犬派の僕が猫と暮らす理由|4章 ひとつの命を感じること
ねこさんのお腹の中に虫がいるという話を聞いてからは、とにかく彼がトイレに行くたびに、おしっこなのか、便なのかという点に目を光らせていた。便であれば、した瞬間にはねこさんを引き離して、すぐに捨てる。
幸いだったのは、ぼくが留守にしている間に便をすることがなかったことだ。
●
さて、帰宅したぼくは早速、虫についての情報集めをした。
詳しそうなフォロワーさんに事情を話すと、さなだ虫とか回虫かなと教えてもらった。すぐに検索すると『回虫症』というものを解説しているサイトを見つけることができた。
●
この『回虫症』なのだが、線虫に属する寄生虫の一種である回虫によって引き起こされるものらしい。
ねこの体内に侵入した卵は小腸内で孵化し、壁を突き破って血管内を移動。肺に到達して幼虫から成虫間際まで成長すると、気管支や食道に移動し、宿主に飲み込まれて、また腸に戻る。そこで成虫になると、宿主から栄養を盗み、卵を産む。卵は排泄物と共に外に出され、また宿主に取り込まれるのを待つらしいのだ。
●
この回虫によって、食欲不振、下痢、嘔吐、腹痛、腹部のふくらみ、子猫の発達不良、咳、体重減少、貧血、毛艶の悪化等の諸症状がみられることになるという。
この諸症状に、ぼくは青ざめた。思い当たる症状があまりにも多すぎるからだ。
来た当初から食欲不振だった。下痢もした。ねこさんは発達不良だった。咳もあった。体重は増加するどころか減少してばかりだった。毛艶もよろしくない。ほとんどの症状が彼に当てはまってしまっていたのだ。
●
これ以上、体重を減らすわけにはいかなかった。
退院もできたし、食欲も旺盛。元気はつらつであるのは間違いないけれど、ガリガリに痩せて、あばらが見えてしまっている。体力がなくなれば、免疫も落ち、再び病気を発生させてしまう恐れも出てくる。
虫の駆逐は最優先事項。猶予はない。
一日一回、回復期用の缶詰に粉状の薬を混ぜ込む。残されてはいけないので、食べきることができるくらいの無理のない量を与える。
しかし今考えれば、なにもフードに混ぜて与えることはなかった。水を少量つけて、固めに丸めて口に放り込む、もしくは上あごにつけて飲み込ませる方法もあっただろうし、そのほうがより確実に薬の摂取もできただろう。
●
薬だけで飲めないのであれば、一口分のフードに薬を混ぜて、同じ方法で口の中に入れ込んだほうが効果が高かったような気もする。それでも、フードに混ぜて、食べきってしまえば同じことだったので、結果オーライではあった。
だけど、より確実な薬の投与方法を実践しなければならないだろうと、今後の課題のひとつともなった。
●
便を注意深く観察するも、そこではネット画像で見たような光景は展開されなかった。ホッとした。
仮に虫がうねうねする便を見てしまったら、しばらく細くて白い食べ物(ビーフンなど)は口にできなかったと思われる。
●
さて、薬を飲みきった翌日。改めて獣医さんへ向かい、排泄物の検査結果を待つ。持ってきたものに虫はついていないように見えたし、この三日間、体重も順調に増えていたので不安は少なかった。
診察台の上では元気に先生にじゃれるねこさんがいた。
「本当に、この子の遊び方はかわいいねぇ」
と、ほほえましげに、ねこさんのぷにゅぷにゅパンチを受け流しながら、先生はぼくに向き合った。
●
「虫はいなかったよ。これでひとまず、治療は終了です」
そう言って笑ってくれたのだけれど、安心する言葉はここまでだった。
「次はないからね」
グッサリとぼくの心に楔が打ちこまれた瞬間である。
●
「今度肺炎になったら助からないと思う。それに、この月齢で肺炎にかかること、ここまでひどくなることは、本当に症例がほとんどないことだからね。そこまでなってしまうということは、個体に元々、そういう気があったということ。元より持病を抱えている可能性が高いということだよ。どういう持病なのかはわからないけれど、弱いことは間違いないから」
だからこうして元気でいることは奇跡的なことだよと言われて、ぼくは大きくうなずいた。それとともに次を作ってはならないのだと、心の底から誓わねばならなかった。
●
「二週間後、一キロいったぐらいで予防接種しましょう」
ねこさんの肺炎入院、虫駆逐の治療はここでようやく、終了の時を迎えることとなった。
やっと明るい日々へと喜びも大きく診察室を出て、待合室に戻るぼくたちなのだが、この後、入院費の支払いという最大の緊張タイムが待ち受けていることは言うまでもない。
とにかくねこじゃらし大好きで、一人でとびついて、抱えて遊びまくってました(笑)
寝ているひなさんのしっぽをねこじゃらしにして遊ぼうとして、よく怒られていますね、いまだに(笑)
●
【最近のねこさん】
●
この頃よりも少しばかり大きくなったねこさまの漫画となります。
現在多忙を極めており、あたらしい漫画の制作ができなくなっております。
時間を見つけて、また漫画をと思っておりますが、ねこさまの愛らしいお話をぜひ、読んでいただければと思います(笑)
――ひとつの命を感じること(11/12)つづく――
作:紫藤 咲
▶ 作者の一言
▶ 紫藤 咲:猫の記事 ご紹介
Follow @saki030610
――次話――
4章の最終話
ねこさん退院。とても嬉しいけれど、気になることがある。何かというと……、治療費のこと。
「猫は犬に比べたら、お金はあまりかからないよ」
先生にはそう言われたが、何しろ今回は入院だ。
諭吉様の人数が気になるぼくだった。
――前話――
ねこさん、遂に退院の日。
仮退院ではなく、退院である。
診察室に連れてこられたねこさんは、至って元気で暴れている。
『退院だね』という医師の言葉。
――やった!
しかし、猫さんはその時、別の問題も抱えていたのである。
――いやぁぁぁぁっ!
●
この記事は、下記のまとめ読みでも読むことが出来ます。
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。
●
――本クールの第1話目です――
ねこさん不在の寂しさを救ってくれたのがSNSでの交流だった。
そこで想うのが『引き寄せの法則』だ。
『強く願ったことが叶う法則』である。
みんなが祈ってくれたら、きっとその思いは――
――本連載の第1話です――
運命の日――
ぼくは猫を拾った。
犬派だった著者が、猫を拾ってからの悪戦苦闘を描くエッセイ。
猫のいない日常に、飼ったこともない猫が入り込んでくる話。
はじまりは、里親探しから。
――当然、未経験。
「ぼくらの物語はこの日から始まった」
●
関連の記事もご覧ください。
テーマ:猫の保護活動
個人の保護エピソード――
●
――作者の執筆記事です――