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【猫の肺炎】『引き寄せの法則』って知ってる? ~4章(1/12)~ 【元気玉作戦】

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犬派の僕が猫と暮らす理由|4章 ひとつの命を感じること
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撮影&文|紫藤 咲
 

「死ぬか生きるか賭けるなら、死ぬほうに賭けたほうがいいと思う」
先生からそう言われた翌日は、病院が休診日だったため、ねこさんに会うことは叶わなかった。

ねこさんが不在になった家の中は、ひどくがらんとしていて、広すぎた。
そのため、ぼくの気持ちも空虚なものになりつつあった。

ぼくの指先も、家の中も、ねこさんのフードの匂いにあんなにもまみれていたはずなのに、ねこさんがいなくなった途端、その匂いが消えてしまう。
それがとても悲しかったのだ。

それに、だ。現状のねこさんの動画はどんなに元気そうに見えても、見る人が見れば、視点が定まっておらず、苦しい――、とわかるようなのだ。そう思ったら余計に不が消えてくれなかった。

こんな状況のときにぼくを支えてくれたのは、SNSで交流のあるフォロワーさんたちだった。ぼくのネガティブな言葉を拾ってくれた皆さんに、ぼくはたくさん励まされたのだ。

『ねこさんがいつ戻ってもいいように、いない状態でも普段と同じようにご飯を用意したり、水を替えてあげたりするといいよ。いなくても彼はきっと落ち着くから』というアドバイスをいただいてからはきちんと水を替え続けた。

顔も知らない、見ず知らずのぼくを親身になって励ましてくれる、この想いをねこさんに届けたいと思った。彼の懸命に生きる姿を何度も動画再生して、観たからこそ、この思いはより一層強くなった。

ところで、『引き寄せの法則』というものをご存知だろうか?
この法則については、かなりスピリチュアルな話になるので、信じる、信じないが両極に分かれる。こんな話をリアルですれば、コイツ、どうかしていると思われるような話でもある。ゆえに、今から話すことも半分くらいは眉唾ものだと思って聞いてほしい。

ぼくがこの法則を知ったのは七年ほど前のことである。もちろん、この話をぼくに教えてくれたのは、例にもれず、スピリチュアル=ハットリ氏である。

「引き寄せの法則ってのがあってな。面白いから、知らないなら調べてみな」

そう言われ、なんとなく調べたらドハマりした。実に面白かったのだ、これ。
簡単に説明すると『強く願ったことが叶う法則』である。だがむろん、そんな都合のいい法則はこの世には存在しない。金持ちになりたいと思っただけでなれるわけじゃない。まして不老不死になれるわけでもない。宝くじに当たることを願ったところで、当選確実なわけでもなければ、好きな芸能人から告白されるなんてこともない。

――なんだ、そんなの引き寄せでも何でもないじゃん。

 と、ちょっとかじっただけでは思ってしまうだろう。しかし、しっかり調べていくと、とんでもない法則だということがわかる。

引き寄せの法則は『宇宙の法則』と言われている。
ぼくたちが今、現実、経験していることは必要だから宇宙から意思が降りてきているという考え方である。

宇宙の意思によって経験したことからなにかを学ぶ。学んだことを次に活かさなければ、また同じような経験が何度も、何度も繰り返されるというものである。さらに言えば、今、現実にあることすべてに、意味があるということの裏返しでもあるのだ。

 

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このようにスピリチュアルな法則なのだが、実は人間の意思というものと深いかかわりがあるという。

ここからは、ぼく自身の勝手な見解でもあるのだが、宇宙の意思は常に無限大で、そこに一つ、一つの意思が繋がっており、繋がりたいと互いに思っている場合には、時間も、距離も、空間も越えて繋がることができるというのが、この法則だと思われる。

たとえば、ぼちぼち連絡しないといけないなあと思っていた相手から、同じタイミングで連絡が来る。こういう情報が欲しいと思っていたところで見聞きする。なんてことも、引き寄せのひとつである……らしい。

実際、これ、引き寄せちゃってるよねという経験もあるゆえに、ぼくはわりと、この法則を信じている。
しかしながら、願いが叶うかどうかは実に微妙である。昔からいうところの、神様を信じれば救われる的な発想はここと繋がっているのかもしれない。ただ、面白い考え方であることは間違いない。

さて、こういう考えを多少なり信じているぼくは、ねこさんの命をどうにか繋ぎたくて、たくさんの思いを借りようと考えた。

ぼく一人の思いだけではどうしたって弱い。ハットリくんがいても二人。それよりも、もっと、もっと多くの人の思いが借りられたなら、なんとか彼の命を繋ぎ止める太い綱になってくれるのではないかと考えたからだ。

簡単にこれを説明するならば、某格闘アニメの主人公が最後にみんなにお願いする『オラにみんなの元気をわけてくれ』な『元気玉大作戦』だった。

とにかく、多くの人の元気を彼にわけてほしくて、ぼくは必死に病気と闘っているねこさんの動画をSNSに公開して呼びかけた。すると、本当にたくさんの人がねこさんのためにコメントを寄せてくれたり、いいねのボタンを押してくれたり、拡散してくれたりしたのだ。

励みになるコメントには涙が滲んだ。

覚悟も必要かもしれないけれど、悔やまないように。そして大事にならなかったときは、覚悟したことを笑ってしまえばいいというような(これはぼくの解釈で、実際はもっと素敵なコメントだった)ことまで言ってもらえて、本当に頭が下がりっぱなしだった。

SNSの力は侮れない。日本という小さな国に留まらず、海外で暮らしている方までも祈ってくれたのだ。

届け、この想い!

多くの願いがねこさんに届くように、ぼくは心から祈った。きっと届く。きっと繋がる。一つ、一つが細い糸でも、連なって、絡まって、強くて太い力になって、彼に届くと信じて、その夜を過ごした。

そして、この思いは開花する。

翌日、仕事を終えたぼくが獣医さんで見た彼は、それまでとはまるで違っていた。
生き生きと生命力にあふれた彼と会うぼくには、確かに、彼が願いという名の命の力をまとったように映ったのである。


【こんな感じでした】
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――ひとつの命を感じること(1/12)つづく――

作:紫藤 咲
 ▶ 作者の一言
 ▶ 紫藤 咲:猫の記事 ご紹介

――次話――

ねこさんが危険な状態の中、ハットリくんが急に言い出した。
「なあ、もう一匹、飼わないか?」
会社の野良猫が2匹産んだらしい。しかも母親が異常。
心が動く。
可哀そうだな――
多頭も楽しいだろうな――
でも、経済的に――
さて、どうする?

――前話――

(前クールの最終話です)

ねこさんの入院4日目、ぼくはついに切札を投入した。
犬のひなさんを、一緒に病院に連れていったのだ。
心配げにねこさんを見ているひなさん。
――あれ?
ねこさんが元気そう。
――何故?
医師に状況を訊ねるぼく。
しかし、返ってきた言葉は重かった。

まとめ読み|猫さん拾いました ⑦
この記事は、下記のまとめ読みでも読むことが出来ます。

週刊Withdog&Withcat
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。

――本連載の第1話です――

運命の日――
ぼくは猫を拾った。

犬派だった著者が、猫を拾ってからの悪戦苦闘を描くエッセイ。
猫のいない日常に、飼ったこともない猫が入り込んでくる話。
はじまりは、里親探しから。

――当然、未経験。
「ぼくらの物語はこの日から始まった」

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――作者の執筆記事です――

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