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【保護|ブログ】ぼく、悩んでます ~ねこさん、増えました(6話)~【保護猫の多頭飼い】

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犬派の僕が猫の多頭飼いを始めた理由
犬派の僕が猫の多頭飼いを始めた理由

撮影&文|紫藤 咲
 
この作品は

ブログタイプのエッセイ作品で、面白いことが起きた時だけの不定期更新となります。
どうぞお楽しみください。

こんな方に:
猫の多頭飼いをしてみたい|多頭飼いは初めてだけれど、大丈夫だろうか?|経験者の体験談を読んでみたい

 動物病院へ行く

二匹を引き取った翌日の、2019年7月20日土曜日。
ぼくは獣医さんへ二匹を連れて行った。

ノミの心配もあるし、回虫もいるかもしれない。
爪も伸び放題だから切ってもらわねばならない。
回虫の検査をしてもらうため、どちらがしたかわからないけれど排泄物を持って診察を受けた。

「実は猫を保護しまして」
と、かかりつけの先生に伝える。
やってもらいたいことも併せて伝えると、すぐに先生は処置に入った。

まずはノミ。
キジトラの子の背をくしでとく。
すると、いた!
いっぱいいた!
うじゃうじゃいた!
白い毛と一緒に黒い物がくしにわんさかついている。

予感的中である。

片方にうじゃうじゃノミがいるということは、間違いなくもう片方にもいるということになる。
先生が黒い子の背に、キジトラの子と同様くしを入れる。
するとやっぱりいた!
めちゃくちゃいた!
おそろしいほどいた!
黒い毛と一緒に黒い物が同じようにわんさかついている。

 

 血液検査はしなくていいの?

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こうなることは予想していた。
子猫たちの背中の毛穴近くがざらざらとしていたからだ。
これ、絶対ノミのフンだよなあ――とわかるくらい、背中に砂が大量についているみたいな感触がしていたのだ。

体表であったなら砂とも思えるが、感触がしたのは毛根のあたり。
体を一度あらってやればきっとものすごい大量のノミとフンがお湯に浮かんできたに違いない。

ただそれをしなかったのは子猫たちの体調を考えてのことだ。
人間もそうだが、風呂は体力を必要とする。

ご飯も水も満足に摂取していなかった体に負担を強要したくなかったのだ。
そういう経緯もあってノミがいることが判明したので、すぐに駆除スプレーを塗布。
大人猫用の駆除スプレーと違って体に負担がかからないタイプのものである。
一度の塗布では完全に駆除できない。
その上、一か所ではなく全身にスプレーしなければならない。
ノミの総数を半減させるための処置をしてもらって、今度は爪切りを依頼する。

「ちょっと待っててね」

と診察室の裏に二匹は連行される。爪切りをしてもらって再び戻ってくると、爪はきれいに切れていて、腕によじ登られても痛くなくなっていた。

ぼくが望んだ処置が終わったところで先生に質問する。

「血液検査はしないんですか?」
「この大きさの子から血液をわざわざとるほうがリスクが高いと思うからやらないよ」

獣医さんで量った二匹の体重は揃って300gだった。
その子たちから検査ができるだけの血液をとるのは危険だよと先生は答えた。
彼らがなにかしら持病をもっているか否かはもう少し大きくなってからということになった。
検査をしない方針はライのときと同じだ。

ライとは違って目ヤニも鼻水もないから、うまいこと大きくなってくれればいいけれど……という一抹の不安を抱きながら質問を続ける。

「回虫はいましたか?」
「今回持ってきてくれたものの中にはいなかったよ」

回虫、今のところ問題なし。
もう一度検査の必要はあるけれど、とりあえずホッと息をつく。

 

一匹も二匹も変わらない?

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すべての体の検査を終えたとき、ぼくは先生にこう切り出した。

「あの……先生。一応保護はしたんですが、実はぼく、悩んでます。ひなさんもいますし、あのライもいますから。育てられるかどうかの自信もないんです。一匹ならよかったんですけども」

一匹ならなんとかなる。
これは自信がある。
だけど二匹となるとお世話も費用も二倍になる。

ぼくは猫素人だ。
ライを大人にできたのは奇跡に近い。
それにライに大怪我をさせてしまった過去もある。

決して『いい飼い主』ではない。
ぼくじゃない人のほうがしあわせになれるかもしれない。
そう考えるとどうにも腹を括れなかったのだ。
すると先生はあっさりとこう言った。

「一匹も二匹も変わらないけどね、猫の場合」

笑顔まで添えられる。

「二匹いれば二匹で遊んでくれるし。そんなに手間もかからないと思うよ」
「そう……ですか」

二年前にライを拾ったときにも先生は言った。
『猫は犬ほど費用もかからないよ』と。
となると、一匹飼うなら二匹いけちゃうんだろうか。

トライしてみるべきなのか。
やってみてダメならあきらめていいのか。
先生の言葉を聞いて、ぼくはますます悩んでしまう。

診察室を出て会計を待つ。

「保護されたということで、今日は1800円になります」

先生が配慮して処置料を安くしてくれる。
五千円くらいかかる覚悟でいたぼくは「すみません。ありがとうございます」と格安だったことに感謝と申し訳なさを抱いてお支払いを済ませることになった。

一匹も二匹も変わらない。
二匹を引き離すこともかわいそう。
なによりかわいい。

――やっぱりうちの子にするべきかなあ。

ダンボールの中で『出してー!』と元気に鳴く二匹を見る。
つぶらな二つの目×二匹分がぼくをじっと見上げている。

――選べないもんなあ。

どちらかを残すなんてぼくにはできない。
だけどどうしても決断できない。

――いっそ神様に委ねてみるか。

自分では決められない。
でも神様がぼくに『飼いなさいよ。それ、私があなたに遣わした命なんだから。責任持ちなさいよ』と言うのなら仕方ない。

この日の夕方。
ぼくはある賭けに出る。
もしもそれが達成されるような事態になったらば二匹を自分の子にしよう。

迷いに迷った背中を誰かが押してくれるならば――

そんな願いを込めて。

 

 今のねこさんの様子は?

 

 

――ねこさん、増えました・つづく――

作:紫藤 咲
 ▶ 作者の一言
 ▶ 紫藤 咲:猫の記事 ご紹介

――次話――

ねこさんを引き取るかどうか――、神様に委ねたぼく。
なぜならその頃のぼくには、神様のご褒美みたいな奇跡が幾つも起きていた。
ぼくは一つの願掛けをした。
願いが叶えば、ねこさんは二匹とも引き取ろう。
そう思った。

――前話――

はじめて保護猫二匹と対面したたぼく。
「めっちゃかわいい!」
思わず声が漏れた。
二匹とも活発に、鳴き暴れる。二年前のライの時とは全然違う。
嬉しさの反面で、心配事が頭をもたげる。
ライは二匹を受け入れてくれるだろうか?

週刊Withdog&Withcat
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。

――本作の第1話目です――

運命ってあるのだろうか?
だとしたら、今回がきっとそうだろう。
きっかけは、1枚の画像――、子猫が写っていた。
『もらう?』友人のハットリ君が訊いてきた。

犬派の僕が猫と暮らす理由

運命の日――
ぼくは猫を拾った。

犬派だった著者が、猫を拾ってからの悪戦苦闘を描くエッセイ。
猫のいない日常に、飼ったこともない猫が入り込んでくる話。
「ぼくらの物語はこの日から始まった」

猫を拾ったら読む話

『猫を拾った』をテーマにした、エッセイのセレクションです。
猫を飼うノウハウ、ハウツーをまとめた記事はネット上に沢山あるのですが、飼育経験の全くなかった方にとっては、そのような記事を読めば読むほど、「大丈夫かな?」と不安になるはずです。
猫未体験、猫初心者の方に是非読んでいただきたいです。

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