猫の話をしようか

Withcat 猫と飼い主の絆について

【猫と飼い主】信頼は時間をかけて育むもの ~二人の未来を紡いでいこう(1/9)~

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私の空、マナ 22話
私の空、マナ_扉

撮影&文|あおい空
 

いよいよ春になった、オンボロアパートの辺り!
猫のスペシャリストさんとの約束を守るべく、ベランダの窓から網戸越しに外を見るマナと同居人。

1ヶ月の間、マナには「危ないよマナ、車来るよ」と囁き続けたました。

ここからは、マナとの信頼関係のお話しです。そのため自分が持つ考え、つまり私情を交えたお話しになりますが、お付きあいいただければと思います。

マナに注意をする時に囁くこと、つまり声が小さくなるのは、私にとって自然にそうなることでした。なぜかは、はっきりとはわかりません。ただ大きな声で注意を与えたり、起こったりすると、恐いだろうなという潜在意識が働くからではないかと思います。

自分自身が育った環境において、大きな声で怒鳴られたり注意されたりする経験がないのですから、当たり前のようにそうなってもおかしくはありませんが…。

マナの場合はもちろん人間ではありませんが、私が注意をすると、「何かわからないけれど、何か危険なのかな」と感じているようです。
「何か違うな、何だろう?」と…。

その事は、網戸越しにマナに話しかけるようになった時から、何日も経たない間にすぐに私にはわかりました。

「何かわからないけど、何か言ってるな同居人」って、表情になるのです。

 

囁き続けて1ヶ月が過ぎた頃のこと――
私は洗濯を取り込む時に、台所との境を開けてマナの様子を見てみることにしました。マナが囁きの意味をわかってくれたと、確信したのです。

ベランダの窓を開けると、マナは窓辺で回りを伺いながらしばらく外を見ていました。そしてベランダの柵を下りて地面へ。

「マナ、危ないよ。車来るよ」
私は1ヶ月続けて言ったひそひそ声で、地面に下りたマナに言いました。
マナは私の顔を見ました。そしてその辺りの臭いをかぐと直ぐにベランダに上がって来ました。

マナが初めてベランダから下りた日の、「ここどこ?何?」という表情。
それから、同居人の「とうとうマナがいなくなった」という嘆き。
それとは、雲泥の差でした。

猫と人間は、犬と人間ほどの信頼関係を築けるのか?
本当に大丈夫なのか?

迷いながらも、確信めいたものを感じ取る私……
本当にそうかな? マナと同居人!

 

余談ですが、子育てについてのお話しです。

時々、子供を虐待しているのかと思うほど、わーわー言っている親御さんをみかけますよね。でも子供はどうなのでしょうか? 注意されていることや、親が何に対して怒っているかが分かっているのでしょうか?

私は、子供は理解するどころか、わからなくなるのではないかと思ってしまいます。
私がそう感じる時は往々にして、親御さん自身も自分の感情がエスカレートしていて、歯止めが効かない様子だったりするのですよね。

1度こんなことがありました。
出かけた帰り道の、バスの中での出来事です。

男の子と女の子を連れたママが私の横にいました。優しそうなママです。初めは静かに仲良くしていた子供たちですが、時間が経つにつれケンカに発展しそうな気配になってきました。

ママは最初のうちは、「だめよ」と優しく言っていましたが、ますます雲行きかあやしくなってくると、ママの方が少しムカついてきたのがわかりました。

私はお節介かなと思いながら、子供たちに一声かけてしましました。
「春休みだね、今日はどこに行ってきたの?」
するとママの方が、「手作りの催しものがあって、その帰りなんだよね」と子供たちに話しかけました。子供たちは、自分が作ってきたものを高々と持ち上げました。

「すごいな、上手にできたね」
と言ってあげると、2人ともうれしそうな顔になりました。

それから「今日はいっぱい頑張ったんだね、少し疲れたでしょ?」と訊いてあげると、途端に兄妹の様子が変わりました。自分たちが疲れたのを、誰かがわかってくれたという安堵感のように感じられました。 「でもママ優しいね、連れて行ってくれて」とつけ加えると、2人はすぐに穏やかな顔になりました。

子供たちがケンカをしそうになっていた原因は、きっとすごく疲れてしまったからだったんでしょうね。ママはそれを理解したかどうかはわかりません。しかしおとなしくなった子供達を見て、ムカつく前の優しいママの表情に変わりました。

きっとママは、あまりに近くにいるから気付かなかったのかな? それにママ自身も疲れていて、気が回らなかったのかな?

こんな時って、客観的に見られる人が、ほんのちょっとの助け船を少し出してあげるだけでいいんですね。

思えば今は、長男であっても親から離れて所帯を持つ核家族の世の中です。おじいちゃんおばあちゃんのいる家庭で育つ子供さんは、その助け船のある環境で成長することが出来ます。そして、お年寄りを理解し優しい子に成長する気がします。

私は核家族で 育ちましたので、大家族が羨ましいです。
だから、心根が優しいなと思う人に出会うと、時折「おじいちゃんおばあちゃんのいる家庭で育ったの?」と訊ねたりします。
これが、意外に当たっていることが多いのです。

核家族はどうしたら良いのでしょうね?
私はお母さんたちに、子供を叱る際には、どうか感情に任せて「わーわー 」言わないで、諭してあげて欲しいなと思うのでした。

こういう気持ちも、物言わぬマナと暮らしているからですね。
猫と暮らすと、我慢強くなるのです。
きっと――

 

――二人の未来を紡いでいこう(1/9)つづく――

作:あおい空
 ▶あおい空:記事のご紹介
構成:高栖匡躬、樫村慧

――次話――

小さい頃のマナは何にでも興味津々。人間の食べ物にも。
私はうんと薄味で料理を作るようにして、食べても良いものといけないものを1つずつ教えていきました。まるで、母猫のように。

――前話――

第2章の最終話です。

外に出てしまったマナ。油断をしていました。
探しても姿は見えません。
「どうしよう……」
わたしはなす術もなく、外で待つことにしました。
でも、少しは自信のようなものがありました。

 

週刊Withdog&Withcat
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。

――この連載の1話目です――

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