猫の話をしようか

なかなか聞けない猫の話。こっそりおしえる猫の話。

仔猫に還って歌う猫たち ~歌うたいの猫/虹の橋の猫(第17話)~

f:id:masami_takasu:20171208104037p:plainイラスト&文:水玉猫

灰色の仔猫より先に歓声をあげた黒い仔猫は、大喜びで、飛び跳ねています。
「ヤッホー!ぼく、もう、ちっとも、苦しくないよ!ぼくの病気も、全部、船着き場に置いてきたんだ!ヤッホー!ヤッホー!」

黒い仔猫は、地上ではとても重い病気に罹って、何年もの間ずっと苦しみ続けていたのです。
それが、やっと苦しみから解放され身軽になって、嬉しくてたまらないのでしょう。

黒い仔猫の喜びように、はじめは呆気にとられていた灰色の仔猫でしたが、だんだんと嬉しさがこみ上げてきました。
だって、地上で野良猫だった時と違って、もう、おなかも空いていないし、どこも痛くはないのですから。
そして、何より嬉しいのは、怒鳴り声におびえて逃げたり隠れたりせずにすむことでした。

虹の橋では、灰色の仔猫に、悪意を向けてくるものは誰一人としていないのです。

黒い仔猫があまりに元気に飛び跳ねるので、葉っぱの屋根に溜まっていた雨粒が辺り一面に飛び散りました。

白い仔猫は、それを避けようとして、ふと、葉っぱの外の水たまりを見ました。
水たまりには、真っ白で見るからに健康そうな仔猫が映っていました。
白い仔猫は、それを一目見るなり、驚いてしまいました。

「うそ!あたし、仔猫になっている!」

白い仔猫は、地上では、ほぼ寝たきりのおばあさん猫だったのです。
目も見えなくなり、オムツもしていました。
なのに、今は、健康な仔猫に還(かえ)っているのです。

「あれっ?ぼくも仔猫になってるよ!」
白い仔猫の横から、水たまりをのぞき込んだ黒い仔猫が言いました。

歌うたいの猫は、仔猫たちに言いました。
「そうだよ。虹の橋では、楽しい時、幸せな時の姿で暮らせるんだよ」

それを聞くと、白い仔猫は喜ぶより先に、不安な顔になりました。
「だけど、仔猫になったあたしを見て、地上のみんなは、あたしだとわかるのかしら」

歌うたいの猫は、言いました。
「もちろんさ。涙の雨に架かった虹は、心と心をつなぐ虹だもの。一度、架かれば、二度と消えない。だから、どんな姿になっていたって、どんなに遠く離れていたって、すぐにわかるさ」

黒い仔猫が、面白そうに言いました。
「じゃあ、もし、おうちのおとうさんが、これからたくさん長生きして、おじいさんになってしまっても、ちゃんと、ぼくのおとうさんだって、わかるね」

「じゃあ、もし、おうちのおかあさんが、おばあさんになっても、わかるのね。おねえさんやおにいさんが、おばあさんやおじいさんになっても、わかるのね」
白い仔猫も、地上のみんながおばあさんやおじいさんになった姿を想像して、クスクス笑いだしました。

灰色の仔猫も、みんなに負けじと、うれしそうに言いました。
「じゃあ、もし、ぼくが、みんなのおうちの人たちに初めて会っても、わかるよね」

「もちろん!」
歌うたいの猫と黒い仔猫と白い仔猫は、声をそろえて言いました。

それから、みんなは、みんなの鈴の音に合わせて歌いました。

雨はキラキラした光になって、大きな虹になりました。

虹の橋のたもとの街に住む猫たちは、毎日、歌を歌います
青い小鳥も、飛んできました
犬やウサギもやってきて、猫といっしょに歌います。

遠い遠いところに住むみんなに聞こえるように。
遠い遠いところに住むみんなの声を聞くために。

青い小鳥といっしょに、毎日、歌を歌います。

 

――歌うたいの猫/虹の橋の猫(第17話)――

――エピローグへとつづく――

作:水玉猫

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――第1話です――