猫の話をしようか

なかなか聞けない猫の話。こっそりおしえる猫の話。

ミルクも、排泄も、ご対面も難しすぎです! ~ひとつの命を拾うこと(5/10)~

ねこさん、拾いました
f:id:masami_takasu:20180729175130j:plain撮影&文:紫藤 咲

夜の10時を回って帰宅してみると、先住犬であるひなさんが、いつものようにぼくを出迎えてくれた。

まずは彼女に報告し、お許しをもらわねばならない。
これをクリアーしないことには、ぼくはねこさんを迎え入れることができないのだ。

もしも、彼女がNOと言うのなら、ぼくがどれほど覚悟をしようと、ねこさんのお世話は断念せねばならない。

獣医さんの「わんちゃんと一緒に育った子は社交性のある子に育ちやすい」という言葉を胸に、とにかく彼女にお許しをもらうことにした。果たして、彼女は受け入れてくれるだろうか?

ひなさんは小さい頃、実家のわんこたちと暮らしていたため、幼少期にしっかり社会性を学んだわんこさんである。
先住犬にきっちり立場を教えてもらい、他のわんこに対しても、わりと寛容な子だ。15歳と高齢の今も、足腰はしっかりしているし、この年になっても大病という大病はしていない、とてもよくできた子でもある。

 

 

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そんな彼女にねこさんの入った段ボールを見せる。ねこさんは初めての獣医さんと、環境が変わったことで元気が全くない状態。

そんな段ボールの中に顔を突っ込んだひなさんは大興奮状態。
「ワンワンワンワンワンッ!」
ほえまくる。

しつこいようだが、夜の10時を回っている。
騒音レベルの音量でほえまくってはいけない時間帯である。
苦情が来たら、ねこさんどころか、ひなさんを飼うことだってできなくなりかねない。

――あかーん。これはあかーん。

彼女をなだめるように頭を撫でるも、やはり得体の知れない白い物に対して、彼女の警戒心は解けず、元気のないねこさんを鼻先で転がし、ワウワウとほえまくる。ねこさん、無抵抗。

――あかんっ。本当にあかーん!

ご対面は五分で終了。初日で仲良くなるはずもなく、ひなさんから引き離すことを決める。すんなり受け入れてくれる……かもなんて、甘かったのである。

とりあえず、彼女から見えない場所にねこさんを移動する。
ねこさんはじっとしている。無理もない。この時点ではまだ、水も、食べ物も口にしていない。どれくらい食事をしていないかもわからないのだ。

まずはねこさんのお腹を満たしてやらねばならない。

購入したミルクを開けて、獣医さんで教えてもらったように作ってみる。
猫を飼うことは素人であるが、ぼくは過去、何度も子犬は育ててきている。それを思い出して作ってみる。

「ホットケーキの生地よりは薄く、水よりはもったりとって……難しいじゃん!」

とろみの具合に苦労する。さらさらすぎても飲みにくく、もったりしすぎでもダメ。さらに言うなら、ひと肌温度にしなければならない。猫は冷たすぎても、熱すぎてもダメ。

 

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――なんだ、この超難度の塩梅は!

久しぶりすぎたというのもあるが、計量カップでミルクを計り、缶に記載された水の分量を作っても、どうにもうまく作られていない気がした。それにまだ、ねこさん専用の器はないので、小さなお皿にミルクを作る。

しかし、ぼくはわかっていなかった。平皿に少ない分量だと、すぐに冷めてしまい、ミルクは固くなってしまうということを。

急いでねこさんにミルクのお皿を渡す。ねこさん、臭いを嗅いだ後、ぺろぺろとミルクを舐める。舐めるのだが……減らない。

作りすぎたわけではない。決して作りすぎたわけではない。むしろ、少ないかもしれないと思っていたくらいの分量なのに、ねこさんは半分も舐めればいいくらいしか飲まないのだ。

逆にお皿のなかに手を突っ込むものだから、手がミルクでべったり汚れてしまった。

――ひぃっっっ、なんでそうなる!?

食欲はないし、手は汚すし。ミルクが美味しくないのかと、買った缶詰を少し与えてみる。臭いを嗅いで、ぺろぺろぺろと舐めるものの、こちらもまったく減らない。

――なんで食べないの!?

ひなさんからは引き離したし、見えないところでご飯を与えてみても、やっぱりねこさんは食べない。環境が変わったことで、食欲がないのかもしれないと思い、無理に与えるのをやめて、ゆっくり休んでもらうことにしたが、その前に、もう一つやらねばならないことが出てくる。排泄である。

「ごはん食べたときに一緒に陰部を刺激して、出させてあげてみて」

獣医さんに教えられたように、ティッシュで陰部をちょんちょん刺激する。しかし、何度刺激してもしない。ティッシュを濡らしても、やっぱりしない。

――ガッデム! なんでやねん! なんで出ないねん!

排泄断念である。とにかく寝てもらおうと、段ボールにタオルを敷き、ねこさんを休ませる。

十分に飲み食いしていなければ、出るものだって出ないことを、このときのぼくはわかっていなかった。それに、すでにねこさんはかなり弱っていたのだと思う。今ならわかる。ねこさんの衰弱は、環境が変わったからが理由ではなかったのである。

心配が残りながらも、この日、ぼくもねこさんも就寝する。しかし、その次の日は、初日よりもさらに困ったことになってしまうのであった。

 

おまけ
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ひなさんが姉と慕っていたコーギー犬。
喧嘩の仕方は彼女に教わったひなさん。

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――ひとつの命を拾うこと(5/10)つづく――

作:紫藤 咲
 

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――出典――

※本記事は著作者の許可を得て、下記のエッセイを元に再構成されたものです。

生きることを諦めていた猫、ライ
第六話 ミルクも、排泄も、ご対面も難しすぎです!

https://ncode.syosetu.com/n2003eg/6/

 

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