今回のお話は:キングと、まさかの風子出産
突然に具合が悪くなってしまったミント。
病院に連れて行ったものの、結局不調の原因は分からないままで時は過ぎていきました。
ミントはみんなと一緒にご飯を食べる事はなく、いつも何処かに隠れて、一人でゆっくり食べていました。
ミントの心境までは分かりませんが、他の猫宅の仲間たちが怖くなったのかもしれません。なにしろ物心ついたときには、既に自分は弱っていて、同じ時に生まれた兄妹猫も含めて、周囲は自分よりも強い猫たちばかりです。
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私は一度、ミントが他の猫から攻撃を受けているところを見ました。といっても、同じ空間で生活している仲間なので、攻撃と言う攻撃ではありません。俗に言う猫パンチと言う行動です。
ただ弱い者はそれだけで恐怖を感じ、その場から動けなくなってしまうのです。
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ある日のこと、私が猫宅に行くと、ミントはキャットタワーの片隅に隠れておびえていました。多分、誰かに猫パンチで脅されたのだと思います。きっと同一犯でしょう。
ミントは、トイレに行くことさえ出来なくなってしまったようで、キャットタワーを包んでいたマルチカバーで排尿、排便をしてしまいました。
「もうミントは限界だ。このままでは可哀そう」
そう思った私は、すぐに段ボールを集めて、ミント専用のハウスを作りました。
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同じ型の大きい段ボールを、三箱横に並べたもので、真ん中にベッドで、右端ではご飯を食べる事ができます。左端はトイレがです。灯りが入るように、天井には窓を開けました。
こうしてミントの隔離生活が始まりました。
実はその頃、ミントには口内炎と言う厄介な病気が見つかりました。
きっとミントが弱々しかったのは、それが理由だったのでしょう。
ミントのその後については、後でもう一度お知らせします。
さて、ミントの新生活が始まったのと同じ時期のこと。
猫宅にはまた事件が起き始めます。
ある日の朝、私の携帯がなりました。
息子からの電話でした。
「イオンの駐車場で子猫を見つけた。猫宅に連れていってもいいかな?」
イオンというのは、ご存知の通りのショッピングセンターです。うちの近所にもあるのです。
「1匹だけ?」と、訊ねる私。
「うん」
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状況を聞くと、駐車場で突然、子猫の鳴き声が聞こえて来たのだそうです。 一緒にいた仲間3人で鳴き声のする方を探したところ、敷地の脇にある側溝の中で、その子猫が小さな声で鳴いていたそうです。
他の誰も引き取り手が無い事と、うちには猫宅があったので、仲間と相談の上、息子が引き取ることに。
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「とりあえず、連れてきなさい」
元いた場所に戻すのは危険だなと思い、息子にはそう言いました。
”とりあえず”と息子には言いましたが、そう言った瞬間から、私の気持ちはもうほとんど決まっているようなものです。猫宅の住人がもう一匹増えるということです。
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息子はその子を、車で連れ帰りました。
段ボール箱に入れなくてもよいくらい人慣れしていたので、膝の上に置いて運転してきたのだそうです。
見れば生後2ヶ月位の女の子、茶色のとら猫でした。
手渡された時から抱っこの上手な子猫です。
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「この子の名前どうしようか?」
駐車場=パーキングだから……
――キング !!!
そうだ、キングにしよう
女の子なのにキングにしたのは、この頃新しい猫には、エピソードに因んだ名前を付けていたからです。そうしておけば、名前や当時の出来事を忘れないだろうと思いました。
さて、時は過ぎて7月の話です。
出産ラッシュで増えた8匹の子猫も、2〜3ヶ月頃になると性別がはっきりわかるようになってきます。そこで私は、1階の『女子の部屋』に女の子を集めました。
理由は簡単。これ以上増やさないためにです。
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しかし、そんな矢先にまた事件が……
なんと風子が再び妊娠し、出産したのです。
5月にミント、 オレオ、ラテの3匹を、産んだばかりというのにです。
猫の妊娠期間は60日ほどだと言いますから、そちらの計算は合うのですけれどねえ。
年2回の発情期(猫の平均です)はどうしたの? という感じです。きっと風子は多産の体質なのでしょう。
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どこで男の子と接触があったのかは、今となっては分かりません。
風子は出産した直後の妊娠ですし、その頃には女子の部屋には、既に鍵がかかっていましたからね。
そうそう、出産をどこでさせてあげたかも、書いておかなくてはなりません。
今回の風子の出産の前には、風子、小麦、ムーの3匹がほぼ同時に出産していますので、きっと気になる方もいらっしゃると思います。
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前回の3匹の出産のときは、自然に任せた感じです。本来なら赤ちゃんを産むという重大事ですから、みんなに違う部屋を用意してあげたかったです。しかし、もう猫宅には空いている部屋がありません。
で、どうしたか――
女の子部屋にはその頃沢山の段ボールハウスがありました。
だから3匹はそれを使って、それぞれが思い思いの所で出産したのです。
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猫たちは、どうやって場所取りをしたんでしょうね?
それに3匹以外の猫たちも、3匹の出産の邪魔をしないように、そっとしてあげていたのでしょうから、それができたのも不思議です。
誰も教えていないのに、猫の社会の中ではきちんとそれができるのですね。
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そして今回の風子の出産となるわけですが、風子は2度目の出産ですから、多分慣れていたと思います。
風子が産んだのは5匹です。
名前はそれぞれ、こぱん、バニラ、うさぎ、青、空(そら)と名付けました。
白黒ハチワレの子、こぱんは、猫宅の子のぱんだと容姿がそっくりだったので、その名前にしました。私はこの子のお父さんは、ぱんだに違いないと睨んでいますが、真相は藪の中です。
バニラは三毛猫でしたが、先に出産した子達の名前にカフェシリーズ(ラテ、モカ、ココア、チョコ)があったので、その時に用意していた名前をあげました。うさぎは尻尾がお腹の中に忘れてきたみたいなうさぎのしっぽの様な形から、うさぎと名付けました。
青と空はロシアンブルーの様な双子で、2匹合わせて青空となるように青と空です。
しかし私の願いは叶うことなく、青はお星様になってしまいました。病院で点滴して貰ったのですが、だめでした。
――青へ――
いつまでも君達は青空だと思ってた。
空は君の分まで大きくなったよ。
大きくなった青を見てみたかったな。
ここまでの猫宅の住人たち。
とら、茶々、華、雪、天、月、あずき、陸、空、みっけ、てっぺい、真白、ぱんだ、麦、小麦、風子、キキ、ララ、ムー 、彼女、四月、ミント、 オレオ、ラテ、モカ、ココア、チョコ、いちご、五月。
そして、キング、こぱん、バニラ、うさぎ、空(そら)
合計34匹です。
※お星さまになった青は入っていません。
――今回の写真のご説明――
1枚目(扉):風子2回目の出産で生まれた赤にゃん
2枚目:息子が駐車場で拾った子、キング(左)
3枚目:風子の子、こぱん。ぱんだと似ているから、こぱん。
4枚目:風子の子、バニラ
5枚目:風子の子、うさぎ
6枚目:風子の子、青
7枚目:風子の子、空(お星さまに)
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猫宅の様子もどうぞ。
月 だにゃ🌛
— 女神 (@megami_901) May 17, 2019
これが俺の食べ方だにゃ pic.twitter.com/YOeyO3bUQZ
――つづく――
作:女神
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――次話――
44の物語、今回は出会いと別れ。
不思議と猫宅には、自分の方からやってくる猫がいます。
仲間がいることが、そして安全なことが分かるのでしょうか?
しかし、去る猫もいます。
陸と――
ずっとこのお話に登場したもう一人の主人公。
外猫のちゃー
――前話――
44の物語、今回は6番目の猫、月が巻き起こした大事件。
猫宅の出産ラッシュについて――
扉を開ける特技を身に着けた月。
女の子部屋の脱走事件が頻発します。
そして、3匹が妊娠していることが分かります。
「産まれてくる子には罪はない」
それが私たち母娘の結論でした。
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この記事は、下記のまとめ読みでもご覧になれます。
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。
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――この連載の1話目です――
44匹の猫が住む家、その名も『猫宅』
今日は保護した猫たちのために、専用の家『猫宅』を借りた飼い主さんのお話です。
1匹ずつに物語があって、今日はその猫宅住まいの最初の1匹目を保護した時のお話。
さて、44の物語、完成するでしょうか?
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