犬派の僕が猫と暮らす理由|4章 ひとつの命を感じること
主治医から仮退院を持ち掛けられた前話。
翌日の土曜日は、朝の七時から大掃除が始まった。
問題となるのは、ねこさんの居住スペースであるマンション(ねこさんのケージ)の設置場所。そしてエアコン。粗相されたカーペットをどうするか。
布団のダニ対策。誤飲の原因となりかねない危険物の撤収。お気に入りのもふもふ毛布の洗濯。解決しなければならないことが山のようにあった。
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特にマンションの設置場所はかなり問題だった。
というのは、これまで設置していたのが、いつでも近くで様子を見ることができるようにと、テレビの向かい側であり、ぼくの座椅子の真横であり、エアコンの対面である場所だったからだ。
設置した当初は、夏生まれの子猫がエアコンNGだということを知らなかったこともあり、涼しいところのほうがいいだろうと、エアコンの対面にバッチリハマりこむ形で建ててしまったのだ。
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しかし、そうなると、今の状態のねこさんには寒すぎることになる。肺炎はまだ完治したとは言われていない。寒さによって、風邪がぶり返し、病院まっしぐらなんてことは絶対に避けねばならない。
となると、マンションは移動確定である。
しかし、このマンション。思ったよりもでかいのだ。スリムタイプではないため、幅もそこそこある。
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解体して、もう一度設置するのは、ぼくの虚弱ボディーでは荷が重い。ならば、解体せずにそのまま移動すればいいが、そうなれば、そこそこ幅があり、高さのあるものが移動できる動線の確保が必要となる。
さらに言えば、ぼくの家の床は濃い茶色をしたフローリングである。床板を引きずれば傷になってしまう。それも避けたい。
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そこで居間のテーブルを隣の和室へ移動させ、薄手の洗濯可能なカーペットは洗濯機行き。設置予定場所の荷物も和室へ移動し、掃除機をかけた上で水拭きした。ワックスもかけてしまおうか悩んだが、乾かす時間はないため断念。
マンション内のねこさんのトイレ、水受け、爪研ぎ、カプセルホテル等のグッズをすべてとり出し、軽くなったものを持ち上げて、テレビの隣であり、同居犬のひなさんのケージ横である場所に並んで配置する。
エアコンの近くだけれど、真下や向かいではなくなったから、冷気が体温を奪うこともないだろう。
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次の問題はエアコンである。
夏冬フル活動のエアコンを開けるのは、非常に怖かった。しばらく、きちんフィルター掃除をしていなかったからだ。恐る恐るエアコンの上蓋を開ける。
――そりゃ、具合悪くなるわな。
フィルターは埃で覆われていた。
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何年もプロにお掃除してもらっていないし、室外機も埃で覆われている。
自力でできることはやって、シーズンオフにはプロに洗浄を頼んだほうがいいだろうなと実感する。しかしながら、こんな状態でも健康でいられる我が身が不思議でならない。猫は肺の機能が弱い生き物であることをあらかじめ知っていたならば、こんな大事にはならなかったのかもしれない。
そんなふうに、己の無知さを呪ってしまう。
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さて、エアコンクリーン大作戦の展開中に、布団の乾燥と洗濯を行う。
春用のカーペットは夏用のい草のものに替え、シーツ、カバー、毛布も洗う。洗濯機は三回は回していたと思うし、洗濯物は干す場所に困るほどに膨らんでいたとも思う。
結局、すべての片付けが終わるまでに三時間を要したのだが、普段からきちんと片付けができていれば、こんなことにはならないのに――と、本当に心の底から普段のだらけた生活を反省するばかりだった。
とはいえ、あくまでこれは一泊二日の仮退院のために頑張ったことである。
今後、彼が常にいる状態になったならば、普段から徹底しなければならない。きれいで過ごしやすく、危険物のない居室空間を保たねばならないのだ。
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危険物を排除しなければ、誤飲、誤食、怪我のもとになりかねない。ぼくは過去、実際にこれで何度か痛い目を見ている。
実家の小犬にケーキのセロハンを食べられたとか、ひなさん(子犬時代)が水銀体温計を噛んで、水銀を飲み込んでしまったとか。その度に獣医さんに駆け込み、吐かせて、なんとか大事にはならずに済んだのだが、できるならば、こんな事態には二度と遭遇したくないのである。
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掃除嫌いなぼくからすれば、これらは大いなる課題であるが、これも神のおぼし召しなのかもしれない。
普段の生活を改めよ。という――
大掃除を終え、きれいになった部屋でひなさんとまったり昼寝をし、午後の診察時間すぐにねこさんを迎えに行った。
空っぽになっていたカプセルホテル(キャリーケース)を意気揚々と持って。
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楽しい一晩を想像して迎えた仮退院。しかし甘かった。
だってそれは、ぼくの想像を軽々と飛び越えるほどの楽しい一晩だったのだ。
これまでのつらい出来事が吹き飛んでしまうほどの喜びをもたらした、思い出深い日になったのである。
――次回に続く――
前にもお話ししたと思いますが、ぼくは小さい頃一度だけ猫を飼っていたことがありました。ほんの一年足らずでしたけど。今回はそんな思い出をぎゅぎゅぎゅっと漫画に詰め込んでみました。
いや、実際にかなり探したんですよ? それでもこの結果はとても残念でなりませんでした。この一件を深く悲しんだ親父殿。以来、ぼくの家ではなにがなんでも猫は飼えなくなりました。いなくなる寂しさに親父殿のメンタルが耐えられなくて――なんて理由を知るのはぼくがねこさんを飼うようになってからなのでありました(笑)
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【漫画でどうぞ】
――ひとつの命を感じること(4/12)つづく――
作:紫藤 咲
▶ 作者の一言
▶ 紫藤 咲:猫の記事 ご紹介
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――次話――
ねこさん仮退院の日。
迎えに行ったぼくは、まだ少しの不安。
でも、ねこさんは元気印だった。
そして、待望の仮退院!
家に着いたねこさんは、よほど嬉しかったのだろう。
駆けずり回って遊ぶ、遊ぶ、遊ぶ!
このまま退院まで行けるのかな?
――前話――
「にゃー! にゃー!」
獣医さんに面会に行くと、益々ねこさんは元気になっていた。
かわいらしさ全開!
先生は言った。
「連れて帰る?」
それは、仮退院が決まった瞬間だった。
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この記事は、下記のまとめ読みでも読むことが出来ます。
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。
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――本クールの第1話目です――
ねこさん不在の寂しさを救ってくれたのがSNSでの交流だった。
そこで想うのが『引き寄せの法則』だ。
『強く願ったことが叶う法則』である。
みんなが祈ってくれたら、きっとその思いは――
――本連載の第1話です――
運命の日――
ぼくは猫を拾った。
犬派だった著者が、猫を拾ってからの悪戦苦闘を描くエッセイ。
猫のいない日常に、飼ったこともない猫が入り込んでくる話。
はじまりは、里親探しから。
――当然、未経験。
「ぼくらの物語はこの日から始まった」
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個人の保護エピソード――
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――作者の執筆記事です――