猫の話をしようか

なかなか聞けない猫の話。こっそりおしえる猫の話。

鈴の音と懐かしい声 ~歌うたいの猫/虹の橋の猫(第14話)~

f:id:masami_takasu:20171226074458p:plainイラスト&文:水玉猫

歌うたいの猫の歌に混じって、かすかに聞こえる懐かしい何か――
それは、今にも雨音の中に、消えてしまいそうでした。

黒い仔猫と白い仔猫は、その何かを聞こうとして、さらに、耳を澄ませました。
でも、灰色の仔猫は、ひとり陰に隠れ、耳をふさいだままでいました。

黒い仔猫と白い仔猫は、あまりにもその何かに集中していたので、お互いの存在をすっかり忘れてしまっていました。

黒い仔猫は、もっと聞こうと、首を伸ばしました。
同時に、白い仔猫も、精いっぱい背伸びをしました。

黒い仔猫と白い仔猫は、ぶつかってしまい、ふたりの首の鈴が鳴りました。

澄んだ鈴の音が、歌うたいの猫の歌声と重なりました。

すると、どうでしょう。

それぞれの地上のおうちの懐かしい声が、耳の奥から、聞こえてくるではありませんか。

いつものように、猫の名を呼ぶ声。

猫がしたしぐさに、あたたかく笑う声。
 
懐かしい地上の声は、黒い仔猫と白い仔猫を暖かく包みこみ、優しく撫でてくれるようでした。

鈴が鳴り止むと、地上からの声は聞こえなくなりました。

歌うたいの猫は、言いました。
「ほら、きみたちだって、地上から大好きなみんなの声を持ってきているじゃないか」

「ほんとだね!」
黒い仔猫が、顔を輝かせて言いました。
「歌うたいの猫さん、また、歌ってね。そしたら、ぼく、今みたいに、耳を澄まして、おうちの人の声を聞くからさ!」

歌うたいの猫は、言いました。
「きみたちも歌えばいいんだよ。きみたちの鈴の音に合わせて」

「鈴?」
黒い仔猫と白い仔猫は、自分の首についている鈴を見ました。

歌うたいの猫は、言いました。
「その鈴の音が、きみたちが地上から持ってきた一番大切なものなんだよ。その鈴の音の中に、地上から持ってきた一番大切なものが入っているんだ」

「それが、おうちのみんなの声なのね!」
白い仔猫が、笑顔で言いました。それから、首をかしげました。
「だけど、おうちのみんなにも、あたしの声が聞こえるのかしら?」

歌うたいの猫は、答えました。
「聞こえるといいね。ぼくは、ぼくのおかあさんの歌に合わせて、ぼくの声がおかあさんにも聞こえるように、毎日、歌うんだ。ぼくは、元気だよって」

黒い仔猫は、言いました。
「ぼくも、毎日、歌おう!」
白い仔猫も、言いました。
「あたしも、毎日、歌う!」

陰に隠れていた灰色の仔猫の目から、突然、涙が溢れ出してきました。
灰色の仔猫はしばらく嗚咽を堪えていましたが、堪えきれなくなって、わっと突っぷして大声で泣き出してしまいました――

 

――歌うたいの猫/虹の橋の猫(第14話)・つづく――

作:水玉猫

――次話です――

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まとめ読み|虹の橋の猫 ②
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週刊Withdog&Withcat
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。

――第2章のはじまり(第8話)です――

――この物語の第1話です――