猫の話をしようか

Withcat 猫と飼い主の絆について

【保護猫|多頭飼い】血栓寒栓症・キングの闘病 ~猫宅のお話をしましょう(その19)~

猫宅・44の物語 19話
今回のお話は:キングの闘病

猫宅_キングの闘病

撮影&文|女神

 キングの異変

――2019年6月11日――

この日の夜、私たち親子はいつものように猫宅に着くと、すぐにご飯の用意をして ”女子~ず” の部屋に入りました。

ふと見ると、キングの様子が変です。
前右足を持ち上げて、ぶらぶらさせているのです。

咄嗟にキングを群れから離し、手を掴んで様子を見ました。
しかし何処も怪我をしている様子もなく、骨折している訳でもありません。時計を見るともう22時半。動物病院の診療時間はとうに過ぎています。

「明日の朝、一番で病院に連れて行く」
そう娘に約束し、その夜は様子を見ることに……

まさかそれが、大病に繋がっているなんて、その時には夢にも思いませんでした。

 

――夜が明けて12日の朝――

私は病院が開くのを待って、キングをキャリーケースに入れ、すぐ車を走らせました。

最初私は、爪の中に菌でも入って痛くて足を下せないのだろう――と、簡単な診断結果を予想していました。しかし、事はそう簡単ではありませんでした。先生がキングの肉球を見るなり私に告げた病名は、【心筋症、血栓寒栓症】と言う、聞いた事もないような病名です。

「シンキンショウウ……」
「ケッセンセンソクショウウ……」

キングに小さな錠剤のお薬を半分飲ませた後で、先生はこう仰いました。
「この病気は進行を遅らす事はできても、完治する事はないです」
私はその言葉を聞いて、震え上がりました
「どれ位生きられますか?」
すぐに先生に訊き返しましたが、先生は無言で、ただ難しい顔をするだけでした。

診察を終えて、キャリーケースにキングを入れた時でした。
キングがキャリーの中で暴れました。
その時先生は、「今にも……」と、厳しい現実を私に告げました。

この瞬間から、私とキングの闘病生活が始まったのでした。

――その日の夜――

私が猫宅で、皆のご飯の用意をしている最中のことでした。
早速、その血栓寒栓症という病気が、キングの体の中で暴れ始めました。
キングがこれまで聞いた事も無いような声で鳴きながら、キャットタワーによじ登り、一番上のスペースでぐるぐるともがき苦しみだしたのです。

血栓が詰まったんだ!
しかし私はなす術もなく、「キング キング」と名前を呼ぶ事しかできませんでした。
私は、しばらくして静かになったキングを、タワーから下してベッドに寝かしつけました。

次の日の朝から、投薬の始まりです。

キングは痛さでご飯を口にせず、大好きなちゅーるも食べてくれません。やむなく私は、キングの口を無理やり開けてお薬を入れました。

1日1回のこの行為が、私にとってどれほど苦痛だったか――
だけどお薬を飲ませないと、血栓が詰まり死に至る。私は毎日泣きながら、キングに「お口を開けて」と言いながら、お薬を飲ませました。

何日か経ったある日、私はもう一度キングにちゅーるを上げてみました。
チューブからお皿に移し替えて、そろそろとキングの口元に差し出して――
するとキングは、美味しそうにチュールを食べ始めました。

「よし!」
これでちゅーるに薬を混ぜて飲ませる事ができます。
私はほっと息をつきました。

その日を境にして、キングには少しづつ少しづつ、食欲が戻ってきました。

その食欲を追いかけるように、快方に向かっていくキング。
キングは発病以来ずっと横になっていましたが、やがてゆっくりと歩くことができるようになりました。そして間もなくして、トイレに入って行く姿を見られるまでに。

キングが皆と同じ物を食べてくれるようになるのにも、それほど時間は掛かりませんでした。

順調に良くなっていると思われたキングーー
しかしそんなある日、私はキングの足から血が出ているのを見つけました。

直ぐ病院に連れて行き、お薬を処方してもらってキングのお薬は2通りに。
だけど一向に怪我はよくならずまた病院へ――

弱っているキングをキャリーに入れて、車に乗せて行く事が可哀そうに思えました。
出来ればそっとしておいてやりたいというのが本音です。しかし悪化していくキングの足の傷は、放置できないと思いました。

この時キングは、抗生物質の注射を打っていただきました。

注射の力ってすごいですね。少し前まで、血栓が詰まって歩けなかったキングが、なんと自分の足でヨロヨロと歩くようになり、そして次第に肉球を地面につけて、しっかりと歩けるまでに快復して来たのです。

やがて少しくらいの段差ならば、乗り越えられるようになりました。

キングは日に日に、高い所に飛び乗る事ができるようになりました。
そしてそれからのキングは、私に次々と奇跡を見せてくれました。

やがて私は、もっとビックリすることに・・・

キャットタワーに上ったり、高い所から飛び降りたりと、健康な時と変わらない姿のキングが目の前にいました。治らなければ足が無くなるかもと言われ、祈り続けた日々が嘘のようでした。

 

平穏を取り戻したかのような毎日――

でもそれは、かりそめの姿でしかなく、決して血栓寒栓症が治った訳ではありません。ただ、進行が遅れているだけのことなのです。

キングの起こす奇跡を喜びながらも、現実に引き戻されることの繰り返し――
私たちは、1日1日を大切にキングのペースで過ごしていきました。

私は何度もネットで、キングの病気について調べました。
治った症例はないものだろうかと――
しかし幾ら調べても、発症してからの余命-4か月と言う数字が、宿命のように頭から離れることはありませんでした。

やがて私は、同じような病気の子を看取ったという、飼い主さんのお話にも耳を傾けるようにもなっていきました。

――発病から3ヶ月が過ぎた頃――

キングの様子が変わり始めました。食欲が落ちてきて、少し歩くだけで疲れたように寝転ぶのです。ただ息をするだけでも、苦しそうに見えました。

私はお別れの日が近い事を感じ始めました。

できるだけキングの好きな様に、嫌がる事はしないで喜ぶ事をしてあげよう。
マッサージをしたり、大好きなちゅーるを沢山あげたり・・・

 

――2019年9月15日――

その日は朝からキングは調子が悪く、お薬入りのちゅーるを、全く口にしてくれませんでした。私は何としても薬だけは飲ませななければと思い、嫌がるキングの口を開けて飲ませました。

それから私は数回、キングの様子を見に猫宅へ――

キングはいつもなら三角テントか、窓際の毛布の上で寝ているのですが、その日はフロアの上で寝ていました。そんな時いつもならば私は、そっと抱き抱えてベッドに移動させるのですが、この時は触らない方がいいんだと思って、声をかけることもせずに、ただただ様子を見るだけで猫宅を後にしました。

因みに、三角テントというのは、ペット用のクッション型のマットの上に、キャンプで使うテントのような、三角形の屋根が付いたものです。誰かが寝てくれればいいかな程度に思って購入した物でしたが、具合が悪くなってからのキングは、よくその三角テントの中で寝ていました。

屋根の上には他のニャンコが上る事が出来ないので、多分、誰にも邪魔をされない安全な寝床だと思っていたのではないでしょうか?

――その日の夜のこと――

キングは私たち親子が会いに行くまで、待っていてくれていました。

キングが急変したのは、私たちが猫宅に着いて30分も絶たない頃です。
口を開けて息をし始め、立っている事も出来なくなり――

私は直ぐに、キッチンで猫たちのご飯を用意している娘を呼び、キングに声をかけました。

私たちの見守る目の前で、キングの体は痙攣を起こし始めました。
「キング キング」と名を呼んぶ私と娘。
その時、女子ーずの部屋の皆が、一斉にキングの方を見ていました。あの子達なりにキングの最後を感じ取ったのだと思います。

そしてキングは、手足を真っすぐに伸ばして、最後に大きな息を一つと、「ニャー」と言う声を残して息を引き取りました。

最後の最後にキングは、孝行をしてこの世を去りました。
次の日――、キングを見送る日は、娘がお休みの日だったのです。

私たちは二人でお寺に連れて行き、最後にキングにお別れを言う事が出来ました。

――キングへ――
沢山の思い出をありがとう。そして沢山のフォロワーさんを繋げてくれてありがとう。今でもあなたが、三角テントにいる気がします。

Withcatは猫宅の主催者、女神さんを応援しています。
アマゾンの欲しいものリストから、猫宅にフードやシートを贈れますよ。
※送り先は、『猫の秘密基地』をご指定下さい。 
猫宅

作:女神
 ▶女神:全作品のご案内
  

――次話――

記事の編集中です。

――前話――

44の物語、今回はいちごとの別れ。
いちごが体調を崩した様子は、母猫のムーやその母の彼女に似ていました。
腎不全かも――
ならば嫌がることはやめよう。そう決めたとき、抱っこが嫌いないちごが抱かせてくれました。
まるで、彼女とムーの最期のときのように。

週刊Withdog&Withcat
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。

――この連載の1話目です――

44匹の猫が住む家、その名も『猫宅』
それは、保護した猫たちを住まわせるために借りた家。
猫には1匹ずつに物語がありますね。
これは最初の1匹、とらのお話。
さて、44の物語、完成するでしょうか?

 猫宅のまとめ読みです

『猫宅』のまとめよみ|その2

まとめ読み最初の第6話では、まだ猫は6匹。
多いけれども、まだあり得るお話。
それが第10話になると、なんと一気に21匹に。

もう”多い”では済まない数――
1匹1匹に物語がある、猫の大河ドラマ。
今も、現在進行形で続いています。

 猫のおすすめ記事です

21歳と6か月で天国に行ったボス。
そのボスが家に来る時のお話。
猫アレルギーだったかあちゃんは、それからずっとボスと家族でした。
昔のことって覚えている?
自分のことは忘れたけど、うちの子が来た時のことだけは覚えているよ。

21歳と6か月生きた猫、ボスを亡くしたかあちゃん。
さみしい、さみしい、さみしい……
ついボスを探してしまう、毎日
そんな時、ボスが夢の中に出て来て言ったのでした。
『俺幸せだった次の子迎えて』

 

© 2017 Peachy All rights reserved.