危険な状態になる。死亡する可能性も高い。完治は見込めず、大人になっても肺炎にかかりやすくなる――という、おおよそポジティブとはかけ離れた情報ばかりが入ってくるばかりだった。

そうなると凹んだハートがさらにしぼんでしまう。

さらに、だ。うちのねこさんほどの小さい身体で肺炎になったという話が本当に出てこないのである。

二か月、三か月という大きさの子で肺炎になったという話が出てきたのはたしかだ。しかし彼ほど小さい子の話に行き着かない。探し方に問題があったのかもしれない。それにしたって、何度検索しても350グラムの体重の子猫が肺炎から復活する話は見つからなかったのである。

この350グラムの体重だが、以前、缶ビール一本分の大きさであるという説明をした。では、この大きさが猫の成長過程において、実際どれくらい月齢に相当するのか――ここが実はとても重要なことなのである。

うちのねこさんは初診のときに『三か月の男の子』と言われている。三か月の子猫であれば通常、体重は1300グラムほどが平均である。では、うちのねこさんの大きさはどこに当てはまったのか?

三週。つまり、ひと月満たない状態の子猫と同じだったのだ。

 

f:id:masami_takasu:20181122183252j:plain

よくよく調べていくうちに、歯の生え方の状態がどう考えても三か月とは思えなくなってくる。ぴたりと当てはまるのはやはり三週。離乳開始もこの頃だ。

すると初診のときの先生の判断はどうだった? という話になる。

ぼくはねこに関しては恐ろしいほど無知である。初めてねこを飼うというのに、ねこの育て方の本の購入もしなければ、ネットという便利なツールで調べもしなかった。
ゆえに育て方は申し訳ないくらい我流というか、手さぐりだった。

だからこそ、先生の言葉だけを頼りにしてここまでやってきた。しかし調べれば、調べるほど、先生の言葉が怖いくらい信じられなくなっていく。

そもそも初めの段階で診立てが違ってしまっていたら、それこそいろいろ変わってきやしないだろうか? 

これはハットリくんにもかなり指摘されてきたところだ。
本当にコイツ三か月なのかと、彼はねこさんを見るたびに首をひねっていた。

初診のとき、ねこさんの歯は四本しか生えてなかった。
犬歯と呼ばれる鋭い歯が上下に四本あっただけだ。

これでカリカリ食べられるの? と疑問に思ったのもたしかだ。
かと言って哺乳瓶でミルクを与える大作戦は、全力で嫌がられ、断念してしまっているのであるが。

先生に対する猜疑心に囚われつつあったぼく。
さらにぼくの心を蝕む原因になったのは環境的、心理的悪循環だった。

寝不足や不安がそれをさらにあおる。
自分たちも悪かったけれど、他に悪くした要因を探そうとする。
外に原因を作ることで、なんとか不安を取り除こうとしていたのだ。

このネガティブな状況はますます気持ちの不健康化を加速させた。
人間が悪いことを考えるときは、たいてい精神が不安定になっている。かつ、肉体的にも健全な状態ではないとしたら、悪い考え方は状況が好転しないかぎり打ち消すことはできない。むしろ、急速に膨らんでいく。

そんな状態にたった一晩で、ぼくは陥ってしまっていた。それくらい、ねこさんの入院はぼくにとって大きな出来事だった。

こんなことを実際に経験したからこそ、ぼくは今このエッセイを綴っている。
一縷の希望にすがりたい――、大丈夫だと思いたい――
そう思う人たちに、うちのねこさんの辿った道が、わずかだろうと希望の灯になるようにと――

かくして、こんな心理状態になってしまっていたぼくは、入院翌日の午後の診察開始時間に合わせて、ねこさんに再び会いに行くことになる。

この日がねこさんにとって、その命最大の山場になるなんて思いもせずに――

寝ているときが本当に多かったねこさんの猫らしい寝顔
f:id:masami_takasu:20181122183346j:plain
こっち側から見ると、腫れもなく、普通に見えるのだけれど……

(余談)
f:id:saki030610:20181112215716j:plain

 

――ひとつの命をつなぐこと(5/10)つづく――

作:紫藤 咲
 

――次話――

――前話――

週刊Withdog&Withcat
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。

――本クールの第1話目(1/10)です――

――本連載の第1話です――

――おすすめの記事です――

――作者の執筆記事です――