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【野良猫の生き方】お別れを言いにきたボス猫、ポリス ~猫宅のお話をしましょう(その16)~

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猫宅・44の物語 16話
今回のお話は:外猫のポリス

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撮影&文|女神
 

今日は外猫のポリスのお話です。
ポリスは以前に何度か登場しています。前話では、”彼女”を連れて猫宅に来ていた猫としてご紹介しました。

ポリスはボス猫。
――いや、今となっては元ボス猫ですね。
私にとって、とても思い出深い猫なのです。

 

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いつの頃だったか、もう定かではありません。
ある日、窓から外を見ていたら、白黒の猫が歩いていました。
その猫がポリス。我が家の周りに来た時には、もう成描だったと思います。

ちゃー達にご飯をあげていたので、きっと食べ残ったカリカリを食べるために、やってきていたのだ思います。

私はやがて、この子にもご飯を与える様になりました。
「名前をつけてあげなきゃ」
白黒だから……
そこで思い浮かんだ名前がポリスです。

「今日から君はポリス」

去勢していないポリスは、あちらこちらで喧嘩をしているのでしょう。
いつ見ても身体中怪我だらけでした。

それからポリスは、私を信頼してくれるようになりました。
私と娘が猫宅に行く時には後を付いて来て、猫宅が留守の時には、玄関先に座ってご飯をもらえるのを待つようにも。
そうそう、お天気の良い日にはベランダに上がって来て、日向ぼっこしながら寝ていることもありました。

 

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それからのポリスには、ちょっと可哀そうなことも起きました。

猫嫌いだった義父が亡くなってから、ポリスは自宅玄関の一角を寝床にするようになっていたのですが、ある時、真っ黒い雄猫が現れて、ポリスの縄張りを奪ってしまったのです。

その真っ黒い猫は身体がとても大きくて、見かけが熊のよう。
だから私は、その子を ”くま” と呼びました。下の写真がそのくまです。

くまに寝床を奪われたポリスは、猫宅のベランダに作ってあげたハウスに寝泊まりをしていました。しかしある朝、ベランダでご飯を食べたポリスは、それっきり帰って来なくなりました。

「雄だから発情期かな?」
「2〜3日……、もしかしたら1週間は帰らないかな?」
私は、そんな風に思っていました。しかしいつまでも待っても、ポリスは帰って来ませんでした。

 

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宿敵のくま
 

一か月以上経ったある日の朝でした。
ふと気づくと、猫宅のベランダにポリスが横たわっていました。
「ポリス!」
私は直ぐにご飯を用意して食べさせると、新しいハウスを作りはじめました。

あれは梅雨の時期だったと思います。
段ボールは雨に濡れるとぐちゃぐちゃになるので、回りをレジャーシートで巻いた後、ポリカ(ポリカーボネート)のトタンで屋根を作りました。ベランダに雨が溜まっても底が濡れないようにと、ブロックを置いてから、その上にハウスを置きました。

ポリスは余程疲れているのか、なかなか動こうとしません。
良く見ると、足に怪我していました。
「そうか、この怪我で帰ってこれなかったのか」
私はポリスをハウスに入れてあげると、「ゆっくりお休み」と声をかけ、部屋に戻りました。猫宅には、お世話をしてあげないといけない猫さんがたくさんいます。

そして、猫宅にはいつもの日常が訪れました。

 

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月日は流れ、何回目かの暑い夏がやって来ました。

もちろん、もうポリスの怪我は治っています。その頃くまとポリスは、鉢合わせするたびに喧嘩でした。
くまはポリスが私の後をついて歩いているところを、背後から襲ってきました。
そう――、くまは卑怯なんです。

取っ組み合いになると手のつけようがありません。
一度引き離してもくまは追いかけきて、私の目の届かないところでまた喧嘩です。
やめさせるために、バケツで水をかけたこともありました。

更に時が過ぎた、2018年の夏――

いつものようにくまが、歩いていたポリスの後ろから襲い掛かりました。くまが背中に覆い被さる様な大勢で、2匹はくるくると回転。
辺りにはポリスの白い毛が散乱しました。

ポリスはその場から立ち去りましたが、それから帰ってきませんでした。
二晩目の夜だったでしょうか?――
猫宅に行こうと外に出たら、ポリスが水を飲んでいました。
夜だったので暗くて、ポリスの様子ははっきりと見えません。しかし前足がパンパンに腫れていることだけは分かりました。

 

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次の日、ポリスは猫宅の玄関で待っていました。
そしてこれ以降、ポリスは私達が猫宅に行こうが行くまいが、ずっと猫宅の玄関先で待つようになりました。

私が自宅の玄関を開けて、くまや他の外猫さんたちのご飯を用意していると、ポリスが向こうから歩いて来るのが見えました。しかし、自宅にはくまがいるので、私は用意したご飯を持って猫宅に向かいます。

怪我している足には、プロポリスを数滴たらしてあげました。Twitterで仲良くしていただいてる方に教わった方法です。私はポリスの姿を見るたびに、プロポリスを垂らしてあげました。やがて、パンパンに腫れていた足は、地面に下ろして歩ける位に回復してきました。

これで一安心。そう思ったのもつかの間でした。
今度は食欲が落ちてきたのです。

ポリスの口からは、よだれが流れていました。
ドライフードは食べにくそうだったので、色々なウエットフードを購入してきて試すことに。

食べてはくれました。しかし、2〜3回ペロペロと舐めるだけでご馳走さまです
最初の頃は、ちゅーるは食べていたのですが、やがてそれ口にしなくなりました。

お水だけは飲んでたかな?
夏の暑いせいかな? そうだといいな――
などと、思ってもみたり

 

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――2018年8月26日――
それが、ポリスの姿を見た最後の日です。

自宅前の駐車場で、止めてある車の下で休んでいたポリス。
少しずつ少しずつ自宅に近づいて来るのですが、くまが未だ陣取っていて鉢合わせになるとまた喧嘩になりそうです。

「今は来ちゃいダメ、くまが居るから」
私の言葉はポリスの耳に届いたのでしょうか?
ポリスは玄関先にある納屋の下に身を隠しました。そこで息を潜め、くまが居なくなるのを待ったのです。

少しすると、くまは散歩に出掛けました。
くまの姿が見えなくなると、ポリスは納屋の下から出て来て、私に向かい小さな声で「にゃー」と鳴きました。
お腹が空いているのだろうと、ちゅーるを茶碗に入れて目の前に置いてあげました。しかしポリス口をつけません。

「お水がほしいのかな?」
飲みやすいように、少し高さのある茶碗に水を入れて、ポリスの口元に――

あの時ポリスはお水を飲んだのかな?
茶碗に顎を乗せ、辛そうにしていました。

その後私は用を済ませに家の中へ。
再び様子を見に外にでると、もうそこにポリスの姿ははありませんでした。
次の日も、次の日も、ポリスは来ませんでした。

あの日ポリスは、最後の力を振り絞って、私に挨拶をしに来てくれたのではないかな?今はそんな風に思っています。

最後の弱さを私に見せることなく、お星様になったポリス。

今、自宅の玄関先では、くまが寝泊まりしています。
最近は、3日4日帰って来ない日も多々あります。

男の子だから仕方がないのかな?

――ポリスへ――

もう直ぐ1年になるね。いつものように帰って来るかと待ってたよ。
あれが最後の挨拶だったの?
君によく似た子が来るよ。
もしかして・・・

● ● ●

猫宅の様子です。

作:女神
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――次話――

猫達のお世話に追われる毎日。
『この子が最後』『もう、増やさない』
と心に誓う作者ですが、この日もまた野良猫を見てしまうのでした。
そして猫宅には出会いだけでなく、別れもやってきます。

――前話――

猫宅は毎日毎日が戦争だというお話。
40匹を超える猫達のお世話――
食費もさることながら、トイレの数も半端ではない。
――いつも思うこと――
この子が最後 。もう、増やさない。

週刊Withdog&Withcat
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。

――この連載の1話目です――

44匹の猫が住む家、その名も『猫宅』
それは、保護した猫たちを住まわせるために借りた家。
猫には1匹ずつに物語がありますね。
これは最初の1匹、とらのお話。
さて、44の物語、完成するでしょうか?

 猫宅のまとめ読みです

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