犬派の僕が猫の多頭飼いを始めた理由
この作品『犬派の僕が猫の多頭飼いを始めた理由』は、紫藤咲作『犬派の僕が猫と暮らす理由』のシリーズ作品となるものです。
『犬派の僕が猫と暮らす理由』は、猫未経験の作者が、突然猫を拾ったことで起きる様々なできごとを綴った実話エッセイ。一方本作は、同じ作者がひょんなことから、更に2匹の猫を引き取るいことになっておきる出来事を、ほぼリアルタイムで綴っていく、ブログスタイルのエッセイです。
更新は、面白いことが起きた時だけの不定期で、これもまたブログのようなスタイルです。
どうぞお楽しみください。
猫の多頭飼いをしてみたい|多頭飼いは初めてだけれど、大丈夫だろうか?|経験者の体験談を読んでみたい
それは運命だったのか?
運命というものが本当にあるというのなら、この出会いはまさしくそれだったのだと思う。2019年7月18日木曜日。午前7時53分に送られた一枚の画像がぼくらを繋いだ。
その画像には一匹の子猫が映っていた。
白い三毛で、キトンブルーの目だった。
めやにはついていない。
鼻水だらけでもない。
健康そうな子猫がダンボールに入った状態でカメラを見上げている。
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二年前にぼくが拾ったねこさんとはずいぶん姿がちがう。
パッチリ開いた目がとてもかわいい。
この画像の送り主はぼくの友人であるハットリ氏だ。
忍者の末裔で、イタコレベルの霊感を持つ男。
そんな彼から突然送られてきた画像には、とある言葉が添えられていた。
『もらう?』
ぼくは目を白黒させた。
朝からなんの冗談だと思った。
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ここ二週間、むずかしい仕事の対応で心身ヘロヘロになっているぼくを元気づけようとするにしても、ずいぶんな変化球ではないか。
『は?』
『貰い手いないの?』
すかさず返事をする。
この男、やたらと子猫をぼくにおしつけたがる。
二年前にうちのねこさんを拾ったときもそうだった。
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子猫を食べてしまう母猫がいるから、どうせ一匹育てるなら一緒に二匹どうかと斡旋するような男だ。
そして最近もこう言われたばかりだ。
『お腹の大きな親猫がいるから、産んだら保護しようと思っている。
おまえ、飼えよ――』
その子だろうか。
それにしては大きい。
生後二週間くらいは経っていると思う。
ねこさんを拾ったときと同じくらいに見える。
心臓はバクバクだよ
さて、返事を待つこと二分。
ハットリから衝撃の返事が届く。
『保健所行き』
保健所?
保健所―—――!?
『ええーーー!』
と返事をしてすぐに彼に電話した。
ちょっと待て。
保健所ってなんだよ?
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ぼくの心臓がバクバクと早く打っていた。
朝から超ド級の冗談にしては笑えない。
電話をすると彼は呑気な声で「見た?」と訊いた。
「保健所ってなに? どういうこと? ちゃんと説明しろ!」
早口で問いただすぼくに、彼は笑って「貰い手がいないと保健所なんだって」と答えた。「市の職員さんが一応今は保護してくれているけど、保健所にはもう連絡してあるんだってさ。貰ってくれる人がいないか、ダンボールに入れて事務所の入り口に置いているみたいだけど、いないなら明日には保健所みたいだよ。まあ、たぶん貰ってくれる人、現れないだろうけど」
ちょっと待て、ハットリ。
明日には保健所って、おまえは何を言っているのかを理解しているのか?
命が消えるんだぞ?
生まれたまんま、しあわせだなあって思うことなくガス室に入れられちまうんだぞ!
「わかった。わかったから! 今日までは待ってくれるんだな。よし、それじゃあ今日中に引き取り手が現れなかったら、その子はぼくが引き受ける。いいか。最終手段だからな。誰もいなかったらだからな。誰かが引き取るなら、ぼくは受けないからな!」
「ああ、わかった。じゃあ、そう言っておくわ」
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こうして五分くらいの会話終了。
ハットリとの電話を切った後、ふうっとぼくは息をついた。
あの声の調子だと、ぼくが飼い主になるのは確定っぽい。
まあ、もう一匹くらいならなんとかなるか。
16歳と老犬のひなさんの腎臓の治療費がそこそこかかっている現在だが、一匹くらいならなんとかなる。
そう思っていたけれど、だ。
その日、事態はとんでもない方向へ動いていく。
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一匹ならばなんとか思っているところに衝撃の連絡が入るのは午後15時半すぎ。
『重要なお知らせがあります』
その一言にぼくはごくりと唾を飲みこんだ。
『二匹です』
ええーーーっ!
二匹!?
こうして、ぼくは二年ぶり二回目のねこさん、拾いましたを実体験する。
そして犬派で、猫初心者だったぼくが新たな試練と向き合うことになるのだ。
でも、まさか二匹もねこさんが増えることになるなんて、本当に思いもしなかったのだった。
ねこさんの今
――ねこさん、増えました・つづく――
作:紫藤 咲
▶ 作者の一言
▶ 紫藤 咲:猫の記事 ご紹介
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――次話――
『2匹です』という、ハットリ君のメッセージ――
何がと言うと、引き取る猫の頭数のこと。
よくよく見ると、受け取った写真の中には、確かにもう1匹写っているではないか。
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この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。
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犬派の僕が猫と暮らす理由
運命の日――
ぼくは猫を拾った。
犬派だった著者が、猫を拾ってからの悪戦苦闘を描くエッセイ。
猫のいない日常に、飼ったこともない猫が入り込んでくる話。
「ぼくらの物語はこの日から始まった」
猫を拾ったら読む話
『猫を拾った』をテーマにした、エッセイのセレクションです。
猫を飼うノウハウ、ハウツーをまとめた記事はネット上に沢山あるのですが、飼育経験の全くなかった方にとっては、そのような記事を読めば読むほど、「大丈夫かな?」と不安になるはずです。
猫未体験、猫初心者の方に是非読んでいただきたいです。
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