撮影&文:ゆきねー
~うちの子がうちにくるまで No.6~
愛猫を家に迎えるまでの葛藤を、飼い主自身が、自分の言葉で綴ったエッセイのシリーズです。
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我が家には、最近まで猫が4匹いましたーー
いました、と過去形で言うのは、そのうちの1匹、ノルウェージャンのチェリーが、つい先日、お空に旅立ってしまったからです。
チェリーはちょっと変わった猫でした。というのも、異食癖をもっていたのです。
それも、かなり重症のやつです。
今日は、このチェリーとの出会いについて書こうと思います。
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チェリーとの出会いは偶然でした。
私の知り合いの中に、ラグドールのブリーダーさんがいます。その方はラグドールの子をショーに出している方で、私はよくそのショーを見に行っていました。
ある日私は、ショーの会場で会ったブリーダーの彼女に「ノルウェージャンって可愛いわね」と何気なく話をしました。本当にノルウェージャンが好きでした。
すると驚いたことに、彼女はその場で「ノルウェージャンのブリーダーさんを紹介したい」と言うのです。
期待も何もしていなかったのですが、言っては見るものです。
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因みに、ノルウェージャンは、正式にはノルウェージャン・フォレスト・キャットと言います。直訳すると『ノルウェーの森の猫』です。
寒いノルウェーの森で暮らすのですから、長毛です。それもものすごい長毛。
そして指の間にまで毛が生えています。それは雪の上を歩くのに便利だからだそうです。
さて後日、約束通り私は、そのノルウェージャンのブリーダーさんに紹介されたのですが、そこでまた、驚きの一言を聞く事になりました。
そのブリーダーさんは初めて会った私に、「計画繁殖外で出来た子をどうしようかと困ってたの」と突然私に言ってきたのです。そして続けて、「計画繁殖外の子は、大抵ペットショップに売るんだけれど」と――
それを聞いて私は即決、ほぼタダでノルウェージャンを貰い受けることになったのです。
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息子と私2人でそのノルウェージャンのブリーダーさんのところに出かけてみると、計画繁殖外子は5匹いました。
最初、私は男の子が欲しかったのですが(当時はメスばかり飼ってましたので)、「一番元気でチョロチョロしていてこの子がいいな」と思った子は女の子でした。ショータイプの子猫と比べると、さすがに計画繁殖外の子達はあまり見栄えがしない感じでしたが、私は迷う事なく、この子猫を引き取ったのでした。
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桜の頃にやってきた為チェリーと名付けたこの子の父親はアジアチャンピオンですが、母親はペットタイプの猫。この母猫は、繁殖から外されて、避妊手術をしようとしたら、すでに妊娠をしていて、妊娠した子宮を取ることは出来ないので、そのまま産まれてきたのがチェリーなのです。
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チェリーが我が家にやってきてから、2年ほど経って、チェリーが2歳を過ぎた頃「あれ?おかしいな」と思うことが次々と起き始めました。
家の中に、鋭利なハサミで切ったようなヒモが落ちていたり、気がつくと私の洋服が切れてしまっていたり。
そんなある日、私は、チェリーがバスタブの隅っこで苦しそうにしているのを見つけました。「これは何かあるな」と咄嗟に思い、病院に連れて行くと、チェリーはヒモを飲み込んでいたのです。すぐに開腹手術となりました。
そんな事があってからほどなく、ガス点検に来た業者の人から、「ガス管ホースが切れて、ガス漏れしていますよ」と驚くようなことを言われたのです。
私は、すぐにそれがチェリーの仕業だとわかりました。そして、ガス管ホースまで齧ってしまうのかと愕然としました。
ホースは齧った程度だったので、チェリーには全く問題ありませんでした。
しかし我が家では、チェリーにかじられないように、ガスファンヒーターから床暖房に変更まですることになったのでした。
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それからもチェリーの異食癖は続きました。
最初にヒモを飲み込んで、開腹手術してから数ヶ月も経たないうちに、今度はなんだかわからない、やはりヒモ状のようなものを飲み込んで、2回目の開腹手術。
そして3回目はドレッシングの中蓋を飲み込んで、運悪くその後に毛づくろいをしたために、その毛がお腹の中に詰まり、腸閉塞を起こしてしましました。
意識もぐったりしてしまい大変です。緊急手術となってしまいました。
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こんなにも、立て続けに開腹手術となったチェリー。
なぜそんなに異食癖がひどい子だったのかは分かりません。
当時診てもらっていた獣医師からは「長く生きて欲しいのなら、ケージで育ててください」と言われてしまいました。
「ケージの中だけで生活するなんて、そんなこと可哀想」
獣医師からの提案に、家族は大反対でした。特に娘は、チェリーがケージに入れられていると、そこから出してしまって、おまけにすぐに目を離してしまうので、その隙にチェリーが何かを食べて嘔吐。
嘔吐で済めばいいですが、また開腹手術になったらチェリーがあまりにも可哀想です。「ケージから出すのなら、チェリーから絶対に目を離さないで」
と、何度も話しました。その事で、私と娘は、随分と揉めたものです。
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しかしそんなことを何度も繰り返しているうちに家族も、チェリーがケージで生活していくことが、チェリーの命を守っていくことになるのだ、とわかってくれるようになりました。
こうやって、チェリーのケージ生活がスタートしたのでした。
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さて、チェリーはケージの中でどうしていたのか――
チェリーの運動は、2階建内ケージでの上下運動のみ。ケージはリビングに置いてありましたが、毎日の掃除の際には、ケージからチェリーを出して抱っこしながらケージ内を綺麗にしました。
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この記事を読まれている方の中にも、窮屈な生活で可哀そうだと思われる方がいるかもしれませんね。しかしチェリーにとっては、そうでもなかったように思います。
ケージ生活をさせている後ろめたさから、私はチェリーの欲しがるものを食べさせていました。そのためでしょうか、チェリーはケージ生活になったことを楽しんでいるようにさえ見えました。
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気ままなケージ暮しを15年続けて、チェリーは18歳まで生き抜きました。
平均寿命11歳から14歳と言われる、短命なノルウェージャンにしては、随分と長生きをしてくれたものだと、今は感謝をしています。
――チェリーがうちの子になったのは・おわり――
~うちの子がうちにくるまで No.6~
猫の名前:チェリー
猫種:ノルウェージャン・フォレスト・キャット
飼主:ゆきねー
▶ 作者の一言
▶ゆきねー:猫の記事 ご紹介
▶ゆきねー:犬の記事 ご紹介
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~犬や猫と暮らすあなたへ~
『うちで飼えるかな?』
『きちんと面倒を見られるかな?』
犬や猫を、”はじめて”飼う時、ほとんどの方はこう思ったことでしょう。平均年齢でいえば15年も生きる小さな命を預かるのだから当然ですね。その葛藤を乗り越えて、我々は犬や猫と暮らします。
毎日が楽しいですか?
――きっと楽しいですよね。
だって、犬を飼うこと、猫を飼うことは、喜びに満ちていることだから。
どうか忘れないでほしいのです。その楽しさを手に入れる前に、我々はものすごく大きな決心をしたのだということを。
そして、どうか自信を持ってほしいのです。
その決心が、ずっと我々を支え続けてくれるのだと。
いつか、その子を送るときが来たとしても。
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――うちの子がうちにくるまで、次話――
猫-7|ソーニャ
今回は『その日がくるまで生きようず』のソーニャさんのお話。
はじめは犬を飼うつもりで訪れたペットショップ。
しかし、そこで心奪われてしまったのは、なんと猫でした。
「もうこの子しか見えない……」
――うちの子がうちにくるまで、前話――
猫-5|おいで
毎日、仕事帰りに、ニャーニャー鳴きながらついて来た子猫がいました。
ある雨の日、私は濡れたその子猫を拾い上げました。
『おいで』と名付けたその子は、賢くて、生きる事を楽しんでいるようでした。
しかし……
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この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。
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――チェリーの記事です――
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