猫の話をしようか

Withcat 猫と飼い主の絆について

【猫の肺炎】えっ、高速猫パンチ? ~4章(3/12)~ 【奇跡が起きたかも】

犬派の僕が猫と暮らす理由|4章 ひとつの命を感じること
f:id:masami_takasu:20190325154117j:plain

撮影&文|紫藤 咲
 

ねこさんが「みゃあ」と鳴き声を上げた日 の翌日は休診日。
この日を経て、ぼくは再び獣医さんを訪れた。

一日まるまる会えない時間があるのは不安感が募って仕方なかった。これが『もう、大丈夫。心配ないよ』と言われた後であれば、会わなくても平気になるものだが、実際に言われていることは『死ぬ確率の高さ』である。

ゆえに、『死ぬほうが高い』と告知された日の夜と、翌日となる休診日は、電話が掛かってくるんじゃないかと、とにかく着信の音に怯えまくっていた。メールの音すら敏感になっていて、スマホを確認してはホッとすることを繰り返していた。

「たぶん、アイツ、元気になるよ。夢で、すげー元気になっているあいつを見たからさ」 それは、獣医さんに会いに行く朝にハットリくんに言われた言葉である。

「夢だろう、それ?」
しかしである。スピリチュアルハットリのすごさをぼくは知っている。彼の叔母が、彼の夢に出てきたときの話を聞いていたからだ。

それはこんな話だ。

遠くにいる親戚のおばさんが目をかばっていた夢を見た彼は、そのことを母親に伝えたそうだ。
「おばさん、なんか目の病気とかケガとかやってないか?」と。

心配した彼の母が、急いで当人に連絡を入れると、おばさんは少し前に白内障の手術をしたばかりだという。

「普段、夢に出てこない人が出てくるとさ。大抵、なんかあるんだよなぁ」
それは、夢の啓示らしい。そういう経験が他にもある彼は、わりと自信を持って、ねこさんは元気になるよと言ったのだ。

「だといいな」
ぼくは半信半疑だった。

彼のスピリチュアル能力は非常に高いし、凡人のぼくには想像もつかないような世界の話である。かといって、すぐにそれを鵜呑みにするわけにはいかない。

しかし、そんな半信半疑のぼくを待ち受けていたのは、なさに彼の言ったような、奇跡の姿だった。

目ヤニがとれたライ

「にゃー!」

スタッフさんに青いカゴに入れられやってきたねこさんの鳴き声は力強かった。
さらに驚いたのは、その青かごから飛び出てくる白いものだった。しかも、かなりの高速で、柵の間から頻繁に飛び出てくる。

「にゃー! にゃー!」
それはねこさんの手だった。この間、会いに来たときとは比べ物にならないほどの高速で繰り出されるねこパンチ!

そして、そのお顔と言えば――

 

f:id:masami_takasu:20190325154230j:plain

 「……うそ……」

美しい――それはもう、うっとりするくらいにきれいな顔になっていたのである。
ガビガビにくっついていた目ヤニも、鼻水の塊もない。濁りのない真っ白なお顔にピンクのお鼻。まんまるの目は顔の半分ほどを占めているのではないかと思わせるほどに大きかった。

「にゃー!」

だせ、だせ、だせ、だせ、ここからだせ!

● 

――なにこれ? 奇跡?
神々しいくらいに元気いっぱいのねこさんが、カゴの中でじたばたしている。カゴの蓋を開けて、彼を触ろうと手を伸ばした瞬間。

がぶり! がぶがぶ!
仰向けになって、小さな両手でぼくの手をロックし、噛みまくるのである。

――いやーん、かわいい!
とろけるかわいさだった。

● 

● 

 「にゃー!」

出たくて仕方なくて、カゴをガリガリするし、柵からねこパンチラッシュをするし、カゴの中を飛ぶ。体の線の細さは相変わらずだ。

触ればあばらの感触がひどかった。こんな体のどこにこんな力強さが出たのか、不思議でならないほどだった。だけどたしかに、ぼくが見たこともない彼がそこにいる。

――ねこだ! ねこがいるぞ!

● 

● 

苦しそうには見えず、本当に元気になったんだと、心から思えるほどに見違えた姿だった。

とにかく、だせ、だせとうるさい彼をあやしながら、ぼくは先生に話を聞くことにした。待ち時間さえも楽しかった。飽きなかった。三十分以上待った頃に呼ばれ、診察室に入る。

けれど、先生はとても慎重だった。

● 

「たまたま、替えた抗生物質が効いたんだね。まだ、大丈夫とは言えない」

こんなに元気になっても、なお、回復してきていますという言葉は貰えなかった。まだ早急に答えは出せないということで、ねこさんの入院は続行となった。

次の日は半日で診察が終わってしまうから、また会えなくなる。それでも、希望は繋がったんだと思った。たくさんの願いが届いたおかげだ。泣きたくなる気持ちを抑えて、獣医さんを後にした。

● 

帰りにハットリくんに現状を報告すると、こんな言葉が返ってきた。

「先生は大丈夫とは言わないよ。医者は必ず保険を掛ける。自分が悪く言われないための保険だよ。でも、きっとあれなら大丈夫だ。次は明後日会いに行くんだろう? もう安心して、ゆっくり寝たらいいさ」

● 

元気だったねこさん。その後、家に帰ってから何度も、何度も動画でその姿を繰り返してみた。見てはにやにやし、見ては感動し、やっと少しだけ、息がつける……ほんの少し、肩の力を抜けると思えた。

SNSのフォロワーさんに報告し、たくさんの『よかったね』の言葉も貰って、ぼくは心からこの奇跡に感謝した。

● 

たまたまかもしれない。それでもたしかに起きた奇跡によって、ぼくたちの歯車は再び回り始める。希望という光を一緒に巻き込みながら、ゆっくりと動き始めたのである。

【これがその時の動画】

 

――ひとつの命を感じること(3/12)つづく――

作:紫藤 咲
 ▶ 作者の一言
 ▶ 紫藤 咲:猫の記事 ご紹介

――次話――

明明後日の配信予定です。

――前話――

週刊Withdog&Withcat
この記事は、下記の週刊Withdog&Withcatに掲載されています。

――本クールの第1話目です――

――本連載の第1話です――

関連の記事もご覧ください。
テーマ:猫の保護活動

個人の保護エピソード――

 
 

――作者の執筆記事です――

© 2017 Peachy All rights reserved.