猫宅・44の物語 6話
今回のお話は:ちび茶(ちゃー)と、はは

月を保護し、猫宅は合計6にゃん。ずいぶんと賑やかになりました。
さてその頃我が家の周辺には、外猫さんが沢山いました。
うちでは、その大勢の猫さんのお世話をすることはありませんでしたが、ある理由で、ちゃーにだけはご飯を上げていました。
ちゃーは第3話で登場しましたが、華と雪の母猫で、正式にはちび茶と言います。
ちゃーと愛称で呼ぶことが多いのです。
今日は、このちゃーのお話をしようと思います。
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ちゃーはある日突然現れたのではなく、この子にもお母さんがいました。 通称 ”はは” と呼ばれる子で、とても子供思いな猫でした。ちゃーのお話の前に、この はは についても触れておきます。ちゃーに繋がるとても大事なお話です。
はは はご近所の猫好きなおじいさんが飼っていた子だと思われます。
その方が亡くなってしまい、ご飯を貰うことが出来なくなったために、私がお世話をするようになりました。
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はは はある日、出産をしました。私は子猫がいることを知っているのですが、はは の警戒心が強いために、お世話をしてあげたくても、子猫に近寄ることができません。
そこで、考えた末に魚肉ソーセージを はは に与えることにしました。
何故なら魚肉ソーセージならば、その場から子猫のところに運びやすいからです。
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最初は小さくちぎって はは に食べさせて、その後に一本を丸ごとあげるのです。
すると はは はそれをそのまま咥えて我が子のいる場所まで運びます。後ろを気にしなから、誰も後をつけてこないか時折振り返る姿が健気でした。
そしてその子猫達が大きくなった頃、はは は深夜に私の家の前に現れるようになりました。 母猫の後について、子猫はちょこちょことお散歩です。
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ある日の夜 一台のバイクの音が聞こえた瞬間、嫌な音が聞こえました。
慌てて窓から外を見ると、子猫は居るのにはは が居ません。急いで外に飛び出した私は、辺りを見渡しました。しかし はは の姿はありません。
そのまま周囲を探すと、車の下で横たわっている はは を見つけました。
猫は体を痛めた時、その場所で息を引き取るのではなく、少し移動して息絶えると言うことを後で聞きました。 はは は我が子を守り、この世を去ったのです。
その時私は はは に、子供たちの事は 守るからと約束しました。 その子がちび茶とちび白です。
冒頭に書いた、ちゃーにご飯を上げていた理由がこれです。
ちゃーの話に戻りましょう。
このちゃーはやがて、自分も母猫になります。産んだ子は華と雪と風(ふう)の3匹で、風だけが雌です。
華と雪は既に保護して猫宅に。しかし風は捕獲ができず、外猫のままでした。
ちゃーと風の避妊手術も考えたのですが、2匹とも野生の血が強くて捕獲することができませんでした。風に至っては目が会うだけで逃げて行く始末です。
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そんなある日――、あれは夏の余韻が残る暖かい日だったと思います。
何を思ったのか、ちゃーが私の後を追って猫宅に付いてきました。そして玄関を開けると中に入ったのです。私はこのままこの子を保護できると思いました。
そっと玄関の扉を閉める私――
しかし外で産まれ外で育った子は、なかなかうまく家猫にはなってくれません。
猫宅に入ったちゃーは、怖さの余り家中を走り回り、編み戸にぶら下がり凄い声で泣き叫びました。
「どうしよう?」
私は、このままではちゃーが可哀想と思い、玄関を開けてやりました。ちゃーはそのまま外に飛び出して行きました。
そしてこれが、ちゃーを保護できる最後のチャンスになってしまいました。
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再び外を駆け巡る母猫ちゃーと、娘の風。
男の子の猫は、発情期になると女の子を求めて集まって来ます。
ちゃーと風を狙っている子もいました。
白黒のジャック 、茶トラのボス(この子は家は有ったけど何故か外猫)、シャム系の子 白黒のポリスです。この3匹は、鉢合わせになると決まって縄張り争いから喧嘩が始まります。その声を聞く度に、私はほうきを持って外に飛び出したものです(笑)
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そんな日が過ぎるうちに、毎日ご飯を食べに来ていたちゃーと風のお腹が、大きくなり始めました。そして出産。
猫はだいたい2ヶ月程で出産するそうです。
はち切れんばかりのお腹になると、ご飯の時間になっても姿をあらわさなくなり、1日 2日 3日目辺りにようやくご飯を食べに出てきます。 なのでだいたい子猫が生まれた時期はわかります。
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この時にちゃーが産んだのは5匹。うち1匹は私が名前を付ける前に交通事故に遭い、残り4匹には、あずき、陸、海(かい)、空(くう)と名付けました。
あずきはやがて私が保護することになり、空は自分から猫宅にやってくるのですが、それは次回の記事でお話をしましょう。
海は交通事故に遭いお星様に。陸は1度は猫宅に入ったのに外に飛び出して、そのまま帰って来なくなりました。それもまた次回に。
ちゃーと風も、また後の話に登場してきます。
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これは海の写真です
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さて、ちゃーの姉妹猫だったちび白は――
ボスと呼んでいた子と仲良く一緒に居たのですが、この子も事故に遭いお空へ。
その時病院で、お腹に赤ちゃんがいることを告げられたのですが、そのままお腹の中に残しました。 産まれていれば初産でした。
外猫にとって外界は、危険が一杯なのです。
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実を言うと、うちには外猫の写真はほとんどありません。
なぜかというと、外猫は写真を撮るといなくなるというジンクスがあるのです。
扉と記事内に使ったのは、ちゃーとよく似た、『小麦』という子の写真です。
下の写真は、唯一撮影した外猫で、はは と ちび白 だと思います。
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今回は写真がとても少なかったので、最後にクリスマスの時の猫宅の写真を掲載しておきます。
クリスマスのご馳走で、まぐろをあげました。
あっというまに完食です。
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メリークリスマス
――つづく――
作:女神
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――次話――
44の物語、今回は外猫ちゃーの子供たちの話。
ちゃーが5匹の子を連れて、ごはんを食べに来るようになりました。
保護したいのですが、2匹は交通事故に。
猫には厳しい環境です。
結局3匹を保護。
1匹は自分からやってきましたが――
これで合計9ニャン。
――前話――
4の物語、6匹目。
「この子、お宅の猫?」
ある日ご近所の方が、私を呼びとめました。
その手には、見慣れない黒い仔猫が。
猫宅で預かって、里親探しをするものの見つからず。
「1匹増えたところで……」
娘の一声で、月はうちの子になったのでした。
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この記事は、下記のまとめ読みでもご覧になれます。
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。
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――この連載の1話目です――
44匹の猫が住む家、その名も『猫宅』
今日は保護した猫たちのために、専用の家『猫宅』を借りた飼い主さんのお話です。
1匹ずつに物語があって、今日はその猫宅住まいの最初の1匹目を保護した時のお話。
さて、44の物語、完成するでしょうか?
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