撮影&文:三毛ランジェロの保護猫日記
前話からの続きです。
クララは、最初はとても人を警戒していたのですが、元々人からの暴力を振るわれたことが無かったのでしょう。我が家にきてから、すぐにゴロゴロ懐いてくれました。
それに比べて茶太郎は、異常なほど人の手を怖がりました。
特に人の手が動くたびに、頭をすくめで固まってしまう姿は、見ていてとても悲しいものでした。よほど怖くて痛い思いをしたのではないかと、動物病院の先生もおっしゃっていたほどです。
私と家族は茶太朗に対し、人と人の手が怖いものではなく、優しいものであることを理解してもらうために、根気強く接し続けました。
クララと茶太郎が、我が家での生活にも慣れてきた頃、うちの家族の思いつきで、茶太郎はバッハと改名しました。茶太郎にはバッハのような貫禄があったのと、その動きがメヌエットの音楽に合うと思ったからだそうです。
バッハはとても臆病でしたが、餌も良く食べ、良く遊び、クララの可愛いお兄ちゃんと言う感じでした。そしてそれからすぐに吉報が舞い込みました。
バッハが自分から心を開くまでゆっくり待ちたいという、理解のあるご家族に見初められたのです。バッハは、その家の家族になることが決まりました。
それはとても嬉しいことなのですが、私はクララのことが気になりました。いつも一緒だったバッハがいなくなって、大丈夫だろうかと心配したのです。
やがて、バッハとのお別れの日がやってきました。
ずっとクララに寄り添い、仲良しだったバッハは新しい家族のもとへ。
そしてクララは、また一匹だけになってしまいました。
クララは一体どうなるのだろう?
私も家族も心配しながら、クララを見守りました。
しかし――
人間の温かみに触れたクララには、もう心配はなかったようです。それからのクララは、人間にベッタリの甘えん坊になってしまったのです。
私たちの色んな心配事をよそに、我が家に慣れてくれたクララ。
そんなクララにも、とうとうお別れの日がやってきます。
クララはしばらくして、避妊手術を受けたのですが、それが終わってほどなくして、新しい飼い主さんへの正式譲渡が決まったのです。
可愛すぎて、いっそうちの子にと私も家族も、何度も誘惑に負けそうになりました。
しかしクララは、神様が結んでいた赤い糸をちゃんと手繰り寄せて、とても優しいパパとママと新しいスタートをさせることになったのです。
「クララでないとダメだ」
そう言って、遠い所から迎えにきてくれたご夫婦
ご主人は海外の方です。
ご夫妻は、ご主人のお国のお茶やお菓子をお待ち下さり、クララにかかった医療費まで負担をして下さいました。
怖がりなクララは、いつもは知らない人が来ると、サッとカーテンの裏や段ボール箱に隠れてしまいます。しかしどうしたことか、この日は逃げだす素振りも見せません。そればかりか、しばらくしたら、大人しくご夫婦にだっこされてしまいました。
これには、私も家族もびっくりです。
クララはちゃんと、本当の自分の家族がわかったんですね。
足の先っぽがないクララ。
だけどそれ以上に、たくさんの魅力を持っているクララ。
今までにはツライこともあったけれど、もうこれからは、優しいご夫婦の愛情に包まれて幸せになることでしょう。
天使のようなクララを、今でもたまに思い出します。
~クララのその後については、新しい飼い主さんからお便りをいただいています。それはまた改めまして~
――おしまい――
文:三毛ランジェロ
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――以下は、前編です――
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この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。
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