猫の話をしようか

なかなか聞けない猫の話。こっそりおしえる猫の話。

いつか見たおもちゃと、消えない絆 ~銀の鈴/虹の橋の猫(第7話)~

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イラスト&文:水玉猫

悲しみが形を変えても、その人は、虹の橋に行った雉白もようの猫を思わない日はありませんでした。

その日は、昨日までの雨も止み、とても気持ちの良いお天気でした。

どこまでも青い空の下を歩きながら、その人は思わず知らず、猫の好きだった歌を小さく口ずさんでいました。

心の中で猫もいっしょに歌っているようで、なんだか楽しくて、このまま家に帰るのがもったいないような気がしました。
それで、少し遠回りをして、木立のきれいな公園の中を通って帰ることにしました。

公園の木立を渡る風も、さやさやそよそよと、空からの歌をうたっているようです。

いきなり、目の前の植え込みがガサッと音を立て、その人は驚いてうたうのをやめました。
見れば、その植え込みの前に、猫のおもちゃが落ちています。

「えっ?」

その人は、一瞬、目を疑いました。

そのおもちゃは、虹の橋に行った猫のために、昔、手作りしたおもちゃにそっくりだったのです。
猫も、そのおもちゃが大のお気に入りでした。
だから、猫を弔った時に、いっしょに猫に持たせてやったのです。

それなのに、どうして、ここにあるのだろうと、その人は不審に思いながら、おもちゃを拾いあげました。

「みゃぁ」

仔猫の鳴き声がして、その人は振り返りました。

小さな仔猫が、見上げています。
まるで、そのおもちゃをかえしてほしいとでもいうように、仔猫はまた「みゃぁ」と鳴きました。

植え込みの影に、段ボール箱が捨ててあります。
ダンボール箱は、中からこじ開けたようになっていました。
きっと、段ボール箱に入れられて捨てられた仔猫が自分で箱を開けて、出てきたのでしょう。

その人は、仔猫を抱き上げました。
仔猫はあたたかくやわらかで、その人の腕の中でゴロゴロと喉を鳴らしました。

「いっしょに帰る?」

その人は、仔猫にたずねました。

「みゃぁ」

仔猫は、うれしそうに返事をしました。

その人は、そのまま仔猫を抱いて、いっしょに家に帰りました。

仔猫は捨て猫から飼い猫になり、その人には猫と暮らす幸せな日々がまた戻ってきました。

でも、ひとつ、不思議なことがありました。
あのおもちゃを、二度と見ることがなかったのです。

あの日、仔猫といっしょに家に持って帰ってきたのか、公園に置いてきたのかさえも思い出せません。

その人は、雉白もようの猫が好きだったあの歌を歌いながら、思うのです。

――きっと

あのこが虹の橋に旅立つ時、このこを、私に託して行ったんだ、と――

 

――銀の鈴/虹の橋の猫(第7話)・第1章のおわり――

――次章・歌うたいの猫につづく――

作:水玉猫

――次話です――

――前話です――

――連載のはじまりはこちらからです――

 

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