うちの子がうちにくるまで(猫)|No.9
人生最後の猫を考えたことはあるでしょうか?
ペットにも人間にも寿命がある以上、いつかは考える時が来ますね。飼い主が先に逝ってしまうと、残していく子がどうなってしまうのかと心配でなりません。
保護猫(犬)を譲渡する際に、里親に年齢制限を設けている保護団体が多いようです。そこで自分の年齢(自分の寿命)を意識する方もいらっしゃるでしょう。
このお話は、もう次の子を迎えることは無いと思いながらも、運命の出会いをしてしまったという体験談。皆さんならどうするでしょうか?
こんな方に:
次の子を迎えるかどうか迷っている|今の自分の年齢を考えると、面倒が見られるかどうか不安|経験者の話が聞きたい
今日は我が家にやって来た新しい猫、美雨を迎えた時のお話をしようと思います。
我が家はずっと多頭飼い。一番多い時にはなんと、犬猫合わせて11匹が一緒に暮らしていました。しかしこのところ、大家族は一人去り、また一人去り……
現在犬は、去年迎えた極小豆柴のモグちゃんを入れて4匹。最大7匹いた猫たちは、とうとう”最後”の1匹、メインクーンのチャーさんだけになってしまいました。
”最後”というのは、もう今後新しい猫を迎え入れる予定が無かったからです。自分たち夫婦の年齢を考え、猫の寿命を考えると、もう次の子を迎えることは無いだろうと思っていたのです。
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そんな私の心境に、ふとしたきっかけでちょっとした変化がありました。
我が家は保健所が割と近くにあるのですが、そこの駐車場で月に一度、保護犬猫の譲渡会が行われています。私はそこに、たまに顔を出していました。もちろん先に書いたように、もう新しい子を迎える気はありません。ただ可愛い子猫が見たいだけの、冷やかし半分といったところで足を運んでいたのです。
その日も私は、いつもと同じように譲渡会へ――
そこは猫と犬のスペースに別れていて、大きい子も小さい子もいます。
小さい子は、大抵兄妹で固まっています。怖いんでしょうね。
いつも猫は20匹位いるのですが、その日はコロナの影響でしょうか? 来ている頭数は少な目で、エントリーシートだけの子もいまました。
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しばらく子猫たちの可愛い仕草を眺めていると、「猫をお探しなんですか?」と、若い女性が声を掛けてきました。
その方は、譲渡会を主催している里親会の活動家のようで、聞けばその里親会は保護したり保健所から引出しをした猫を、あちこちのお家で一時預かりしてもらい、その子たちを集めて、時々このような譲渡会を催すのだそうです。
猫好き同士だけあって、私たちは色々な話をしました。これまで飼った歴代の猫たちのこと。去年立て続けに亡くなってしまった2匹のことなど。
お話の最後に私は、「人生最後の猫は三毛ちゃんがいい」と言いました。
実は三毛は、夫も私も思い出の子がいて、『とびきり綺麗な子がいたら会ってみたいね』と、兼ね兼ね話をしていたのです。
「毛色で命を選ぶのは間違えていますか?」
とその女性に聞いてみると、「それで生涯可愛がって貰えるなら、全然問題ありません!」という返事が戻ってきました。
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別れ際、女性は私の連絡先(LINE)を聞いてきました。
普段私はこんなとき、初対面の相手に自分の個人情報を伝えることはありません。そして里親会で連絡先を訊ねられたのも初めてです。しかしこの時は、その方が大丈夫だという予感がありました。私の勘は良く当たるのです。
正直に言うと、その時には既に、良縁があればもう1匹迎えても良いという気持ちになっていたのかもしれません。
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ほどなくして、わたしのスマートフォンにメッセージが届きました。
送信者はあの譲渡会で連絡先を伝えた活動家の女性です。
そこには三匹の子猫の画像が添えられていました。
キジトラ、薄い三毛、白黒――
どの子も、先日の譲渡会には来ていなかった子たちです。
三匹も迎えるつもりはありませんでしたが、ちゃんと希望していた三毛ちゃんが入っていましたので、早速、お見合いの日が決まりました。
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さて、そのお見合いの日のことです。朝突然に活動家の方から連絡がありました。
お目当ての三毛ちゃんが、当日になって急に高熱を出したのだそうです。
先方からは「やめた方が良いです」といわれてしまいましたが、病気ならば仕方がありません。
「その代わりに……」
と活動家の方が言いました。他の三毛猫を探してくれるそうです。
数日待っていると、また活動家の方からのメッセージが届きました。
我が家地方の端っこの方の農家さんには猫がよく捨てられるそうで、この春は出産ラッシュだったようです。
添えられた写真を見ると、――なんて可愛い三毛ちゃん!
小さくて柔らかくて三毛の柄がハッキリしていて、私はこれまで、そんなに綺麗な子猫を見たことがありませんでした。「この子だ!」と思いました。
夫にも写真を見せると「可愛いねぇ〜」と一言。夫は昔三毛を飼っていたそうで、思い入れがあるようでした。
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お見合いの日、出かけて行ったのは私一人です。
いました。あの写真の三毛ちゃんの子猫です。
その当日に、一時預かりのお宅から連れてこられたとのことで、ケージの中のハンモックで落ち着いた様子でした。
抱き上げてみると、キョロキョロはしますが、嫌がったりはしません。鳴いたりもしません。おっとりした子だなと思いました。
私は即断で、夫には事後報告です。
里親には59歳までしかなれない決まりで、私はギリギリアウト。しかし同い年の夫は幸い早生まれで、免許証のコピーをすぐに送ってくれました。
つまり、夫も即断ということです。
後で聞いた話ですが、子猫の ”曲がり尻尾” (尻尾の先が曲がっている)が夫のハート鷲掴みしたのだそうです。それはわが家の初代猫『みみこさん』と同じ姿でした。
子猫が家に来た日のこと。
ざーっと雨が降り、庭が輝きました。
だから命名――、美雨。 呼び名はみっちゃん。
現在推定3か月。体重1200g。
ご飯もよく食べ、人懐こいです。
美雨は多分、私が人生最後に迎える子です。だからきっと、あれは奇跡的な出会いだったんだろうな。
――追記――
美雨はコクシジウムを持っていました。コクシジウムは寄生虫の1つで、腸の中に卵みたいな状態でいて便で排泄されます。無症状の場合が多くて、免疫力が低下した時に発症します。下痢や嘔吐がその症状ですが、酷いと貧血栄養不足で亡くなる子もいます。
今は特効薬があり、一度飲ませると消えるのですが、私は来た日に出た便を持って獣医に行きました。
保護団体の方からは、コクシジウムがいたけれどもう消えたと説明を受けていましたが、念のため。
――そしたら居ました。沢山。
それからは隔離、トイレ、ケージの熱湯消毒、身体についてるかもな虫の駆除の為の毎日のシャンプー。
2回めの検査で、ようやく消えました。
あと一回、念のための検便をします。
我が家では歴代の猫たちは皆検査を受けていますが、幸い全員が陰性。美雨が初めての陽性でした。コクシジウムは一度消えても色々な理由で再発することもあるそうです。保護猫をお迎えになる方は、ぜひ病院で検査をなさってください。
――了――
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猫種:保護猫
飼主:ゆきねー
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――うちの子がうちにくるまで・次話――
ご応募をお待ちしています。
――うちの子がうちにくるまで・前話――
猫-8|ほっぷ
ずっと犬派でした。
大好きだった母子の犬を亡くし、もう犬は飼えないと思っていました。
「ねえ、ネコいらない?」
同僚の一言。
――猫も良いかな。
「ちいさくて、ふわふわ!」
こうして、ヤンチャな『ほっぷ』がうちに来ました。
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――うちの子がうちにくるまで・1話目です――
犬版のうちの子がうちにくるまでもどうぞ
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