犬派の僕が猫の多頭飼いを始めた理由
ブログタイプのエッセイ作品で、面白いことが起きた時だけの不定期更新となります。
どうぞお楽しみください。
猫の多頭飼いをしてみたい|多頭飼いは初めてだけれど、大丈夫だろうか?|経験者の体験談を読んでみたい
ひとまず手術は成功
2018年10月1日。
手術を終えたライにぼくは会いに行った。
骨折した左足は肌が見えるまで毛が刈られた状態で、糸で縫われている。
舐めるといけないのでエリザベスカラーをつけたライは入院時に比べればずっと元気そうに見えた。
抱っこをすると震えていて、待合室のざわつきも落ち着かない様子だった。
それでも彼が息をしていてくれていることがぼくはとてつもなくうれしかった。
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ひとまず手術は成功した。
彼の命はつながったことに安心をして、この日は帰ることにした。
それでもやはり不安は残った。
もう安心のはずなのに目をつぶると何度も彼が飛び降りる瞬間を思い出すのだ。
先生はやれるだけのことはやったと言ってくれたのに、今後また同じことが起きたら今度こそ命はないという恐怖に苛まされる。
病院が休みで彼に会えないから余計に不安に襲われたのかもしれない。
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しかしそんなぼくの不安を吹き飛ばすようなことが起きた。
2018年10月3日。
手術から2日後のことだ。
いつものように仕事を終えて彼に会いにいったぼくを、診察室で出迎えてくれたライ。
アシスタントの女医さんに連れて来られたライが、ぼくを見ると近づこうとしたのだ。
エリザベスカラーの下から手を差し入れて、彼のほほを撫でる。
嬉しそうに目を細める彼の頭に顔を近づけた。
喉を鳴らして喜んでくれる彼に心の底から安心した。
でも生きている
診察台で横になる彼を抱きしめるようにしながら、先生の診断を聞いた。
関節がつぶれているから金属を入れてある。
金属を抜くことはつぶれた関節部分が炎症を起こしてしまう可能性が高いため。おそらく一生できない。
歩けるかどうかもわからない。
足が伸びきってしまう可能性がある。
仮に歩けたとしても障害は残るかもしれない。
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「でも生きてますから」
「そうだね。4階の高さから飛び降りて骨折だけで済んだのは奇跡的だと思うよ。2階の高さでも死んじゃうからね。胸がつぶれて息ができなくなって亡くなるケースもあるから、この程度で済んだことがまずすごいよ」
ライが左足から着地したことで胸を強打せずに済んだのが幸いしたのだと先生は言う。
もしも前足からだったらば衝撃に耐えきれなかった――と思うと息をするのが苦しくなった。
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だけどきっと元気になる。
きっと歩けるようになる。
きっと、きっとジャンプだってできるようになる。
元通りにはなれないかもしれないけれど、大丈夫。
なんとかなる!
なんとかなるよ、ライ!
肺炎で入院したときもそうだった。
ライは頑張り屋さんなのだ。
生きる強さを持った子なのだ。
だからきっと――!
はやく帰っておいで
毎日、毎日彼に面会に行った。
ちゅーるを持っていくと喜んで舐めていた。
10月6日になると自力で立ちあがって歩けるようになった。
とはいえ、長い時間は歩かせられない。
ムリをすれば障害が残る可能性があるからだ。
トイレは自力でできるまでに回復した。
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翌日、ひなさんを連れて面会に行くと彼の表情がとても穏やかなものに変化した。
彼にとって親と一緒の存在である彼女に会えて、ことさら嬉しかったように見えた。
はやく、はやく帰っておいで。
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2018年10月14日。
抜糸も済み、経過も順調だったため、ライは退院することができた。
だけどこの日から一カ月もの間、彼はケージ生活を強いられることになる。
歩けるようになるための試練はまだ続くことになったのだ。
病院の診察室にて
――ねこさん、増えました・つづく――
作:紫藤 咲
▶ 作者の一言
▶ 紫藤 咲:猫の記事 ご紹介
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――次話――
本作は不定期で、その時の様子をほぼリアルタイムでお送りする、ブログタイプのエッセイです。
――前話――
ライをかかりつけの獣医さんに診てもらった。
骨折しているのは素人のぼくの目にもわかった。
即時入院。48時間が勝負なのだそうだ。
急性期を乗り越えれば、手術ができる。
ツイッターに書いた。
たくさんの人に祈ってもらおうと思った。
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この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。
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――本作の第1話目です――
運命ってあるのだろうか?
だとしたら、今回がきっとそうだろう。
きっかけは、1枚の画像――、子猫が写っていた。
『もらう?』友人のハットリ君が訊いてきた。
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ぼくはやがて白になる
大切な人を亡くすと、人間はひとつひとつ、何かを失っていくそうだ。
まず、その人の声が思い出せなくなるらしい。
それってどんな気持ちかな?
その次に、顔を忘れていくらしい。
そうしていつか、何もなくなるのかな?
あなたの心から消えたくないな――
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犬派の僕が猫と暮らす理由
運命の日――
ぼくは猫を拾った。
犬派だった著者が、猫を拾ってからの悪戦苦闘を描くエッセイ。
猫のいない日常に、飼ったこともない猫が入り込んでくる話。
「ぼくらの物語はこの日から始まった」
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紫藤咲の執筆作品