今回のお話は:家猫の『まろ』と、戻ってきた『彼女』
彼女が残していった2匹の子、キキ、ララ、ムーが加わって、更に大所帯となった猫宅。ここまでの仲間たちを整理しておきます。
とら、茶々、華、雪、天、月、あずき、陸、空、みっけ、てっぺい、真白、ぱんだ、麦、小麦、風子、そしてキキ、ララ、ムー
これで合計で19匹です。
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一方我が家は猫宅だけでなく、本宅でも猫を飼っています。そのころは、自宅のまろも出産しました。
はち切れんばかりの大きなお腹をしたまろは。もういつ生まれてもおかしくないように思われました。ある日、ちょうど私が家にいたときのことです。いつものようにベッドの上で寝ていたまろが、急に破水しました。
私は慌てて、用意してあった産箱にまろを移すと、まろが安心できるように、いつもいる寝室の一角にその箱を置きました。時々様子を見ながら、時間をかけてその時を待ちました。
やがて、ゆっくりと生まれてくる子猫たち。
子供の頃から家には猫が居たのですが、出産の場面に立ち会うのは初めてです。
「終わり?」「えっ、まだ?」
そんな風に思っているうちに、まろは4匹のお母さんになりました。
でもその中の1匹は、どうも様子がおかしい。何度も何度もまろの近くに行くのですが、お乳を吸う力もありません。不運なことにその子は、お星様になってしまいました。人間の子ならば、未熟児の赤ん坊も医療の進歩で救う手立てがありますが、猫は厳しいですね。猫は死産や、未熟児で死んでしまう子が意外に多いのだそうです。
扉の写真と上写真が、授乳中のまろ。
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さて、このまろの子供3匹ですが、みるみる大きくなっていきました。
どの子もとても可愛かったし、何しろ私は出産にまで立ち会っています。そのまま家に置いておきたかったのですが、主人が首を縦には降ってくれませんでした。
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猫宅に連れていくかどうか迷った末、学生時代からの友人の所に2匹、お世話になっている獣医さんの紹介で1匹と、3匹全てを里子に出しました。
賑やかだった我が家も元の3匹に戻りました。
そして、猫宅と共に暫くは平和な毎日が続いたのでした。
暫くは……、ですが……
2015年になってからのことです。
なんと外猫となっていた彼女が、再び大きなお腹をして舞い戻って来ました。
自分で玄関先に来て、私を待っていたのです。
私は驚きました。彼女がもう戻ってくることはあるまいと覚悟をして、外に出してあげたのですからね。彼女も覚悟を決めて出ていったはずです。その証拠にそれまでの間、私は一度たりとも、彼女の姿を見たことがありませんでした。
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あの時彼女は、自分の力で帰ってきたのか? それとも誰か、例えばポリスに連れられて戻って来たのか?
ただ一つ確かなのは、彼女が猫宅を思い出し、そこでの生活に戻ると決めたということです。彼女にとって安心して子供を産める場所は、猫宅以外にはなかったということでなのだと思います。
本当に不思議で仕方がありません。あれは動物の本能なのでしょうかね?
いずれにせよ、ここからまた、猫宅は動き始めます。
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私たちは彼女を、女の子部屋に戻すことなく台所で過ごしてもらうようにしました。なぜかというと、彼女は以前と変わらず、誰とも打ち解けなかったからです。彼女の警戒心は相当なもので、私たちにも体を触らせることはありませんでした。
そんな風にして日々は過ぎていきました。
そして日に日に、彼女のお腹は大きくなっていきました。
誰の目にも、出産はもう間近なように思われました。
それはいつもと変わらぬ朝でした。
猫宅に行った私は、いつもと同じように、玄関を開けてキッチンに入りました。彼女の様子を見るためです。
――そこで、私は目を疑いました。
キッチンには、彼女が出産できるように段ボールハウスを置いていたのですが、その近くが血まみれになっているのです。
「何事?」
その血だまりに目をやると、そこには産まれたばかりの子が横たわっていました。
しかもその子は五体満足な体ではなく・・・
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私は彼女に問いかけました。
「なに?なにがあったの?」
「どうしてこうなったの?」
「何が気に入らなかったの?」
――半分泣きなから、何度も何度も。
私には、彼女が何でこんなことするか、理解が出来ませんでした。
でも、よく見るとその子は、産まれたばかりの仔猫にしてはかなり大きくなっていました。良くこんな大きな子を一人で産んだものだと、そちらの方が不思議なくらいで。
私は泣きながら、その亡くなった子を抱き上げました。そこでまた驚きました。
何と、もう一匹同じような子がいたのです。
猫は自分の産んだ子を、跡形もなく食べてしまうことがあると聞いたことがあります。
足手まといになる虚弱児を減らして、自分と健康な子を守るためだとか、子猫の亡骸を他の動物に見つからないよう、隠すのが目的とかいいます。
多分彼女もそうしたかったのでしょう。でもそれをするには、その子はあまりにお腹の中で成長しすぎたのです。きっと。
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私は、死産で産まれてきたことだから仕方がないないだと、自分にいいきかせました。
彼女の子は2匹はお星様になり、強運の持ち主の1匹が残りました。
4月に産まれたことから、その子は四月と書いてしずくと名付けました。
上の3つの写真が、4月です。
すぐ上の写真は、最近撮影したものです。
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そう言えば私は、外猫のちゃーが産まれたばかりの仔猫を咥えてきて、まるでキャッチボールでもして、遊んでいるような光景を目にしたことがあります。最初は虫でも捕まえてきたのか? と思って見ていたら、間違いなく猫の赤ちゃんだったのです。
直ぐ取り上げ土に埋めた記憶がありますが、猫は時に人間に理解できない行動をすることがあるのですね。
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最後にもう一度、猫の整理をしておきますね。
とら、茶々、華、雪、天、月、あずき、陸、空、みっけ、てっぺい、真白、ぱんだ、麦、小麦、風子、キキ、ララ、ムー 、それから彼女と4月
合計21匹です。
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これは最近の女の子部屋です
――今回の写真のご説明――
扉:まろと子供たち
1枚目:まろと子供たち
2枚目:4月(彼女の子)
3枚目:4月(彼女の子)
4枚目:4月(彼女の子)
最後の3枚:最近の猫宅、女の子部屋
作:女神
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――次話――
44の物語、今回は6番目の猫、月が巻き起こした大事件。
猫宅の出産ラッシュについて――
扉を開ける特技を身に着けた月。
女の子部屋の脱走事件が頻発します。
そして、3匹が妊娠していることが分かります。
「産まれてくる子には罪はない」
それが私たち母娘の結論でした。
――前話――
44の物語、今回は外猫、”彼女”のお話。
ボス猫の”ポリス”、連れられていた母猫、”彼女”は、ある日子猫3匹を連れて猫宅に来ました。
子猫を育てる場所として、猫宅を選択したようでした。
子猫は育ち、猫宅の子になりました。
しかし、”彼女”はどうしたか――
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この記事は、下記のまとめ読みでもご覧になれます。
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。
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――この連載の1話目です――
44匹の猫が住む家、その名も『猫宅』
今日は保護した猫たちのために、専用の家『猫宅』を借りた飼い主さんのお話です。
1匹ずつに物語があって、今日はその猫宅住まいの最初の1匹目を保護した時のお話。
さて、44の物語、完成するでしょうか?
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