虹の橋の猫 ―愛と絆と永遠の物語―
不意に、心の中で何かが煌めいたような気がして、その人は歌うのをやめました。
それまで口ずさんでいたのは、今はもういない、雉白もようの猫が好きだった歌でした。
たった今――
生きていた時と同じように、猫が上機嫌で歌に合わせて鳴いているように感じたのです。窓の外で――
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――気のせい?
その人は窓に背を向け、首を横に降りました。
――気のせいに決まっている
どうせ、またいつもの空耳で、窓の外を見たって猫はいなくて、また、つらくなるだけだと、その人は思いました。
なくしたものはものは、二度と戻らない。
なくしたものとは、もう、二度と出会えない。
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その人は幾度となく自分に言い聞かせたことを、また繰り返しました。
でも、それでも、やっぱり、窓を開けて確かめずには入られませんでした。
その人が、窓を開けると、空には美しい虹が架かっていました。
そして、確かに、耳の奥で、猫が歌っているのです。
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その人は、猫がたった今、長い長い船旅を終え、無事に虹の橋に着いたことを悟りました。
そして、自分の心と、遠く旅立って行った猫の心に、今、虹の架け橋が架かったことも――
涙の雨で、心と心に架かったこの虹を渡れば、きっと、いつかは愛する猫に会いに行くこともできるのだ。
その人は、そう信じました。
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胸の中で固まった重い悲しみは消えはしませんでしたが、涙の雨で磨かれて、気がつけばそれは、虹色にきらめく水晶となっていました。
そして、その水晶の中には、いつだって愛してやまない猫の姿が映っていました。
その人の目から、また新しい涙が止めようもなくあふれ出しました。
――銀の鈴/虹の橋の猫(第6話)・つづく――
作:水玉猫
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――次話――
――前話――
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この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。
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――この物語の第1話です――
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保護猫のお話です
家族の引っ越しで置き去りにされたクララは、野良猫の茶太郎と出会います。
やがて一緒に保護された2匹ですが――
虹の橋の記事です
良く知られた虹の橋。しかし意外に知られていないことがあります。