撮影&文:miao
「どうして、始まりには終わりがあるのだろう? ずっと続けばいいのに」
大切なものをなくした時、誰もがそんな風に思うはず。
悲しみに凍えそうな、ある夜のことだった――
本当に、不意の出来事――
窓の向こうのお月さまを見ていたら、ふと私の脳裏に、”それ”が降りてきた。
それはまるで私の大切なalexが、こっそりと教えてくれた、おまじないのように思えた。
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――そのおまじないって――
1本の糸の端と端を結ぶと、輪っかになる。
出会いから別れが、一本の赤い糸だったとしたらどうだろう?
繋いだ結び目は、きっと二度とほどけないのじゃないかしら?
そのまるい輪は、ちいさな太陽みたいにあたたかく――
お月さまみたいに優しく――
傷ついたこころを、照らしてくれんじゃないかしら?
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私にはこの、まあるい輪っかが、alexとの全てのように感じられてならない。
空にはいつも太陽とお月さまが交替で、私たちを見守ってくれている。
出会いと別れも、同じなんじゃないかしら?
赤い糸のまあるい輪っかは、角がなくなりもう何も傷つけない。
ちいさくして胸にしまっておけて、いつでも取り出して、大きく広げることができる。
そして――、手のひらに乗せると思い出が温もりに変わる。
赤い糸の代わりに、親指と人差し指で、まあるい輪っかを作ってみましょうか?
その中を覗くと、輪っかのずっと先では、ほら――
私のalexが、こちらを見つめている。
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まるで『キツネの窓』の絵本みたい。
桔梗やさんに染めてもらった指の窓のように、そこには愛しいalexが見えている。
絵本と違っていることは、私は指を青く染めてなんかいないので、手を洗ってもその効果は消えまない。
輪っかを作れば、いつだって私のalexがいてくれる。
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――alexがいなくなって、3か月――
まだまだ、切なさと恋しさで涙が溢れる。
でも、alexのおまじないを知ってからは、ほんの少しだけこれまでと違う。
つらい最期を、出会いの日に繋いだだけで、痛みがすぅっと和らぐんだ。
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――愛しい存在を亡くして苦しむひとへ――
悲しみにひと呼吸できたら、どうか結んでみて欲しい。
別れと、出会いを。
「いつかきっとまた出会える」
そんな、確信のような想いを抱きしめて、いっぱい泣いて待てばいい。
あの子が、いい子でお留守番してくれた時間の、7倍くらいは待ってあげなくちゃいけないだろうか?
幸せの『おかえり』を言える日まで――
――了――
文:miao
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この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。
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