猫宅・44の物語 18話
今回のお話は:いちごとの別れ
今回はいちごのお話をしようと思います。
いちごは、前話でお星さまになったムーが産んだ子供です。
猫宅の出産ラッシュの中で生まれて、すぐに猫風邪にかかってしまい、目がなかなか開きませんでした。ようやく開いたときの目が、いちごの様に赤かったので、この名前を付けました。
いちごは普段から口内炎で苦しんでいました。しかし弱音を吐かず、食べる事は忘れないで、いちごなりによく頑張っていました。
2019年3月5日のこと、そのいちごが、ごはんを食べなくなりました。それまでは調子が悪い時でも、お水だけは沢山飲んでいたびですが、それさえ口にしなくなりました。
発作のようにくしゃみが時折出て、鼻血混じりのような鼻水を流していましたので、今回も猫風邪だろう。だからご飯を食べてくれないのだと思っていました。
しかし症状は一向によくならず、いちごは見る見るやせ細っていきました。
「もしかすると……」
私は思いました。いちごは先に亡くなったムーの子供で、そのムーは彼女の子供です。彼女は腎不全で旅立ち、ムーは確定診断はしなかったものの、最期の様子は彼女とよく似ていました。腎臓が悪いのはもしかすると遺伝するのかもしれません。いちごの症状は、彼女やムーの時に似ていました。
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いちごは過去に何度か、病院に連れ出した事があります。だけどいちごは、ネットに入るのを嫌がる子でした。そんなところも、彼女とムーに似ています。
「それならば、いちごの嫌がる事はしないでおこう」
そう決めた夜の事、今まで断固として抱っこを嫌がっていたいちごがすんなり抱かせてくれました。これもまた彼女とムーが、最期に抱かせてくれたときのようにです。
抱っこができるようになったいちご――
「その時」が近い事を、私は肌で感じていました。
私はいちごを抱きながら、いちごの過ごした部屋を一つ一つゆっくりと回りました。そこには、いちごの仲間たちがいます。いちごは少しも嫌がらず、思い出の場所や仲間たちに目をやり、時折私の顔を見てはうなずく様にしていました。
いちごなりに、何かを感じていたのでしょうか?
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仲間たちも、いちごの異変に気付いたようです。私達親子の行動や雰囲気で感じ取ったのかもしれませんし、動物の本能なのかもしれません。
一通り仲間との挨拶をすませると、いちごはじっと私の顔を見ました。そして私がいちごを寝かしつけようとベッドにつれていくと、いちごは自分の好きな場所を選ぶようにして寝転びました。
私は他の子達のお世話があるので、一旦いちごから離れました。
暫くしてまた戻ってくると、いちごはさっきまで居た場所には居ませんでした。
もう歩くこともむずかしくなったというのに、重い足取りで、何度も自分の落ち着く場所を決めていたようです。こんな高い所から降りられるの?と思うことは様な所にも上ったりして……
いちごはいつもなら、大好きな茶々の元で寝ていたのですが、その日は一人になりたいようでした。最期の自分の場所を探していたのかもしれません。
私は最後のお別れを、いちごの意識の在る間に伝えてあげようと思いました。
「向こうに行ったらお母さんもおばあちゃんも居るから心配しなくていいんだよ」
「もう、苦しまなくていいんだよ」
私は何度も何度も、いちごに語り掛けました。
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やがて私には、猫宅を後にする時間が迫って来ました。
午前0時、私は自宅に戻ることに――
娘は「もう少し居るから」と言って猫宅に残り、家に帰って来たのは、2時を過ぎていたと思います。娘も仕事があるために、その日はそれ以上は起きている訳にいきませんでした。
夜が明けました――
朝、私が猫宅を訪れた時には、もういちごはかえらぬ子になっていました。
段ボールハウスに身体を隠し、手足を伸ばして寝ていました。
その顔はやさしくきれいな寝顔でした。
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2019/3/6いちご 永眠
わずか3年と10ヶ月の命でした。
生まれた時から猫風邪で中々目も開くこともできず、でもいちごなりに精一杯生きてきたんだと思います。
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いちごが去った猫宅。
とら、茶々、華、雪、天、月、あずき、空、みっけ、てっぺい、真白、ぱんだ、麦、小麦、風子、キキ、ララ、四月、ミント、 オレオ、ラテ、モカ、ココア、チョコ、五月、キング、こぱん、バニラ、うさぎ、空(そら)、ポッキー、六月(ムック)、カール・チェリー・ナッツ・みかん・あんず・きなこ、かんな、やさい、いろは、鈴。
猫宅は43ニャンから、42ニャンになりました。
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今の猫宅の様子もどうぞ。
女神です🎀
— 女神 (@megami_901) August 27, 2019
チーズ🧀のおかわりを狙う大人組 pic.twitter.com/KibPAtodWH
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――つづく――
作:女神
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――次話――
ある日、キングが前足をぶらぶらさせていました。
爪の感染症かな?
しかし、病院で告げられた病名は――
『心筋症、血栓栓塞症』
余命は「今にも」と……
震えあがる作者。
それが闘病生活の始まりでした。
――前話――
猫達のお世話に追われる毎日。
『この子が最後』『もう、増やさない』
と心に誓う作者ですが、この日もまた野良猫を見てしまうのでした。
そして猫宅には出会いだけでなく、別れもやってきます。
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この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。
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――この連載の1話目です――
44匹の猫が住む家、その名も『猫宅』
それは、保護した猫たちを住まわせるために借りた家。
猫には1匹ずつに物語がありますね。
これは最初の1匹、とらのお話。
さて、44の物語、完成するでしょうか?
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猫宅のまとめ読みです
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