犬派の僕が猫の多頭飼いを始めた理由

ブログタイプのエッセイ作品で、面白いことが起きた時だけの不定期更新となります。
どうぞお楽しみください。
猫の多頭飼いをしてみたい|多頭飼いは初めてだけれど、大丈夫だろうか?|経験者の体験談を読んでみたい
ゼロ距離での接触
ちびーずとの初対面を終えてみて、これはイケるんじゃないかと確信したぼく。
ついにライとちびーずをケージ越しではなくて、ゼロ距離での接触を試みることにした。
一週間。
まだ早急では?
というフォロワーさんの声もあった。
それでも決行したのは、二匹がケージの前から離れなかったからだ。
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いざ、接触。
どきどきしながら二匹をリビングに出してみる。
ライはどう出るのか!
二匹に近づくライ。
匂いを嗅ぐ。
――えっ?
びっくりした。
だってライがちびーずの頭を舐めたんだもの。
猫スキーならわかると思う。
猫が舐めるのは親愛の証。
おまえのこと、うけとめるぜ!
の意思表示なのだ。
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ライはその後、何度も何度もちびーずを舐める。
頭だけじゃない。
おしりまで舐める。
――うそでしょ!?
ライはオスだ。
育児の経験はもちろんない。
他のもふもふたちなんて敵とみなして威嚇する。
心を開いているのは唯一ひなさんだけ。
そんな彼が優しくちびーずを舐めているのだ。
こんな奇跡、ほかにあるだろうか。
いや、ない。
絶対にない。
頭をよぎるもの
――もしかして、この子たちは……
ふと頭によぎった。
実はぼくにはずっと気がかりなことがあった。
ひなさんが高齢であるということ。
もう16歳。
耳も聞こえない。
鼻も悪くなっている。
目も白内障が進んでいる。
食べることは人一倍。
どう考えても認知症。
それでもライにとっては絶対的な存在。
親同然。
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ひなさんが出掛けていないと不安になって寂しくなるライだ。
ひとりきりは絶対に耐えられない。
もしも彼女がこの世を去ったら、ライは後を追うのではないか――
ずっと不安に思っていた。
ひなさんにはなんとしても長生きしてもらわねばならない。
だけどいつか終わりは来てしまう。
まだ大丈夫。
だけど腎臓の数値は決していいわけではない。
元気はある。
16歳とは思えないほど、だ。
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だからこそ、ぼくは新たな子がほしかった。
ライと一緒にひなさんを看取ってくれる子が……
ライだけでは背負えない悲しみを、一緒に背負ってくれる子がどうしてもほしかった。
ここ半年は特に強く思っていたことだった。
運命の子たち、縁で結ばれた子たち
二匹を受け入れるライの姿を見て。
ライを嫌がらないちびーずたちを見て。
ぼくは確信した。
そうだ。
この子たちは来るべくして来た子たちなんだ、と。
神様はいるんだとぼくは思う。
そうじゃなきゃ、このタイミングで家に来るわけがないって思うから。
そう思いながら三匹の仲睦まじい姿を撮影したものをハットリに送る。
『よかったな』
そう言った彼はこう続けた。
『俺さあ、思うんだけど。こいつらはちーたやおまえと一緒にひなを看取るために来たんじゃないかなあってさ。そうじゃなきゃ、ちーたもおまえも耐えられないと思うんだわ。三匹に見送ってもらえたら、ひなも安心するんじゃないか。おまえ、めちゃくちゃ弱いから、ちーた一人じゃおまえのことも支えられないしな』
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ハッキリ言って驚いた。
ぼくのことが混じってはいたけれど、ハットリまで同じことを考えていたなんて――
「うん。ちびーずはそのためにうちに来たんだとぼくも思うよ」
縁(えにし)によって結ばれたぼくたち。
思っていたよりもすんなりと家族になれたぼくたち。
猫が飼いたいと思っても、簡単に猫が飼えるわけでなし。
多頭飼いしたいからと言って、簡単に猫が拾えるわけでなし。
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必要なときに必要なタイミングでやってくる。
これを運命と呼ばずして、なんと呼べばよいのだろう。
ぼくには他に言葉を見つけれれないのだが……
出会うべくして出会ったぼくたちの生活は、こうして穏やかなスタートを切ることになる。
だけど、ぼくにはひとつ不安が残っている。
ちびーずたちが順調に育ったその先にある、大きな不安が――
今のねこさんの様子は?
――ねこさん、増えました・つづく――
作:紫藤 咲
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▶ 紫藤 咲:猫の記事 ご紹介
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――次話――
思い返せば、平穏だった日々が一変した日がある。
平成30年9月27日木曜日、午後6時30分頃
大切な家族、先住猫のライが、マンションの4階から飛んだのだ。
どこに飛んだかって?
外に――
虚空に向けて――
――前話――
2匹をうちの子にすると決めたぼく。
しかし大問題が残っていた。先住(犬+猫)たちとの相性はどうなのか?
折り合いが悪いと、みんなでしあわせワッチョイ生活にはならない。
ぼくは慎重に、ニャンズと先住たちの接触を試みていった。
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この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。
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――本作の第1話目です――
運命ってあるのだろうか?
だとしたら、今回がきっとそうだろう。
きっかけは、1枚の画像――、子猫が写っていた。
『もらう?』友人のハットリ君が訊いてきた。
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犬派の僕が猫と暮らす理由
運命の日――
ぼくは猫を拾った。
犬派だった著者が、猫を拾ってからの悪戦苦闘を描くエッセイ。
猫のいない日常に、飼ったこともない猫が入り込んでくる話。
「ぼくらの物語はこの日から始まった」
猫を拾ったら読む話
『猫を拾った』をテーマにした、エッセイのセレクションです。
猫を飼うノウハウ、ハウツーをまとめた記事はネット上に沢山あるのですが、飼育経験の全くなかった方にとっては、そのような記事を読めば読むほど、「大丈夫かな?」と不安になるはずです。
猫未体験、猫初心者の方に是非読んでいただきたいです。
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紫藤咲の執筆作品