猫の話をしようか

Withcat 猫と飼い主の絆について

【知ってる?】クイーンのフレディー・マーキュリーって猫好きだったんだぜ ~拾った猫はどこにいく?(3/10)~

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紫藤、猫拾ったんだって?
(ハットリの見た、犬派の僕が猫と暮らす理由)

f:id:masami_takasu:20190213182603j:plain文:ハットリ

紫藤への電話を切ってから、俺はしばらく考え込んでしまった。
猫を拾うはあいつの勝手だし、譲渡先を探して走り回るのは、拾ってしまった者の宿命みたいなものだ。だから放っておけばいいのだが、なんだか気になる。
結局、紫藤の話には乗らなかったが、俺はもともと猫好きだ。だから猫の行く末は気になってしまうのだ。

紫藤は動物病院に相談すると言ったが、そう簡単ではないだろう。
あいつが言うように、その獣医師が保護動物を放っておけないタイプの人間ならばなおさらだ。恐らくその病院は猛烈に忙しいはずだ。

俺の実家が猫を診てもらっていた獣医師もそうだった。その獣医師は、地域猫の去勢や避妊手術を、ほとんど実費で引き受けていたが、ほとんど寝る間もないほどに忙しそうだった。

何故そうなるかと言うと、ちゃんと理由がある。
保護猫に良くしてやろうと考える獣医は、他の動物にも優しいし、飼い主にだって優しい。だから一匹一匹を丁寧に診察し、飼い主にもきちんと分かりやすく説明をする。
必然的に勤務時間が長くなるから、寝る時間を削って、新しい治療法や新薬の勉強をする。

そんな獣医師には患者が殺到するのだ。当然のことだ。

するとどんなことが起きるか――

自分を頼ってくる動物を沢山救うためには、どこかで線引きが必要になる。保護動物を熱心に診ていたら、自分を頼ってくれる動物や飼い主のため割く時間が、どんどん失われていくこちになる。1日は24時間と決まっているのだ。

 

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では、どこで線を引けばいいのか?

実家の獣医師は、ボランティア活動はしないポリシーだった。多分、同じように考えている獣医師は多いことだろう。
別にそれで儲けたいわけではない。無責任に頼ってくる有象無象を排除するためだ。
最低限の費用を設定して、それを支払わせることで、相手に命を救う行為の重みと、責任感を植え付けていくわけだ。

恐らく紫藤も、向かった先の獣医師から同じようなことを言われるのだろう。
『君が拾ったのなら、君が飼え』
みたいな事をいうような獣医師ならば、きっと本物だ。

そんなようなことを考えながら、俺は冷蔵庫から500mlのビール缶を1本取り出した。プルトップを引き上げると、プシュと小さな泡が飛んだ。

 

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「音楽でも聴くか」
ビールを一口だけ飲んでから、俺はスマートフォンにダウンロードした曲名リストをスクロールさせた。気分転換のつもりだった。

命のことを考えるとき、(それは人でも動物でもなのだが)俺はいつも自分の胸の中心に、何やら重いものを感じてしまう。もしかするとそれは、持って生まれた霊感によるものなのかもしれない。そしてその重みがまだ軽いうちに振り払わないと深みにはまる。昔からそうだ。
ついつい、そのことばかりを考えてしまうのだ。
答えなどないのに。

「紫藤のことは、紫藤自身が決めることだ」
そう思ったところで、人差し指が止まった。

▶『ボヘミアン・ラプソディ』クイーン

1975年にリリースされたの古い曲。そういえば、クイーンのボーカリスト、フレディ・マーキュリーは大の猫好きだったはずだ。

俺はその曲をタップした。

 

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年齢的に俺は、クイーンをリアルタイムで聴いた世代ではない。2000年頃に起きた、第二次ブームでバンドを知った。あの頃は、やたらとCMでクイーンが流れていた。

♬Is this the real life-
♬Is this just fantasy-

冒頭はブライアン・メイ、ロジャー・テイラー、フレディ・マーキュリーの重厚なコーラス。ちょっとノイズっぽいのは、テープによる多重録音だかららしい。
デジタルレコーディングが無かった時代。クイーンのレコーディングは、テープの磁性体が擦り切れるほど重ねたという伝説まである。

♬Caught in a landslide-
♬No escape from reality-

俺は、フレディの猫好きに思いをはせた。
昔読んだ本では、フレディはざっと数えて10匹以上は飼っていたらしい。

さぞかし猫屋敷だっただろうと思うかもしれないが、俺はそうではなかっただろうと考えている。クイーンの黄金期、70年代と80年代は、猫の平均寿命は3年ほどしかなかった頃。今とは全然違っている。完全室内飼いだったとしても、今のように平均15年も生きることはないだろう。

きっとフレディは2匹とか3匹ずつを、途切れなく飼っていたんじゃあないだろうか?
誰か知っていたら教えて欲しい。

♬Open your eyes-
♬Look up to the skies and see-

そういえば、以前に音楽雑誌で、フレディが猫を抱いている写真を見たことがある。
ステージパフォーマンスで見せる、あのオーラが立ち上がるようなカリスマ性とは無縁の、ただの猫好きのヒゲ男だった。

本当ならば、ネット上にあるフレディの猫写真や、猫好きヒゲ男の写真もご紹介したいのでが、著作権の所在が分からん。見たい人がいたら、勝手にネットを検索してみてくれ。

出典: Bohemian Rhapsody/作詞:Freddie Mercury 作曲:Freddie Mercury

 

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フレディー・マーキュリーの猫好きといえば、俺には思い出のアルバムがある。
それはクイーンのものではなく、フレディーのソロアルバム『ミスター・バッド・ガイ』(Mr. Bad Guy)だ。

このアルバムが発売されたのは1985年。
フレディのヒット曲で、後にクイーンも演奏した『ボーン・トゥ・ラブ・ユー』(I was born to love you)が収録されている。

当然俺は、リアルタイムでは聞いていない。しかしどういうわけか、このアルバムは持っている。学生の頃、偶然に露店で売られていた中古CDを買ったのだ。
扉の写真とすぐ上の写真の2枚はそのアルバムを撮影したものだ。
(2つ上のアルバムは『オペラ座の夜』このCDも持っている)

さて、『ミスター・バッド・ガイ』がなぜ猫に関係があるのか――
別に猫の曲が収録されているわけではない。
ライナーノーツに書かれた、ある一文がキモなのだ。
俺はこのCDを手に入れたとき、何気なくその一文を読んで、ニヤリとした覚えがある。

これを見てくれ。オレンジ色の部分
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分かりにくいので、そこだけトリミング
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 書き出して、訳しておこうか。

This album is dedicated to my cat JERRY - also TOM,OSCAR and TIFFANY and all the cat lovers across the universe - screw everybody eise.

このアルバムは、僕の猫ジェリーならびに、トム、オスカー、ティファニーと、全宇宙の全ての猫好きに捧げる。―それ以外のやつは、クソくらえ

出典:Mr. bad Guy

音楽がダウンロードで聞けて手軽になったのは良いのだが、こんなサプライズがなくなってしまったのは寂しいね。 

さて、その猫好きフレディーだが、最後には猫ソングも歌っている。『愛しのデライラ』(Delilah)がそれだ。

お気に入りの猫の名、デライラをフレディが連呼する歌だ。そして曲の最後では、”君のキスが大好きだよ”(I love your kisses)と、何度も何度もデライラに呼び掛ける。
恐ろしいほどの、ネコ馬鹿ぶりだ。

しかも、念の入ったことに演奏には猫の鳴き声まで入っている。気になったので、その鳴き声のことを調べてみたら、ブライアン・メイが、トークボックス(正式名は、トーキング・モジュレーター)というエフェクターを使って、ギターで再現したのだそうだ。

この『愛しのデライラ』だが、収録されているアルバムはクイーンの14枚目『イニュエンドウ』 (Innuendo) で、ライナーノーツを見ると、リリースは1991年5月。録音は1989年~1991年となっている。

フレディが亡くなったのは、1991年11月24日。クイーンの15枚目アルバムの『メイド・イン・ヘヴン』(Made in  Heaven)は1995年のリリースなので、『イニュエンドウ』は4人で活動したクィーンの、実質的なラストアルバムということになる。

HIVを発症し、自分の命がそう長くないことを悟っていたフレディが、ラストアルバムで愛猫の名前を連呼していたって考えると、ついホロリとしてしまうよ。

まったく猫好きの鑑だよなあ、フレディは――
さて、紫藤はどうだろうか?

 

――ひとつの命を拾うこと(3/10)つづく――

作:ハットリ
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――次話――

本作は不定期連載です。
次は、ハットリの気が向いたときに配信いたします。
一応、次に同期する『ねこさん拾いました』は下記です。

――前話――

『犬派の僕が猫と暮らす理由』ではこうなります。
本作は、下記の作品と時間軸が同期しています。

週刊Withdog&Withcat
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。

――この連載の第1話です――

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