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【猫の肺炎】仮退院してみる? ~4章(5/12)~ 【驚き、まさかの提案】

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犬派の僕が猫と暮らす理由|4章 
ひとつの命を感じること

奇麗な顔になったライ

撮影&文|紫藤 咲
 

ねこさんが元気になった(先生に言わせると、まだ仮であって、ハッキリとは言えないらしいが)ので、翌日の休診日は、久しぶりに明るい気持ちで一日を過ごすことができた。

先生にはまだわからないと言われても、あの状態ならきっと大丈夫だと思ったのだ。
それに、入院する前のように突然悪化して天国に呼ばれてしまう……ということが、二回もあってたまるかという気持ちも強かった。

緊急電話が掛かってくることもなく、メールや着信音に怯えることもなく、休診日を穏やかに過ごした翌日のこと。仕事が終わってからすぐ、ぼくはねこさんに会いに行った。こんなにワクワクして会いに行けるなんて夢のようだった。

これまではねこさんの状態が悪すぎて、会いに行くまでが不安の連続だったのだ。会えるのが嬉しくてホクホクしているぼくを端から見るとすれば、遠距離恋愛している恋人に久しぶりに会うようなかんじだろうか。

あれほど重たかった足が信じられないくらいに軽くなっていた。

獣医さんは相変わらず大混雑で、座るところに窮するほどだった。人と動物でぎゅうぎゅうぱんぱんの待合室に入ってすぐに面会希望を伝えた。

しばらくして、ねこさんがやって来た。彼は二日前に会ったときのように、いや、それ以上に元気を取り戻しているように見えた。いつものブルーのかごに入ってやって来たのだが、やはりこの間のように騒がしかった。

「にゃー! にゃー!」

だせ、だせ、だすんだ、こんにゃろう! と、高速パンチを繰り出し、ひっくり返ってバタバタし、トイレシーツの端をカミカミし、ぼくの手をガブガブ、えいえいっするのである。

とにかく、かわいらしさ全開だった。おめめがぱちくりするだけで、即死レベルのきゅんビームが発射されるのだから反則である。小さい体で懸命に動き回る、ちょこんと座る、柵にダイブ。

 

柵にダイブ

 「にゃー!(でたいー!)」

 ――これ、退院できるレベルじゃないか? だって、この状態、三日目になるんだから。そこで、先生との面談を今回も希望する。

小一時間くらい待たされることになったけれど、今回こそ、先生から「治ってきているよ」の一言を貰わないことには落ち着かなかった。

先生から実際に話を聞けたのは夜の七時半を回っていた。
しかし、ぼくの顔を見つめる先生の顔は、入院期間の中で一番穏やかなものに見えた。

「一時期は本当にダメだと思ったけど、よくここまで盛り返したと思うよ」
「とりあえずの峠は越えたと思ってもいいですか?」
「うん。そうだねえ――」

ライ_元気に

――よしよしよしっ! やったぞ、ねこさん! 
きみは一番の危機を乗り越えたんだよ! ぼくは診察台の上で、飛び降りようと虎視眈々と狙うねこさんを撫でまくる。

――退院も見えてきたのかもしれない! 
このままいけば、きっと家に帰ってこれるぞ! 

そう思って、とにかく撫でまくっていたそのときだった。

「連れて帰る?」と先生。
――は? 今、なんとおっしゃいました? 突然の申し出に言葉が出てこなかった。

「一泊、おうちへ帰ってみる? 今日でもいいよ?」
―― えっ、一泊? おうちへ? 帰る!?

二度目の先生の言葉を聞くと、嬉しさのあまり声にならなかった。だが、ちょっと待て。問題がある。家の状態だ。ねこさんが入院してちょうど一週間になっていたのだが、その期間で考えた飼育上の問題の数々をクリアーできていなかったのである。

 「その……明日……でもいいですか? ちょっと……掃除したいんで」

ねこさんの入院の原因は肺炎である。そんなねこさんを受け入れるのには、きれいな環境でなければならないだろう。しかし仕事続きでまともに掃除に時間を割けなかった部屋の状況は、ねこさんを受け入れる合格点がつけられる状態とは言い難かった。

とにかく、大きな問題が二つあるのだ。それを改善してからでなければ、どうしたって連れて帰れないのだ。

 「うん、それでいいよ。そうだね。日曜の午前中には連れてきてね。まだ、肺のレントゲンも撮ってないから完全にいいとは言い切れないしね」
「はい。明日。明日の午後には必ず!」

入院して、ぴったり一週間。ねこさんの一泊二日の仮退院はこうして決定し、ぼくは先延ばしにしていた課題と、早急に向き合わねばならなくなったのであった。

これはそのときの、ねこさんの顔
奇麗になったライ
本話の表紙にも使いました

正直、こんなきれいな顔になるなんて思ってもみなかったので、本当にびっくりしたのと、嬉しいのと、入り混じってぐちゃぐちゃでした。←心の中(笑)

――次回に続きます――

● ● ●

そして
【作者は今、こんなことしてます】

 実はエブリスタというサイトで、
『犬派の僕は猫と暮らす理由』をベースにした、
小説を書いております。
その名も「かちょもふっ!」
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今回はそんな話を少し漫画でご紹介
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ご興味ある方。是非、お読みください(笑)

 

――ひとつの命を感じること(5/12)つづく――

作:紫藤 咲
 ▶ 作者の一言
 ▶ 紫藤 咲:猫の記事 ご紹介

――次話――

ねこさんが仮退院をする前に、まずは部屋の大掃除。
何しろ、ねこさんは肺炎なのだ。
布団のダニ対策、危険物の撤収、毛布の洗濯とやることは山積み。
大変なのは、大きなケージの移動。
そして嗚呼、エアコンのフィルターは埃で覆われ――

――前話――

今日の話は、ねこさんの入院前にさかのぼる。
ハットリくんの足首が腫れ上がったことがあった。
『悶絶』という状態まで。
「動物に噛まれたことは?」
と医師から訊かれたそうだ。
丁度、「SFTS」(重症熱性血小板減少症候群)が話題になった時期だった。

まとめ読み|猫さん拾いました ⑦
この記事は、下記のまとめ読みでも読むことが出来ます。

週刊Withdog&Withcat
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。

――本クールの第1話目です――

ねこさん不在の寂しさを救ってくれたのがSNSでの交流だった。
そこで想うのが『引き寄せの法則』だ。
『強く願ったことが叶う法則』である。
みんなが祈ってくれたら、きっとその思いは――

――本連載の第1話です――

運命の日――
ぼくは猫を拾った。

犬派だった著者が、猫を拾ってからの悪戦苦闘を描くエッセイ。
猫のいない日常に、飼ったこともない猫が入り込んでくる話。
はじまりは、里親探しから。

――当然、未経験。
「ぼくらの物語はこの日から始まった」

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テーマ:猫の保護活動

個人の保護エピソード――

 
 

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