虹の橋の猫 ―別れって何? 永遠って何?―
ある日、虹の橋の船着き場に、地上からの船が着きました。
渡し守が船を操っていた棹(さお)の先には、三つの銀の鈴がリボンで結んでありました。
船には、黒い仔猫と白い仔猫と、灰色の仔猫が乗っていました。
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仔猫たちは初めての場所が不安で、虹の橋に着いても、なかなか、船を降りようとはしませんでした。
渡し守は、棹から鈴を外すと、一つずつ、仔猫たちの首にリボンで結びました。
それでも、仔猫たちは、船を降りようとはしません。
渡し守は仔猫たちに言いました。
「船着き場から出ると、公園がある。公園の並木道を歩いていけば、虹の橋のたもとの街の入り口だよ。街の入り口の門の前に、星屑のブランコに乗った歌うたいの猫がいるからね。色々、たずねてみるといいよ」
渡し守は、仔猫たちをうながし、船から降ろしました。
それから、渡し船は、また地上に引き返して行きました。
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仔猫たちは、その場に立ったまま、自分たちの乗ってきた船を、ずっと、見送っていました。
船が見えなくなると、やっと、仔猫たちは歩き出し、渡し守に言われた通り、歌うたいの猫に会いに行くことにしました。
船着き場を出ると、すぐに大きな公園がありました。
公園の中を通る並木道はとても美しく、穏やかに木もれ日が揺れていました。
黒い仔猫と白い仔猫が歩くにつれて、渡し守が結んでくれた銀の鈴が、きれいな音で鳴りました。
黒い仔猫と白い仔猫は、鈴の音を聞くと、なんだか元気が出てきました。
でも、灰色の猫の鈴だけは、少しも音を立てませんでした。
鈴の色も他の仔猫たちとは違って、くすんでいるようです。
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並木道の先には街の入り口の大きな門があり、脇には、高い時計塔が立っていました。
その時計塔の前に、星屑でできたブランコがありました。
そのブランコをこぎながら、雉白(きじしろ)もようの猫が、首から下げた鈴の音に合わせ、歌っています。
この猫が、渡し守の言った歌うたいの猫なのでしょう。
雉白もようの猫が歌い終わるのを待って、黒い仔猫がたずねました。
「何をしているの?」
雉白もようの猫は、ブランコをこぎながら答えました。
「歌をうたっているんだよ」
白い仔猫が、たずねました。
「あなたが、渡し守さんの言っていた歌うたいの猫?」
雉白もようの猫は、答えました。
「渡し守さんがそう言っていたのなら、きっと、そうさ」
歌うたいの猫は、ブランコをこぐのをやめて、灰色の仔猫を見ました。
でも、灰色の仔猫は歌うたいの猫と目が合うとうつむいてしまい、何もたずねようとはしませんでした――
――歌うたいの猫(3/10)/虹の橋の猫(10話)・つづく――
作:水玉猫
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この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。
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――第2章のはじまり(第8話)です――
――この物語の第1話です――
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保護猫のお話です
活動家に保護された猫、夕(ユウ)。
幸せに暮らしていた夕は、ある日リンパ腫の診断をうけてしまいました。
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良く知られた虹の橋。しかし意外に知られていないことがあります。