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【野良猫の生き方】一見乱暴者、くまの生き様 ~猫宅のお話をしましょう(その20)~

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猫宅・44の物語 20話
今回のお話は:外猫のくま

猫宅_くま

撮影&文|女神
 

いつ頃からだろう? 
ある日買い物から帰ると、いつもポリスが寝ていた我が家の玄関先に、真っ黒い猫が寝ていました。その猫はよく見かける子で、いかにも乱暴者そうで熊に似ているその容姿から、私は「くま」と名前を付けていました。

ポリスというのは元々、我が家周辺を縄張りにしていたボス猫で、いつの間にか猫宅にご飯をもらいに来るようになっていました。私とは数年来の付き合いです。そしてくまは、ある日ふらりと現れて、ポリスと玄関先を争うようになった猫です。

くまは毛艶からして、ポリスよりも若かったように思います。

 

くまはポリスを相当に意識しており、ポリスの姿を見つけると一目散に駆け寄って、喧嘩を挑みました。ポリスも自分の縄張りを取られてはならぬと、売られた喧嘩は受けて立つみたいな所があって、二匹は顔を合わせる度に、取っ組み合いになったものです。

その喧嘩は激しくて、取っ組み合いをしながらぐるぐる転げまわり、時には周囲に毛が散乱したこともありました。

くまは勝つためには手段を選ばないところがあり、卑怯な不意打ちもしょっちゅうでした。

例えば、猫宅に向かう私とポリスの後をつけて来て、ポリスの背後から襲い掛かるようなことも一度や二度ではありません。これも縄張りを死守する為の、猫の習性なんでしょうね。

とにかく2匹の喧嘩は、始まったら手の付けようがなくて、真夏の暑い日などは、バケツで水をぶっかけたほどです。

 

そのくまが、冒頭に書いたように、我が家の玄関先で寝るようになったのです。
――それは即ちボス猫の座が、ポリスからくまに移ったことを意味していました。

ポリスとくまをずっと観察していると、どうやらボス猫ごとに個性があって、縄張りを統治する方針にも違いがあるように見えました。

ポリスがボス猫だったときには、家の周りには外猫さんが沢山いて、皆が共存共栄で平和に過ごしているような感じでした。しかしくまがボス猫になってからは、外猫はすっかり少なくなって、家の周囲は静かになりました。

恐らくくまは、ポリス以上に睨みを効かせて、テリトリーに入って来るオス猫を、全て追い出していたのだと思います。

それが分かるエピソードがあります。

話はポリスに戻ります。
くまに寝床を奪われたポリスがどうしていたか?

居場所をくまに奪われたポリスを、可愛そうに思った私は、猫宅のベランダに段ボールとポリカのトタン屋根でハウスを作って、ポリスがゆっくりとできる場所にしてあげていました。

しかし、その場所でさえくまは、邪魔をしに来ていました。
ボス猫というのは、そこまで徹底してライバルを追い詰めるものなのか?――
もしかするとそれはボス猫というよりも、くまの特性と言うか、執念深さなのかもしれません。

 

私はそんな時、くまに「ここはお前の来る場所じゃないよ。ちゃんと家を与えたのだから、そちらにお帰り」と言い聞かせていました。

くまは私の言葉を理解してくれたように思います。
私が話しかけると、くまはベランダから下りて、玄関先で私が出てくるのを待っているのです。そして私が「くま、帰るよ」と言うと、私の先を歩いて自宅まで先導するのです。そして玄関の前で1度振り返り、私が居るのを確認すると自分の寝場所へと移動します。

因みにポリスのその後ですが、2018年の夏の暑い日にくまと喧嘩をし、深手を負ってしまいました。傷を負った状態で猫宅に現れたので、私はくまに気付かれないように手当てをしてあげました。

しかし、ポリスが十分に回復することはありませんでした。
その夏の終わりに、ポリスは私の前に現れて、小さな声で「にゃー」と鳴きました。
それがポリスの姿を見た最後でした。

野良猫には野良猫なりの社会がある。
そしてその中で生きるボス猫には、他の野良たちとはちがう、ボス猫としての厳しい生存競争がある。

そんなことを感じさせる、くまとポリスでした。

 

こんな風に書くと、くまがさぞかし気性の荒い乱暴者と思われるかもしれませんね。
しかし私に接する時のくまは、全然違っていました。

恐らくくまは元々、何処かで飼われていた猫なんだと思います。
私にはとても甘え上手で、大人しい子なのです。見た目が怖そうなので警戒してしまうのですが、私には何をされてもされるがままでした。

お腹が空くと、ご飯をねだる様に足元に来てすりすり。そしてそんなくまの頭をなでてあげると、ごろんと転がりお腹を見せては「触って」みたいな顔をします。

玄関先で寝るようになってからのくまは、私以外の人間にも甘えるようになりました。来客の中には、いつもくまに声をかけてくれる方がいるのですが、そんな方がいらっしゃったときには、わざわざ寝床から出て来てご挨拶。頭をなでてもらったり、時には私にするように、お腹を見せたり足元をスリスリしたりもします。

先日は宅配のお兄ちゃんにまで愛想をして、可愛い可愛いをしてもらっていました。

改めて考えると、甘えん坊の元飼い猫が、場を与えられれば容赦のないボス猫争いを繰り広げるのですから、猫と言うのは、また猫の社会と言うのは、不可解で面白いものだと思います。

 

さて最後に、最近のくまのお話です。

くまはお腹が満たされ天気の良い日は、パトロールに出かけます。朝出ると夜まで帰って来ない時も多々あります。だけどどこへ行き何をしてるのかはわかりません。

そんな時はくまの体を調べて「怪我してない?」と訊きます。するとくまは「にゃ~」と一言鳴いてゴロンとします。

くまは発情期になると、帰って来ない日が続きます。
自分の縄張りを巡回してメス猫との恋を探しているのか?
それとも別の猫の縄張りまで遠征して、メス猫を争う喧嘩でもしているのでしょうか?

そういえば一度は、2〜3日帰って来ない日が続いたと思ったら、歩くのもやっとの状態で戻って来たことがありました。怪我でもしてるのかと思って確認してみても傷口などはなく、多分猫風邪でももらって、熱でふらふらの状態で家にたどり着いたのだと思われました。

このときには、病院に電話をかけて薬を処方していただき、事なきを得ました。

体が真っ黒なくまは夜は姿を認識するのが難しいので、万が一何かあっても見つけてあげることができません。だからいつもくまに言い聞かせてます。
「遊びに行っても良いから、夜は帰ってきて家で寝るのよ」って。
くまは私の気持ちを、分かってくれているでしょうか?

今、私が思っていること――
今は強いくまだって、いつまでも若いわけではありません。

くまの寝床は、宿敵のポリスと争って、やっと勝ち取った縄張です。
どうかそこで、このまま何事もなく、静かに暮らしてくれたらいいなと思う今日この頃なのです

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猫宅

作:女神
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――次話――

今回は外猫3匹のお話。
猫宅の外側には、外猫たちの社会もあります。
突然現れた”キジ”も、その後にやってきた”しろっくろ”も、ボス猫の”くま”も、元は飼われていた猫でした。
縁あって猫宅の周りに住む子たち。
仲良くやって欲しいものです。

――前話――

ある日、キングが前足をぶらぶらさせていました。
爪の感染症かな?
しかし、病院で告げられた病名は――
『心筋症、血栓栓塞症』
余命は「今にも」と……
震えあがる作者。
それが闘病生活の始まりでした。

週刊Withdog&Withcat
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。

――この連載の1話目です――

44匹の猫が住む家、その名も『猫宅』
それは、保護した猫たちを住まわせるために借りた家。
猫には1匹ずつに物語がありますね。
これは最初の1匹、とらのお話。
さて、44の物語、完成するでしょうか?

 猫宅のまとめ読みです

『猫宅』のまとめよみ|その2

まとめ読み最初の第6話では、まだ猫は6匹。
多いけれども、まだあり得るお話。
それが第10話になると、なんと一気に21匹に。

もう”多い”では済まない数――
1匹1匹に物語がある、猫の大河ドラマ。
今も、現在進行形で続いています。

 猫のおすすめ記事です

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