猫の話をしようか

Withcat 猫と飼い主の絆について

【野良猫/保護】あなたの名前はマナよ ~私の空、マナ!|二人の出会いは突然に(3/10)~

【関連コンテンツ】

私の空、マナ!f:id:masami_takasu:20190208103412j:plain撮影&文:あおい空

ネコさんを拾ってから五日後、私は彼女に名前を付けました。
天からの贈り物マナです。

これには、ちょっとしたというか大変な出来事があります。
ネコさんと出会った日に、時間を戻すことにします。

――五日前――

まず最初に余談から。
私はアパートに引っ越して、車を手離しました。これは以前にも書きましたね。ひとり暮らしを始めた私には、とにかく車は維持費がかかりすぎです。
ガソリン代、車検、駐車料金など――
スーパーやバス停も近いアパートの恵まれた立地条件など考えると、車はいらないなと決意したのです。

その代わりに自転車をホームセンターで買ってくると、その腹心の友を『エリザベス2世』と名付けました。

朝6時に子ネコを拾った私は、動物病院の開院時間9時を待って自転車(もちろんその名は『エリザベス2世』)を駆りました。ここからは、その動物病院での話です。

病院につくと、医師は「なぜこんなものを拾ったのか」という顔でした。でも、本当にそう思っていたかどうかはわかりません。その医師はあまりおしゃべりが上手ではありませんでしたから。

もしかしたら、私が口下手な獣医さんに会ったのが初めてだったから、過剰にそう感じてしまっただけなのかも。
とは言っても、大事なことだけは聞き逃すわけにはいきません。
性別と推定月齢を聞き、体重測定と蟯虫検査をして、蚤取りの薬を塗ってもらうと、何を食べさせたらいいかも教えてもらいました。

平日とあって診察は早く終わりました。

私は診察を受けたことでホッと安心して、来たときと同じように子ネコを簡単なバックに入れて、自転車の前についているガゴに乗せました。
「さあ、帰るよ、エリザベス2世」
私はペダルに足をかけて、来た道を戻り始めます。

しばらく走ると大きな交差点がありました。信号は赤です。
カゴがガタガタ揺れたので、子ネコは大丈夫なのかなと袋の口を少し開きました。
その時でした――
子ネコが袋から飛び出すと、ピョンと地面に飛び降りて、交差点の角にある藪の中へ入ったのです。

私は慌てて自転車を止め、子ネコを追いかけました。
垣根の間から見えたのは、深い藪の光景です。

 

f:id:masami_takasu:20190208103715j:plain

「何ここー!」
私はカバンをたすき掛けに担ぐと、垣根の隙間から潜るようにして藪の中に入りました。腰まである絡まった木々の枝。
そこに押し入ると、巨大蜘蛛に巨大な蜂――
トカゲなんて気にならない――

その広さは奥行き十メートル、幅は田んぼ一枚分は軽くあるでしょうか。
私はその腰まで浸かる薮の中を、とにかく進んで子ネコを捜しました。

天気が良くて、太陽がジリジリ照りつける。もう汗まみれ、蜘蛛の巣だらけ。
時折聞こえる、子ネコの鳴き声だけが頼りでした。

動物病院を出たのが10時。
それから2時間半経ちました。太陽は頭の真上まで来てジリジリ照りつけ、疲労は限界にきています。
そして――、頼りの子ネコの鳴き声がもう聞こえません。絶体絶命です!

私は藪を出て、停めてある自転車に戻りました。もう見つからないかもしれないと諦めかけました。拾って部屋に連れ帰った時、フリースを敷いたカゴの中で寝ている子猫の顔が浮かびます。

――ここまで連れて来たのは私なのに――
私は自分を責めました。そして私は、空を見上げて神様に祈りました。
「ネコが見つからないまま家に帰れば、1日中泣いていることでしょう。どうぞお願いします、助けて下さい」

それから、もう1度だけと思って、私は藪に入りました。

何歩か歩いたところでした。
本当に小さな声で「みゃー」という鳴き声が聞こえました。声のした方向へ行くと、いました! 私は幸運でした。神様に感謝しました。

この出来事は『お前はネコを飼う気があるのか? 育てられるのか?』と試されていたのだと今は思います。しかしそのことに気がつくのは、まだ先のことでした。

子ネコの名前に話しを戻します。

子ネコと拾った直後、私は自分が猫を飼えるのだろうかと自問していました。だって仕事を持っていますからね。しっかりとお世話ができる自信もありません。
誰かもらってくれる人がいたらと思い、4日間はその子に名前をつけられませんでした。

そして子ネコと暮らして、五日が過ぎた時でした。
「やっぱり名前を付けよう」
そう思いました。今振り返ると、最初から私は、子猫を飼おうと決めていたのかもしれません。本当は拾った時から――、抱き上げた瞬間から……

「何と言う名前がいいかな?」
仕事をしながらチラリチラリと考えました。
白い足だから、ソックス?
それとも、メイ? マリー?

それから閃きました。この子は、空を見て願った時に見つかったネコ!
天からの贈り物!
マナだ !
mannaと書いてマナ!

昔々、砂漠で飢えた民に、神様が天から降らせた食べ物がマナでした。

マンナという赤ちゃんのビスケットをご存知ですか?
私はずっとマンナが、マナと似ているなあと思いと気になっていました。インターネットで調べてみると、やはりマンナの意味はそこからきていました。

マンナというお菓子のように優しい味――
この子はみんなに愛される子になってほしい。そう思いました。

親が子供が生まれたときに、優しい子になってほしいという言葉をよく聞きます。
それとまったく同じ気持ちでした。

あなたの名前はマナよ!
Mannaと書いてマナ!

 

――二人の出会いは突然に(3/10)つづく――

作:あおい空
 ▶あおい空:記事のご紹介
構成:高栖匡躬、樫村慧

――次話――

――前話――

まとめ読み|私の空、マナ ①-二人の出会いは突然に(1/2)
この記事は、下記のまとめ読みでもご覧になれます。

週刊Withdog&Withcat
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。

――おすすめの記事です――

――作者の執筆記事です――

© 2017 Peachy All rights reserved.