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【猫の肺炎】お支払いの時間ですよ! ~4章(12/12)~ 【 諭吉さんの人数は?】

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犬派の僕が猫と暮らす理由|4章 ひとつの命を感じること
犬派の僕が猫と暮らす理由

撮影&文|紫藤 咲
 

ねこさんが無事退院することになり、肺炎からの虫駆逐ミッションも完遂となったぼくを待ち受ける最大のできごと。それはお支払である。

ぼくが初めて先生にねこさんを診せに行ったとき、こう言われた。

「猫は犬に比べたら、お金はあまりかからないよ」

しかし、これはあくまで健康が前提の話である。ねこさんがこれほど弱っておらず、問題なくスクスク育っていたならば、通院することも、入院することもなく、体重が増えたら予防接種を二回打つ程度で済んだであろう。

その後大きくなっても、病院へ行くのは具合が悪くなったときと、年に一度の予防接種一回だけなのだから、毎月フィラリアの薬(蚊にさされ、虫の卵が体内に入ってしまうと、心臓に巣食って爆発的に増えてしまう病気の予防薬)を飲ませなければならず、狂犬病や混合ワクチンの年一回の接種が必要な犬に比べれば、圧倒的にお金はかからない。

 

もちろん、外に出る猫や犬であれば、ノミやダニの駆除の必要になるわけだから、お金はさらに必要になる。それに加えて、毛の長いうちのひなさんのような犬種の場合はグルーミング費用も必要となる。

ちなみにひなさんは二か月に一回、美容院できれいにしてもらっている。
爪切りと肛門腺(肛門のところの袋にあぶらが溜まる。小型犬は自分であぶらを排出することが難しく、溜まるとかゆくなるため、おしりを引きずる。

炎症反応が出てしまうこともあるので、一月~二月に一度はこのあぶらを人為的に出してやる必要がある)のお掃除も、ついでにしてもらっているのだ。

今回のねこさんの通院なのだが、うちにいた三週間という期間では、平均すると三日に一度は病院へ行っている。良心的な先生のおかげで、診察料を割り引いてもらっていたけれど、それでも千円単位の出費が続いた。

ここから考えての入院費用。まだ、入院が本当になるとは思っていなかったころは二十万なんて冗談で言っていたものだが、現実化してしまうと高額費用に頭を抱えてしまう。人間の医療制度のように、一月の医療費が高額になったときに、一定額のキャッシュバックがあるような仕組(高額療養費)もない。

実際、入院になってから動物保険に加入しようかと悩んだほどだ。

ひなさんの小さかった頃も保険加入を考えたが、当時は今の保険よりも厳しかったために、断念した。しかし、最近はいろいろな保険会社があり、金額設定も選べる仕様になっていた。ぼくの通っている獣医さんはアイペット保険を使うことができる。保険証を見せれば済むらしい。

月額二千四百円。捻出できない金額ではないことを考えればお得かもしれない。
ただ、健康である場合は使わないだろう。実際の獣医さんへの支払よりも保険料の支払いのほうが多くなる可能性もなきにしもあらずであるからこそ、熟慮して加入すべきだと考え、今はまだ未加入である。

 

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さて、実際に動物を飼っている方なら周知のことと思うが、治療費はいったい、どれくらいかかるのか。ここである。

ぼくの通う獣医さんでは注射一本千五百円、レントゲン五千円。目薬一本五百円、混合ワクチン(ひなさんの場合)六千円、フィラリアの薬一個八百円、回復期用缶詰三百九十円、ミルク缶二千三百円、診察料五百円~千円、宿泊費一泊二千円という相場になっている。

ただし、個体の大きさ、体重によって、注射の金額は変わってくるので、あくまで、ぼくが知っているのはうちの子の場合のお値段だ。

入院中のねこさんは皮下点滴、宿泊、酸素室など、やってもらったことが多岐に渡っている。総合した金額を一日一万五千円と考え、十二日間でいくらになるのかを計算する。ひとまず、足りないと困ってしまうので多めに用意して、二十人の諭吉様にお越しいただいた。

そして、ついにお支払いの刻。受付で名前を呼ばれ、ぼくはいそいそとカバンから諭吉様、二十人がいらっしゃる銀行封筒を取り出した。緊張に顔がこわばるぼくに、ゆっくりと受付にいる先生の奥さんから金額が告げられる。

「は?」

真面目にそう、言葉が飛び出たし、目が真ん丸になった。一瞬、夢かと思った。
聞き間違いか? 信じがたい。そう思って、もう一度、金額を聞きなおした。

「三万三千八百円です」
「本当ですか?」
「本当です」

諭吉様、四人だけ?

二十万予想が四万は驚いたどころの話ではなかった。

確かに十万くらいで抑えられないかなと思ったのは確かだ。一桁なんてありえないだろうが、もしかして、そんな金額にならないかなと、ちらっと頭の隅で考えたことも正直に言おう。

しかしである。四万なんて、誰が想像できただろう。

受付の奥さんに四万円を渡し、おつりと明細をいただく。

「あの……本当にいいんですか? こんなに安くて……」
「ええ。まだ、飼い始めたばかりですし、これからもお金はかかると思いますから。それに一時は危なかったんですから。大事にしてくださいね」
「はい、ありがとうございます。お世話になりました」

良心的な先生であることは昔から知っているし、うちの両親に話をしたときも、あの先生がそんな高額を請求するわけがないじゃないかと一笑されたが、それにしても安すぎる。

車に戻ってから明細を見る。

診察料千円。注射、点滴三千円×十二回(三万六千円)、内服薬(虫下し)千五百円。便検査五百円×四回(二千円)、レントゲン五千円。入院費二千円×十二回(二万四千円)、値引き三万三千五百円、消費税二千八百八十円、内金五千円。合計三万三千八百円。

「値引き、すげぇ……」

思わず漏れた声だった。

 

ひなさんも、ねこさんも普段の診察から値引きや診察料なしなどよくあったが、それにしても大きな値引きである。ひどくねじまがった見方をしたハットリくんには

「やっぱり医療ミスだったから、値引き大きくしたんじゃね?」
なんて言われたものだが、実際に値引きがなかったら、八万くらいはしていたのだ。

ただ、ねこさんが三百五十グラムしかない、とても小さな体であったため、使用する薬の量も少なかったからこの程度だったし、先生が普段から利益を大きく上乗せしない人だということからこの金額になった……ということは確かである。

実際、他の獣医さんにかかっていた人に、歩いて行ける獣医さんに通っていた時は注射一本五千円した、ここは安いという話も聞いたことがある。それにねこさんが入院中、会社の敷地内で野良猫を轢いてしまったハットリの会社の社長さんが、獣医さんに瀕死のねこを連れて行って入院したときは、七万円かかったといっていた。

そのまま亡くなってしまうという残念な結果だったのだが……

自分の想定よりもかなりお金はかからずに済んだけれど、実際のところ、動物の病院は保険が適用されないため、圧倒的に高額である。それを差し引いても保護するか、否か。悩ましいお金の問題。

しかしながら見返りは大きい。お金はかかっても、それ以上のものを自分が手にできるとしたら……経済的に余裕があるのなら、いや、なんとか最後まで面倒をみるだけの経済的な見通しがあるのなら、踏み込んでみるのも悪くないものである。

【決意の日】
猫さん_漫画

現在、多忙を極めていて、漫画が白黒になってます。時間ができたときに差し替え予定でいますので、お待ちいただければと思います。

ええ、なにせ車の窓ガラスが割られるという不運に見舞われまして(笑)

そんなわけで、エッセイも滞ってしまっておりますが、紫藤は元気でやっております。

今後も変わらず応援いただけると幸いです。

 

――ひとつの命を感じること(12/12)おしまい――
――次の章(最終章)に続きます――

作:紫藤 咲
 ▶ 作者の一言
 ▶ 紫藤 咲:猫の記事 ご紹介

――次話――

本話で4章はおしましです。
しばらくお休みをいただいてから、最終章である第5章をお送りします。
お楽しみに。

――前話――

ねこさんのお腹の中に虫がいる――
退院はできたものの、次は虫との闘いだ。
検索でも調べてみた。
食欲不振、腹部のふくらみ、子猫の発達不良、体重減少
――わ、思い当たることばかり。
ぼくは青ざめた。

まとめ読み|猫さん拾いました ⑧
この記事は、下記のまとめ読みでも読むことが出来ます。

週刊Withdog&Withcat
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。

――本クールの第1話目です――

ねこさん不在の寂しさを救ってくれたのがSNSでの交流だった。
そこで想うのが『引き寄せの法則』だ。
『強く願ったことが叶う法則』である。
みんなが祈ってくれたら、きっとその思いは――

――本連載の第1話です――

運命の日――
ぼくは猫を拾った。

犬派だった著者が、猫を拾ってからの悪戦苦闘を描くエッセイ。
猫のいない日常に、飼ったこともない猫が入り込んでくる話。
はじまりは、里親探しから。

――当然、未経験。
「ぼくらの物語はこの日から始まった」

 犬派の僕が猫の多頭飼いを始めた理由

運命ってあるのだろうか?
だとしたら、今回がきっとそうだろう。
きっかけは、1枚の画像――
子猫が写っていた。
『もらう?』
友人のハットリ君が訊いてきた。
――もしも、ぼくがもらわなければ?
『保健所行き』
ぼくの心臓はバクバクだった。

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【まとめ】ある日突然、猫を拾ったら?

捨て猫にはある日、突然遭遇するもののようです。
いざ遭遇してしまったら、どうしたら良いと思いますか? 
体験談をまとめました。

「助けてあげたいけど、うちで飼えるのかな?」
そう思う方々に「大丈夫だよ」と、背中を押してあげる体験談があるといいなと思ってこの記事を作成しました。

もちろん、ハッピーエンドのお話ばかりではありません。
しかし、色々なケースを知ることで、本当に安心ができると思うのです。
読んでみてください。
どの記事にも、愛情が溢れています。

――作者の執筆記事です――

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