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【銭湯と猫】善いお風呂のお話をしましょうか ~私の空、マナ!|二人の出会いは突然に(9/10)~

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私の空、マナ!f:id:masami_takasu:20190212090506j:plain撮影&文:あおい空

第1話でお話ししたことですが、私は生まれて初めての一人暮らしを始めて、ボンビー生活に突入しました。

ボンビー突入の前に、私の身の回りにあったものは、例えば50インチのTV、フランスベッド、ナツメ球がフワーの傘に入っていて、手元スイッチで明るくも暗くもなる照明、トイレはウオッシュレット、流し台は何日分も食べたお皿を置いておける程の広さ、ケーキが焼けるオーブンレンジ、寝れるくらいのリビングのソファー、バリアフリー仕様の広い扉、軽四だけどバリバリの新車、雨や雪が苦にならない車庫…等々。

これは決して自慢ではありません。だって今はそれが皆無なのですから。
でもね、世の中には物がある豊かさよりも、ずっと大切なものがります。
自活を始めてから、当たり前のことが当たり前ではなくなって、それで気づいた事がたくさんあるのです。

そんな中でも、私が大切に思っているのがお風呂!
そう、今日はお風呂の話をしたいです。

え、今日はネコのお話しじゃないのかって?

心配しないでください。ちゃんと猫の話ですよ。
――ちょっとだけですけどね。
まあでも、最後までお付き合いお願いします。
このお話は、マナを拾ったあの日、9月8日に時計の針が戻ります。

私がいつも使う『感謝すべきオンボロアパート』という言葉は、それまでの豊かな生活を決して善い(敢えて「良い」と書かずに「善い」と書きます)と思っていないことの表れでもあります。

ボンビーだから何でも工夫して暮らす楽しさは格別です。
これは、このお話しの終わりに触れる、私の大好きな物語と共通しています。

話を進めていきますね。お風呂です。
お・ふ・ろ!

「ラリラリラ~ン♪ お風呂が沸きました」でお知らせ、あとは自動で42度に保たれ、浴槽は仰向けで寝転んでゆったり。
――というのが、以前の暮らし。

そ・そ・それが~

アパートのユニットバスが小さいことは、既にお話ししましたね。
それがまた本当に小さいのです。そして寒いのですよ。

給湯器の設定を42度に上げてお湯を入れても、浸かる頃には冷めています。しかも肩まで浸かろうと思っても、脚を曲げようが何をしようが全く無理です。

夏場はいいのですが、我が家の辺りは寒い地方です。だから、寒いー!と震えながら体を洗う始末です。そしてお湯を出してから暫くは茶色いお湯が出ます。
さすが築40年です。

でも、それが嫌だと言っているわけではありません。
貸し主さんも管理する不動産屋さんも誠意がありますからね。1年前は外壁とベランダの床とボロボロだった柵も新しくされました。だから”オンボロ”の前に”感謝すべき”が付くのであります。

安い家賃では補修代金も出ないはずですよね。それなのに、住人を気遣ってくれて、住まわせてくれて、ありがとうございます…なのです。

そしてやがてマナにとっても、このユニットバスが大活躍する時がやってきます。
それはまた、別のお話しとして書かせていただきます。

話を戻します。車を手放す前は車でスーパー銭湯へ行っていました。
だから車を手離したときには、先ずお風呂が大問題でした。

ここからが、今日のお話の核心です。
”高下駄”とあだ名で呼んでいる、私にとってたった一人の兄と電話で話した時のことです。「アパートの近くに銭湯あるぞ」と、その兄が教えてくれました。

早速調べてみると――
な・な・なんと! 兄が言うとおりでした。
大通りから道を1本入ったところにあるため、気がつきませんでした。
歩いても10分かからず、自転車で行けば5分程度です。
――で、早速その場に行ってみました。

銭湯の前に立った時の最初の感想は――
まずは愕然としました。スーパー銭湯で、駐車場が下にある立派な外見も立派な外見を見慣れていたからです。
「なに~!千と千尋の神隠しの世界?」
というのが初めての印象でした。

ところが、そこに入ってみた私は、1度で大好きになってしまいました。
源泉かけ流しで、小さいけれど露天風呂もあり、とにかくお湯がいいのです。むわっとした銭湯に弱い私が、長い時間いても平気でした。
それから私は、この千と千尋のような銭湯にお世話になることになります。
マナと出会うのは、初めてその銭湯に行った約半年後です。

これが、そのお風呂
銭湯1

銭湯2

銭湯13

銭湯4

銭湯5
善いでしょ?

この銭湯のお客さんは、年配の方々が殆どで、毎日のように入りにいらっしゃっています。この方たちと私は、急速に接近していきました。

実は私には、ちょっと変わった才能(?)があります。話しているうちに、そのおばあちゃんたちが、まるで若い時のような姿で見えてきてしまうのです。そのために、まるで学校時代の同級生と楽しく話しているようでした。
そんな私を不思議な目で見る人達もいますが、私は気にしません。

話して親しくなると、必ず下の名前を聞きます。だって友達なのですからね。

いつも同じ時間に一緒になる、キヨちゃんとミッちゃんに会うと、もう楽しくて仕方ありませんでした。銭湯の奥さまと旦那さまも優しい人です。だからそこにいくと、まるで我が家に帰ったような気持ちになります。

そのキヨちゃんのお話しをしましょう。

私はアパートでは、布団を敷いて寝ていますが、その布団の裏が湿気が上がるらしくて、毎朝干していたにも関わらず、カビが生えてしまいました。
キヨちゃんは驚いて「そんなことしとったら病気になるよ」と言うなり、「スノコ買って来なさい。スノコだよ、ス・ノ・コ!」とアドバイスをくれました。キヨちゃんは口が悪いけれど、とても優しいのです。

私はスノコを買ってくると、その上に布団を敷きました。すると布団が濡れなくなりました。

キヨちゃんにその事を話すと、すごく喜んでくれました。

 

f:id:masami_takasu:20190212110352j:plain

そしてここで、いよいよマナの話です。

私はマナを拾って数日後に、銭湯で会ったキヨちゃんに「早くかえらなくちゃ、子ネコ拾ったんです」と話しました。するとキヨちゃんが言いました。
「もしかしてあんたのアパートの所で鳴いていたネコかい?」と。
「そうだけど、何で知ってるの?」
呆気にとられている私に、キヨちゃんは「ずっと雨降ってるし、あのネコの声といえば、すごい声で鳴いとった」と言いました。まさかキヨちゃんが雨の中3日3晩鳴いていたマナの声を聞いていたとは思いませんでした。

更にキヨちゃんは「あんた、飼ったのかい?いいことしたねえ、きっと良いことあるよ」と言ってくれました。それを聞いた風呂友さんたちは、口々に「鳴いていても、なかなか飼えるもんじゃない、優しいね」と、みんなで私を褒めたり励ましてくれたのです。

スノコの時にも思ったのですが、歳を重ねると、人は経験と知恵が身につくものなんですね。そして優しくなるんですよ。キヨちゃんたちは、それを身を持って示してくれました。

今はあまり銭湯にも行けなくなってしまいました。マナの成長と共にです。
マナは小さい頃は自己主張する子でなくて、私の方から「マナが待ってる、1分でも早く帰らなくちゃ」と、マナのことを思っていたのです。
しかし、成長したマナは違います。
『1分でも長く同居人といたいの』と主張する子になってしまったのです。
マナからガンガンにその気持ちを感じる同居人。
この先どーなる? この関係! です。

余談ですが――

銭湯でマナの話しになると、今も必ずキヨちゃんが言う言葉があります。
「名前なんだった?」
「マナです」
「マナ? 花子にしなさい、は・な・こ!」
私は「そうだね、はなこだね」と答えます。そしてキヨちゃんは言います。
「スノコ買いなさい、ス・ノ・コ!」
私はそんなやりとりを思い出すたびに、キヨちゃんに感謝しています。
ちょっと笑いながら。

最後に、冒頭に書いた私の好きなお話のことを――

私はジブリ映画が好きです。
一番目に赤毛のアンが好きで、その次にジブリ映画が好き。

魔女の宅急便の原作者である角野栄子さんが、ある記事のインタビューで話されていたことに共感を覚えました。こんな内容でした。

「使える魔法が“空を飛べる”こと一つであれば、飛べなくなることもあるだろうし、ほうきの柄が折れれば工夫して直したり、想像力を働かせて自分なりの解決法を見つけていかないといけない。そんなキキを周りの人も助けようとするので交流が生まれるでしょう」

その記事に1番近いインタビューをあげておきます。

もう一つ。角野栄子さんインタビューを声で。

「ブラジルでは、言葉がわからないので何とか伝えようとすると、相手も何とかわかろうとしてくれる。そこで人とのつながりができる。強いというかあたたかいというものになる」

youtu.be

お時間のある方はどうぞ。
(因みに私はメモをとりながら何度も聞いたことを思い出します)←記者か😠💨

ということで、まとめ――
ボンビー生活で工夫を知り・さみしさと孤独を知り・人のあたたかさを知る。

そして神さまからマナという贈り物をもらった私。
それを「善い」と言わずにいられましょうか。
――マナ神様からの贈り物。

 

――二人の出会いは突然に(9/10)つづく――

作:あおい空
 ▶あおい空:記事のご紹介
構成:高栖匡躬、樫村慧

――次話――

――前話――

まとめ読み|私の空、マナ ②-二人の出会いは突然に(2/2)
この記事は、下記のまとめ読みでもご覧になれます。

週刊Withdog&Withcat
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。

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