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【猫の保護/離乳食】猫のお世話って、まるで子育てみたいだよ ~犬派の僕が猫と暮らす理由|ひとつの命を拾うこと(10/10)~

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犬派の僕が猫と暮らす理由
f:id:masami_takasu:20180821093851j:plain撮影&文:紫藤 咲

1日に4回は食事を与える――
これが獣医さんに言われたことだった。

言われたノルマをどうやって達成するかということに、ぼくは頭を悩ませることになった。

休みのときなら、朝、昼、夕方、夜といった具合に、食事を確実にあげられるのだが、仕事をしている日はこうはいかない。日中は見守りができないし、自力で食べることができない以上、介助も必要になる。

一回の食事量がとても少ないから、与えるフードに苦心する。
離乳食を意識してミルクと混合し、カリカリをふやかす。

しかし、ミルクを入れると冷めてしまったときが問題だった。
熱いうちはいいのだが、冷めると固まって、器に張り付いてしまうのだ。
舐める力も弱いからなのか、上手に食べられない。
固まってしまったものを再びお湯で溶かす。これを何回も繰り返す。

あまりにも食べが悪いので、思い悩んだぼくはSNSのフォロワーさんに質問してみた。飽き性かもしれないよというアドバイスをもらい、獣医さんで購入した缶詰とカリカリとミルク以外のもの、市販のウェットフードも試してみることにした。

ペットショップ売り場で子猫の離乳食用を購入する。
一日の中で同じ味を繰り返さないように、今回はしらす入り、その次はまぐろといった具合に、ローテーションを組む。

それでもねこさんは自力では食べられなかった。
小さなしらすですらちゃんと食べられないし、毎回、上っ面を舐める程度で終わってしまう。

なんとか食べさせたい。一口でも多く、食べてもらいたい――
その想いから、指の上に一口分のフードを乗せて、鼻先へ持っていく。この方法ならば、皿の上に乗せた物を直接食べさせるよりは口に入れてくれた。

この作業を根気よく繰り返した。それでも直径10cmの皿の半分くらいの量しか食べさせられなかった。

調子がよければカリカリフードもふやかさないで食べられるねこさんを、不安が残りつつもカプセルに入れて出勤する。

出掛けるときは念のためにカリカリフードを一山、一緒に入れておく。
帰宅してから食べた量を確かめる。

予想よりもはるかに食べていない皿を見て、肩を落とす。
半分食べればいいほうだった。出掛けるときに置いていったものがほとんど減っていないことのほうが多かった。

なぜ、こうも食べられないのか。普通なら、もっと食べるはずだ。
食べてくれないことに焦りを感じ始めてはいたから、上顎にくっつけるようにして少量ずつ食べさせた。

しかし、口の中に無理やり入れることで、食べること自体を嫌がるようになるよというアドバイスをもらったため、この方法を毎回やることはやめた。

こういった状態であったため、食事の時間も長くなったし、規則的な時間ではあげられなくなっていた。

そこで思い切って生活そのものを変えることにした。
仕事で留守になってしまう間は、寝てもらう代わりに、自分が家にいる間に活動してもらう――昼夜逆転の生活へシフトさせることを思いついたのだ。

ねこさんは夜行性だから、昼夜逆転生活でも支障はないはずなのだ。
問題はぼく自身。昼夜逆転生活はかなりの負荷が掛かるだろう。
しかし、そんなことを気にしている場合ではない。だって、ぼくが彼の生死を握っているのだから。

 

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ぼくがなぜ、こんなふうに思ったのかは、「生きることを諦めている」というハットリくんの言葉があったからだ。

彼はこの言葉の後に、こんなふうに続けた。
「おまえに会うまでは、生きることを間違いなく諦めていたよ。まあ、今は少しだけ希望が持てるってだけで、生きることに意欲的になったとは言えないけどな」

ぼくに会うまでは生きることを諦めていたねこさん。
しかし出会ったことで多少なり希望を持ったと言われたら、そりゃ、やるしかないわけで。

さらにハットリくんは続けた。
「こいつの運命を変えられるのは、たぶん、おまえだと思う」
「なんか、含みのある言い方するなあ」
「伝えれば、未来は変わるからな」

ハットリくんはいつもこうだ。なにが起きるとか、どうなるとかは言わない。
漠然としたことだけを伝えられるぼくからしたら、疑問しか残らない。

しかし、こんな彼のスピリチュアルな言動によって、今までなにかしら救われたり、ハッとさせられたり、気づいたら前に言われていたっけなと思った経験がある。だから、彼がこういったからには、なにか理由があるのだろうという予測はついた。

しかし、彼のスピリチュアルな忠告は、たしかに胸に引っ掛かりはしたものの、危機感という形では残らなかった。

もっと深く「死」というものを意識していたなら、ねこさんをつらい目に合わせるようなことにはならなかったかもしれない。

最初に保護したのだって、彼を「死」から守るためだ。
車、カラス、病気といったものから遠ざけて、少しでも長く生かす。いや、きちんと大きくして、生きていってもらうのが目的。

いい人に貰われて、しあわせな猫生を送ってもらう。そのためのお手伝いをするために、短い期間でも一緒に過ごそうと思ったのだから。

こうして、ハットリくんの言葉を受けて、拾ったときよりも確実にねこさんの世話に真剣になるぼく。

朝の五時と帰宅六時、夜十時、夜中二時にごはんを与え、日中は一山置いて出掛けるという具合に、食事の回数を増やす作戦に出る。
一気に食べられないのなら、体に取り込む量を回数を増やすことで増やそうという計画だった。

けれど、夜中の二時に起きることはかなりつらかった。
夜の十時くらいに一度寝て、時間になったら起きる。起きてみると、カプセルの中でうんちをしてしまっていることもあった。

手足がうんちまみれになり、汚れた彼を拭いたり、うんちのついたものを洗濯したりで、寝る時間が三時半をすぎていたこともしばしばあった。

翌朝は五時半起床だから、睡眠時間はほとんどない状態で出勤。それこそ、人の赤ちゃんを育てるのとなんら変わらない生活を送っていた。

こういう経験をしてみて、ぼくは改めて思うことがある。
世の中のお母さんたち、すごいなと。

こんなことを何か月も繰り返して赤ちゃんを育てるんだと思ったら、頭が下がりっぱなしになる。本当に大変なことをしているんだと実感した。一週間程度でもつらいのに、不平不満も言わずに、彼女たちはやりきる。

ぼくの母もそうだったのだろう。赤ちゃんに対する愛情なくしては、絶対にできないことだと痛感したのだ。

 子育てって大変よ!

そう、思わず口に出してしまいたくなるお母さんたちを思いながら、ぼくは寝不足の日々をなんとか乗り越えていた。

お母さん方の偉大さを噛みしめて――ぼくはまだまだ、子育ての大変さをほんの少しだけ、かじったにすぎなかったから。

※2番目の写真は、膝の上での様子。
お腹を触ると小さな手で指を掴んで噛もうとする元気なときも時折あった。
ほとんどは寝て過ごしている状態で、動きも少なかったし、とにかく鳴き声を聞いたことがなかった。

(余談)
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――ひとつの命を拾うこと(10/10)おしまい――
――次のクールに続きます――

作:紫藤 咲
 

――次話|次章の第1話です――

本話から新シリーズの開始です。

先住犬ひなさんと、ねこさんのお近づきチャレンジの再開
しかし、吠えまくるひなさん。
――上手く行かない。

引き離そうとするぼくに、ハットリ君が言う。
「まぁ、待て。ちょっと見てみようぜ」
ひなさんと、ねこさんは、家族になれるのか?
そして彼は、遂に”運命の一言”を、ぼくに告げるのでした。

――前話――

ついにその男がやって来た。
友人であり、猫飼いの水先案内人にして、霊的能力をもつ男――、ハットリ。

「なんか、こいつさあ。目がヤバイよね」
言いたい放題の、口の悪いハットリ。
そして彼は遂に、”運命の一言”をぼくに告げるのでした。

まとめ読み|猫さん拾いました ②
この記事は、下記のまとめ読みでも読むことが出来ます。

週刊Withdog&Withcat
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。

――この連載の第1話です――

ねこさんを家に連れて帰った、ぼく。
まずは先住犬とのご対面、なのだが――
――あかーん
次は、お腹のすいたねこさんにミルクを――
――ひぃっっっ
そして、次は排泄――
・・・

分からないことだらけ。
こうして1日が過ぎるのでした。
頑張れ新米飼い主!

 犬派の僕が猫の多頭飼いを始めた理由

運命ってあるのだろうか?
だとしたら、今回がきっとそうだろう。
きっかけは、1枚の画像――
子猫が写っていた。
『もらう?』
友人のハットリ君が訊いてきた。
――もしも、ぼくがもらわなければ?
『保健所行き』
ぼくの心臓はバクバクだった。

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【まとめ】ある日突然、猫を拾ったら?

捨て猫にはある日、突然遭遇するもののようです。
いざ遭遇してしまったら、どうしたら良いと思いますか? 
体験談をまとめました。

「助けてあげたいけど、うちで飼えるのかな?」
そう思う方々に「大丈夫だよ」と、背中を押してあげる体験談があるといいなと思ってこの記事を作成しました。

もちろん、ハッピーエンドのお話ばかりではありません。
しかし、色々なケースを知ることで、本当に安心ができると思うのです。
読んでみてください。
どの記事にも、愛情が溢れています。

――作者の執筆記事です――

 

 

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