私の空、マナ!撮影&文:あおい空
普通の会社員の私が子猫と暮らし始め、「1分でも早く家に帰らなければ~」という生活が始まりました。
マナという名前もつけて、その子はうちの子になりました。
そして私は、その子のお母さんになりました。
お母さんが何をするかというと、仕事を終えたら速攻でアパートに帰り、まずはミルクを作ります。哺乳瓶にミルクの粉末をスプーンに擦りきりで入れて、お湯を注いで溶かしてから、人肌になるまで水につけて冷まします。
そんな日々が始まったわけです
●
そうそう、ミルクで思い出しました!
ここでちょっとだけ、そのミルクにまつわるお話をさせてください。
話の腰を折ってしまうのですが、私にとっては大事なことなんです。
マナを拾った日――、初めて動物病院へ行った日――、藪の中を懸命に探した日――
そして――、神様が私にマナを授けてくださった日――
それは、私が初めてマナにミルクをあげた日でもあります。
そうです、全てがあの日、2017年9月8日なんです。
ミルクについて書くとき、私はまたあの日に戻るんです。不思議ですね。
●
藪の中で2時間半もマナを探したものですから、私はマナが虫に刺されたり、ケガなどしていないか心配でした。見つけた後は、そのまま動物病院へ取って返して、再度診察をしてもらったほどです。
医師は視診と触診するしただけで、「あっ、だいじょうぶですね」と言って、5分程度で診察は終わりました。泥まみれ汗まみれの私はホッとしましたが、500円の診察料を再度払うことになりました。
●
――あの日――
アパートに戻ると、子ネコは疲れたのか、洗濯物のカゴの中ですぐに寝ていました。
私はとりあえず、汗と泥まみれの体をシャワーで流しました。
スッキリした私。さて――
シリンジだけは動物病院でもらいましたが、肝心のミルクと哺乳瓶は動物病院に置いてありませんでした。だからとにかく、医師が言ったとおりに、ミルクと哺乳瓶を買いに行かなければいけません。
●
近所のドラッグストアーに問い合わせましたが、ミルクは置いてありませんでした。
猫用のミルクは、人間の赤ちゃんのものとは違うのです。
そたると、もう大手スーパーにあるペットショップまで行くしかありません。
そこには相棒の自転車『エリザベス2世』を跳ばしても、30分~40分かかります。
●
「ウ――ムッ」と思案する私。
車を手離してからの私は、そのスーパーに自転車で行っていました。
お天気で気持ちの良い日は、ちょっと遠回りをして、川沿いに続く散歩道を通ってユルユルと通ったものです。
その店のペットショップには犬や猫がいて、トリミングもやっていました。だからペットショップの店員さんに子ネコを見せれば、ミルクやドックフードも選んでもらえるかもしれないと思いました。
笑われるかもしれませんが、初めてネコを飼う私には、1からわからないことだらけだったのです。
●
そこに行けばいいということはわかっていました。しかし、何といっても藪に逃げ出された直後です。子ネコを失うのはいくらなんでも懲り懲りです。
――どうやって連れて行こう?
「タクシーだ!タクシーしかない」
そう閃いた私は、すぐにタクシー会社に電話をし、迎車をお願いしました。
●
すぐにタクシーは到着。
子ネコを袋に入れた私は、運転手さんに「ネコ拾ったんです。まだ400なんです。ペットショップまでお願いします」と話しました。
ペットショップで子ネコを見せて、ミルクと哺乳瓶と子ネコ用のキャットフードを揃えてもらうと、またタクシーでアパートにとって返します。
安月給の私がタクシーを使うのは、インフルエンザで高熱が出た時以来でした。
このようにして、子ネコに必要な物を揃えた私でした。
さて、閑話休題でお話を元に戻します。
マナを拾って仕事に行って、帰ってきて、先ずミルクを作る生活が始まったというところからですね。
なぜミルクが帰宅して一番先にすることかというと、とても大事な理由があったのです。それは私とマナとの約束みたいなものです。
●
この頃のマナはというと――
トイレは拾った翌日から、段ボールに敷いた紙砂でしてくれたマナでしたが、私がいない間にはその形跡がありませんでした。トイレどころか、部屋の中の物は出勤前と同じく1ミリも動いている様子もありません。私が出かけた時のまま、整然としていたのです。
●
では、マナは1日何をしていたのでしょうか?
察するにマナは、私がいないと遊ぶこともトイレに行くこともできなかったのだと思います。きっとマナは、私がいないと何をどうしてよいかわからず、生まれて初めての場所で、恐くて動かずにいたのです。
そのことが何を意味していたのか、実は後になるとわかるのですが、それはまた別の記事にてお話します。
●
マナの目は、拾った当時は目ヤニで汚れた板のですが、それは動物病院でいただいた目薬ですぐに治りました。子ネコを拾ったときの様子は、SNSで目にしていますが、ネコ風邪や目の病気で、目が開かない子が沢山いますね。
マナはそんな子たちに比べたら、ずいぶんと軽かったのだと思います。
●
ここで少し、自分のことも書いておきます。
1話目に、マナと暮らす数日前のことを書いていますよね
私は一人ぼっちのアパートに帰りたくなくて、通勤の帰宅途中に、カラスにお菓子のクズをあげながら、小路のベンチに座っていたんです。
●
職場は個人情報の管理が厳しく、社員同士が昼休みでも話すことはありません。
隣の席の人のお母さんが亡くなったことでさえ知らなくて、次の営業日の朝に知らされるような有様です。普段からそのように徹底していないと、ふとしたことから個人情報は漏洩していく――
そんな社風はわかってはいますが、やはり家族と離れて住むようになってからは、一人ぼっちの日々は、私にとってかなり辛い事でした。
●
頭の上をカラスが、それぞれの群れで通り過ぎていく鳴き声を聞きながら、私は「カラスさんも仲間や家族とお家へ帰るのね」と思いながら、何もせずボーッとベンチに座って、そのカラスが飛び行く先を見送っていたのです。
でも、今は違います!
そう、マナが私を待っているのです!
●
一人で食べる侘しかった夕食は、マナが側にいてくれるようになって、家族で囲む楽しき食卓へと変わりました。
「早く帰るからね、待っててねマナ」
それが出勤前の私が、マナと交わす約束です。
だからね、ミルクが一番先なんです。
私を待ってくれていた、家族のためのごはんの用意が、何よりも大事!
●
ご紹介が遅くなりましたが
これがわが腹心
エリザベス2世
――二人の出会いは突然に(4/10)つづく――
作:あおい空
▶あおい空:記事のご紹介
構成:高栖匡躬、樫村慧
――次話――
――前話――
●
この記事は、下記のまとめ読みでもご覧になれます。
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。
●
――おすすめの記事です――
――作者の執筆記事です――