猫の話をしようか

なかなか聞けない猫の話。こっそりおしえる猫の話。

口ずさんだ歌、猫が好きだった歌 ~銀の鈴/虹の橋の猫(第4話)~

f:id:masami_takasu:20171124192522p:plainイラスト&文:水玉猫

その人は、窓の方に振り返りました。

窓から、死んだ猫が、のぞいているような気がしたのです。

雉白もようの猫が虹の橋に旅立ってから、もう、どれくらいの月日が過ぎたのでしょう。今でも、家のどこからか、ひょっこり、猫が出てくる気がしてなりませんでした。

でも、猫は、もう、どこにもいなくて、思い出すたびに悲しくてたまらなくなるのでした。
その悲しみは、みぞおちで硬く凝り固まって、ずしんずしんと重くなっていくのです。
それが、余計に悲しみをつらくするのでした。

枯れ果てたと思っていた涙が、また、あふれ出してきました。体中の水分が全て涙になって流れだしたと思っていたのに、それでもまだ涙は尽きることなくあふれ出してくるのです。

涙の中で、知らず知らず、その人は、猫が好きだった歌を口ずさんでいました。
猫はその歌が大好きで、生きていた時は尻尾で拍子を取りながら、いっしょにミーミーと歌ったものでした。

この歌を口ずさむのも、本当に、どれだけぶりでしょう。

猫が旅立ってから、ずっと口ずさんだりはしませんでした。
だって、思い出すたびに、胸がつぶれそうになって、とても歌うことなど、できなかったからです。

それなのに、今日に限って、自然に、歌が口をついて出てきたのです。

ふと、歌に合わせて鳴く猫の声が、窓の外で聞こえた気がしました。

どうせ、またいつもの空耳で、窓の外を見たって猫はいなくて、更につらくなるだけだと、その人は思いました。

なくしたものは、二度と戻らない。
なくしたものとは、もう、二度と出会えない。

その人は窓に背を向けたまま、幾度となく自分に言い聞かせたことを、また繰り返していました。

――銀の鈴/虹の橋の猫(第4話)・つづく――

作:水玉猫

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