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【猫と飼い主】告白します。私のひがみ根性 ~二人の未来を紡いでいこう(7/9)~

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私の空、マナ 28話
私の空、マナ_扉

撮影&文|あおい空
 

前回はマナのお風呂のお話を挟みましたが、今回は私のひがみ根性のお話に、戻りたいと思います。

予め申し上げておきたいのですが、このお話は、猫全般にまで及ぶことになると思います。そして反論も覚悟の上で書きたいと思います。

私は若葉マークの猫初心者だけに、猫への思いも若葉マークだと思っています。
だから、皆さんが私の考えをどう思うのか知りたいです。

こんな風に回りくどく書くのには、理由があります。
これまで私はマナの成長に伴って、保護猫を育てている方々から、沢山のアドバイスをいただいてきました。はじめのうちは、何を言われているか分からないことも沢山ありました。

しかし今振り返ると、『本当にそうだな』と思うことがとても多いのです。
だから、叱られたとしても、色々と教えていただきたいと思っているです。マナと私の未来の私のために。

 

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ここで告白をすると、マナが猫エイズに感染している難しい状況の中で、私は迷いと不安でいっぱいです。しかし私は飼い主として、これから様々な決断をしていかなければならないと思います。それは私に課せられた責任であるとともに、もしかすると後悔をする権利と言い換えられるかもしれません。

ツイッターで保護猫さん関連の書き込み、特に保健所収用の犬猫や、保護団体の募集を見るにつけ、私はいつも自分の胸に手をあてて考え込んでしまいます。
そこに書かれているのが、
『猫エイズウィルス陰性』『猫白血病ウィルス陰性』という言葉です。

このお話しを読んで下さっている方々は既にご存知だと思いますが、マナは猫エイズウィルスに感染していると診断されています。医師から診断結果を聞かされた時、私は泣きながら言いました。
「月齢1ヶ月半、400グラムで拾ったマナがなぜ?」と――

それ以降私は、『猫エイズウィルス陰性』『猫白血病ウィルス陰性』の表記を見るたびに、マナが何かの罪を背負わされていて、それを責められているように感じるようになってしまいました。

そして、その言葉を書いた方々に、こう言いたくなってしまうのです。
「こんな小さな命に、一体何の罪があるの?」と――

 

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実は私は、私が尊敬している、猫のスペシャリストさんの里親募集ツイートにもショックを受けてしまいました。そこには『猫エイズウィルス陰性・猫白血病ウィルス陰性』の文字があったからです。弱者である捨て猫たちに寄り添って、保護をしていらっしゃると思っていた方が、マナを責めているように感じられました。

「一体私は、誰を信じれば良いの?」
そう思いました。

しかし私はすぐに、そんな私の考えこそが、ひがみ根性そのものであると気づかされることになります。

後になって知ることになるのですが、スペシャリストさんは、ご自身がエイズウィルス陽性の猫さんを引き取り、愛を持ってお世話していらっしゃる方でした。そして後にツイートで、猫エイズウィルス陽性の子を引き取った経験がある方々に、『他の猫にエイズが感染したことはありますか?』とも問いかけていらっしゃいました。

私はその問いかけを読み進めるうちに、目を見張りました。そこにはスペシャリストさんの問いかけに対して、隠すことなく『うちでは感染したことがない』と、答えていらっしゃる方々が何人もいらっしゃいました。

驚きました。堂々とエイズ感染の猫と暮らしていると言える方々が、こんなに大勢いらっしゃるのかと。

私は自分が情けなく思いました。なぜなら私はその頃、マナがエイズウィルスに感染していることを隠していたからです。私は神様に、「マナの病気のことを言う勇気を下さい」と言っている人間だったからです。

その思いに至り、初めて私は自分の真実の姿に気が付きました。
実は私自身こそが、猫エイズウィルス感染に偏見を持っているのだということに。

この考えに至ったとき、私は自分の考えを新たにしました。
『猫エイズウィルス陰性』も『猫白血病ウィルス陰性』も、大事なことなんだと。
猫を譲度する方々にとっても、これから猫と暮らそうとしている方々にとっても、命に関わる話はしなければならないこと。

それは誰か(例えばマナや私)を非難するものではなく、極めて冷静に語られなければならない事実なのです。

私は自分自身のひがみ根性のせいで、見えるものに目を閉ざしてしまっていたのです。

 

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私にひがみ根性が芽生えたのは随分と前のことのように思います。

父を早くに亡くした私は、大学進学を諦めざるを得ませんでした。母親の手ひとつで高校を出してもらったことには感謝をしています。しかし、1番の理解者であった父はすでにおらず、苦労している母に甘えることが出来なかった時代が、私という人間を作り上げたように思います。

そこで培われたアイデンティティーが、まずはひがみ根性。そして次に甘えです。
所謂、私を取り巻いていた不幸な境遇というのは、人が私に対して強い言葉(それは時にお説教であったり、叱責であったり、強いアドバイスであったりします)を言えない状況を作るのですね。

そしていつの間にか、私がその境遇に甘えるようになっていたのです。

自分自身の欠点に気が付いた私。
そこからは、マナのエイズウィルス感染という事実に、正面から向き合っていこうと決めました。それはとりもなおさず、自分自身との闘いでもありました。

私は今、私を蝕んでいた偏見は克服できたと思っています。だからこそ、この文章を書いています。それができたのは、マナと暮らすうちに培われた、マナへの愛があったからだと私は思っています。

愛は不変と言いますが、最初から不変なものなどありはしません。世話をし共に時間を過ごすことによって、愛は育つものなのだと思います。
そう、『愛は成長するもの』なのです。

ここまで成長できた私ですが、その私の心境の変化とは別に、大きな問題はまだ私の目の前に横たわっていました。

それは今も抱えている、高い壁。
避妊手術です。

このお話は、次回と次々回でお話しをしたいと思います。

 

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さて、このお話の最後に、1つだけ感謝の言葉を伝えたい方がいます。

以前に私が悩んでいる時に、励ましになるエッセイ『猫さん拾いました』(現在は改題していて『犬派の僕が猫と暮らす理由』)を書いて下さった、紫藤咲さんです。

実は私は、マナと暮らし始めた1年後の9月8日、最後の動画を残してツイッターを離れようと決意していました。理由は、仕事柄つきまとう個人情報にまつわるリスクなど色々でしたが、もっとも大きな理由は、やはりマナでした。

今マナは、エイズに感染してはいますが、発症はしていません。
しかし、もしも発症したらどうするか?

私はそれを冷静に受け止める自信がありませんでしたし、エイズに苦しむマナの姿を、絶対に他人に見せたくないと思っていました。それならば、マナが元気な時にツイッターから去った方が良いと思ったのです。

その当時は、やがてアカウント自体も消すつもりでした。
しかしそれから2ヶ月が過ぎ、私の帰りを待ってくれている方が、最後の動画にコメントもして下さっていて、なかなか決心がつきません。

以下がその最後の動画です。

 

 

そんな時、また助けられたのが、紫藤咲さんでした。
私はある小説サイトで、紫藤さんが発案した『猫スキー』(猫スキーさん寄っといで!)という企画に参加していたのですが、紫藤さんを募って応募した私の作品へに対して、紫藤さんがコメントを寄せてくださいました。

それは『猫の名前の由来』というテーマで、マナのことを書いたときでした。
紫藤さんはこう書いてくださいました。

『神様が結びつけた二人の出会いを、どうか多くの方に見守って頂ければと思います』

それを読んだ時、涙が流れました。応援してくれる人がいたじゃないかと。

「あたたかな、動物好きの方々の元に帰ろう」
そう思いながら私は、マナのいるアカウントへ帰ったのです。

『お帰り』
そういって迎えて下さった方々のやさしさに触れて、私はずっと泣いていましたね。

「応援してくれる人がいるから頑張れる、マナと生きていく!」
この場をお借りして、皆さんに感謝を伝えたいと思います。

本当にありがとうございました。

 

――二人の未来を紡いでいこう(7/9)つづく――

作:あおい空
 ▶あおい空:記事のご紹介
構成:高栖匡躬、樫村慧

――次話――

ある日私は、医師に手術の話を持ち掛けてみました。
すると医師は、マナの麻酔の心配を先にしてくれました。
以前は手術を勧めていたはずなのに。
マナと私を取り巻く世界が、変わり始めていました。

――前話――

猫のお風呂はどうしていますか?
「うちは年に1回美容室へ行くだけ。猫は自分で体を舐めてきれいにする動物だから、それでいいと思う」というのが、あるネコ友さんのご意見。
しかし私は、マナをお風呂に入れてあげたいと思いました。

週刊Withdog&Withcat
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。

――この章の1話目です――

マナがもう外にいかないように、わたしは窓の網戸を締めました。
「危ないよマナ、車来るよ」
網戸越しに外を見るマナに、囁き続けた1カ月。
マナは何かが変わったようでした。

――この連載の1話目です――

初めての一人暮らしで選んだのは、長屋風の安い物件でした。
テレビも洗濯機もなく、私のボンビー生活がスタートしたのです、
気づけばそこは、不思議なアパート。愛すべき隣人たち。
でも、2年が過ぎた頃にはもう――
私の淋しさは限界でした。

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